あしらうは毒花 7
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よかった、腐ってない・・・・。 しばらく出しっぱなしだった生首を巻物に戻し、敗因を探る。
確かに、驚かせてやろうとは思ったけど。 本気で感動していたイルカは目が点で、可愛かったけど。
そんなに感動したなら、はいどうぞ? って、ホッペタをイルカに向けてチューを催促したけど!
はははは・・・・ 帰ってからのお楽しみだったのに。 まさかボク達が任務中に盛るなんて。
だってね? 例のカッコつけたメッセージを読みとったイルカが、また強烈な告白をしたんだ。
“すでに、俺の心も太陽もふたりのモノだ、惚れ直すなんて生易しいもんじゃない” これが引き金。
ガタの外れたボク達は、ただの獣になってイルカに襲いかかった。 げに恐ろしきは、房術使い。
もう後は推して知るべし。 イルカの肩と腰に指の跡がつくほど、押さえ込んで何度も突き入れた。
イルカは房術を使う任務では、必ず襟に刺繍の入った着物を着る。 最初に会った時も水仙が入ってた。
あのシンが着ていた紫の生地の着物にも、鈴蘭が。 で、気付く。 襟の刺繍は全て、毒がある花だと。
イルカは、自分が貴重な里の道具で毒を持つ身、毒のない自身の価値はないと、思っているんだろう。
「我らは、火の国 木の葉隠れの忍び、これより織の国からここ、蚕村を抹消する。」
「こ、木の葉の里は貧しい者や弱い者の味方だと伝え聞く、そ、そんなはずはない!」
「そうですね。 あなた方が真実、貧しく弱い者であるなら、話は違いました。」
「他国の人里離れた村をわざわざ・・・・・ なにかの間違いです、助けて下さいっ!」
「補佐。 一切躊躇するな。」
「・・・・はい、部隊長。」
村に入り、片っ端から首をはねた。 逃げまどう女子供も容赦せずに。 残るは村長、ただひとり。
貧しい弱者の味方か・・・・ それは本当だ、極力そうあろうと三代目は努力している、ボク達も。
でも意味を取り違えちゃ駄目だ。 城に住んでいないから貧しい? 弱い? 馬鹿言ってんじゃない。
三代目や木の葉の忍びが考慮するモノは、貧しくても弱くても頑張って生きてる人間に対して、だ。
「わ、私を殺したら・・・・ もっと凄い忍びが仕返ししますよ?! いいんですか?!」
「・・・・・それってサ、コイツらのコト?」
「封印、解っ!! ・・・・・この三人ですか?」
「!!!!!!! ひっ!!! ぁ・・・・ ぁ・・・・・・」
壁際に追いつめた村長が、ない知恵を絞って脅してきた。 残念ながら、頼りの忍びは首だけです。
はい、お終い。 さっき結構長く出しっぱなしにしたから、これ以上常温にさらしたくないんでね。
早く里に持って帰って、防腐処理をしてもらわなきゃ。 あ、あなた達蚕村の村人の首はいりません。
安心して下さい、利用価値はないですから。 ただ、跡形もなくこの世から消えてもらいますが。
「・・・・・究極の生糸を作ろうと研究し、最高の糸を作った、それが駄目な事ですか?」
「糸は・・・・衣は人を着飾るもの。 その逆は、あってはならない。」
「!!! なぜ・・・・ 私達が丹精込めて作りだした生糸の・・・・・。」
「・・・・・丹精・・・・ 込めて? 破格な値で、買い取ってもらえるからの間違いでしょう?」
村長の首を落とそうとした時、村人の討ちもらしがないか確認を終えたイルカが、入って来た。
正規の忍服を着たイルカを見た村長は、殺さないでくれと訴える様に、話しかける。 が。
イルカは全てを知っている。 村長がやっていた事、村をあげて生糸を生産していた事、全部を。
全てを悟ったらしく、蚕村の村長は静かに目を閉じる。 イルカがその瞬間に、首をはねた。
人の欲望は果てしない。 あの生糸の製法を知っている村人を、生かして置く訳にはいかなかった。
また、その究極の糸の存在を知る子供も。 いつか同じ物を作ろうと研究し始めるかもしれない。
それが使命だとでもいう様に。 小さい頃に見て触った、あの最高の感触のする究極の糸を追い求めて。
それが憶測であろうと、その危険を回避できるのなら。 今、手を打っておかないと取り返しがつかない。
イルカが言った通り、本末転倒だ。 着物は人間を着飾らせるモノ。 着物に人間を与えては駄目だ。
それにその製法を他里の忍びにでも知られたら。 人の命などなんとも思わない隠れ里もたくさんある。
辺鄙な山岳地、研究成果をこの村だけに留めておけた事が、何よりの救いだ。 この事実は全てを闇に。