あうんの門の狛犬 4
@AB
DEF
GHI
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本来なら外門の周りに、暗部を数人配置して見回る。 今はそれも一人で十分、見回る必要もない。
なんでかって言うと、24時以降に里の外壁から侵入防止の結界術が発動する。 忍びは皆、黒焦げだ。
でも里の忍びは三代目の辞令で、ちゃんと知っているから問題ない。 墨になるのは他里の忍びだけ。
一般人は壁を越えようなんて無茶はしないから、強引だけど最小で効率的な防衛対策だと言える。
その間に帰還した里の忍びは、朝5時の開門までは待機。 5時間ぐらいの野宿なんてザラだしね。
万が一敵に遭遇しても、強力な結界を利用して応戦すれば、下忍でも上忍をかたずけられる。
まあ、里の忍びが待機している門前に、わざわざ攻めてこようという敵は、まずいない。
“きっと罠だな” “すぐ応援がくる” そんなミエミエの手に引っ掛かるか、って思うはずだしね。
で、部隊長の力作 紐トラップの出番。 三代目の結界術と同時に、あうんの門に出現する紅白の紐。
名付けて【そこにあれば引いてみたくなるヒモ】だ。 これは転送トラップで、結構優れモノ。
門の前に垂れ下がっているから、つい引いてみたくなるのが人の心理・・・ っていう発想らしい。
で、引いたら暗部の尋問室に転送される仕組み。 その時間にわざわざ里に来た理由を探る、って訳。
馬鹿な敵なら拷問室に、一般人なら里の外へ、緊急の依頼なら火影屋敷にと、それぞれご案内だ。
でも。 夕方受付所で話題に上った迷子君が、あのトラップに引っ掛かっているなんて思わなかった。
顔の真ん中、鼻の上の刀傷。 ゴチャゴチャと野菜を持ってたし。 にじみでるお人好しオーラ・・・・
親切そうな話しかけやすい下忍、三代目の言葉をそのまま絵に描いた様で、すぐに分かった。
当然ボク達の気配には気付かず、真っ暗な室内を、手探りでヨチヨチ歩き、へっぴり腰で探検中。
暗部の尋問室に、任務と関係のない仕事のお手伝いのお礼だろう、新鮮な野菜をまき散らしている。
で、木遁で棺おけの様な箱を出してみた。 “お! なんかおさまる場所がある!”って喜んだ迷子君。
中に納まってくれたから、先輩に言われた通り頭を固定出来たんだけど、目をギュッと閉じてしまった。
「見えるモノが全てではないっ! 心頭滅却すれば火もまた涼し! 心の目で見るんだ、俺っ!!」
仕方ないから、親指と人差し指でまぶたをこじ開けた。 無事に先輩の写輪眼を直視してくれてダウン。
ふぅ、やれやれ。 目を閉じようと必死になってて、一緒に唇もギリリと噛みしめてたなぁ、とか。
まぶたをこじ開けたら、口も一緒になってパカッって開いたなぁ、とか。 野菜を詰めながら思い出す。
これから迷子君と野菜を家に届けなくちゃならない。 部隊長に報告したら、家に置いてこいと言われた。
「・・・・・ちょっと。 カカシ先輩、何してるんですか?」
「ン? あ、いや・・・ 口を横に伸ばしたら、目も横に伸びないかナー なんて。」
「そんな訳ないじゃないですか。 単なる場景反射ですよ。 さ、送り届けましょう。」
「んー 残念! こんなクセ、面白すぎる! って思ったのに。」
何を期待しているのだろうか、カカシ先輩は、迷子君の口を左右に引っ張って残念がっていた。
確かにボクも目口連動の間抜けな動作が気になったけど、迷子君の事だ、多分それも無意識だろう。
カカシ先輩の写輪眼でかける誘導催眠術は、寝ている状態で受け答えさせるから、大変便利。
寝言には返事しちゃ駄目って言うけど気にしない。 迷子君ちには、迷子君自信が案内してくれる。
「迷子君、名前なんだっけ?」
「むにゃむにゃ・・・ うみのイルカ、13歳、木の葉隠れの下忍だぁぅー むにゃ・・・」
「イルカ君か。 じゃ、お家まで案内してくれる?」
「むぅ・・・・ 任せとけー こっちだ、ついてこいっ! 」
“そこを右だ、くふくふ、もほっ・・・”“もう一回左に行け、もう食べられないよぅ、にゃはぁ〜”
にゃはぁ、って何? もほっ、って・・・・ どんだけ何を食べているの? とか聞いてみたかったけど。
なんか楽しそうな夢をみている迷子君・・・ もとい、イルカ君に口案内されて小さなアパートに着いた。
「あ、そうだ、カカシ先輩。 イルカ君の下忍仲間がたむろってるんですよ、家ん中で。」
「んー 了解。 んじゃ、眠らせてくるわ。 イルカ君ヨロシク、ハイ。」
「ぅわわわ! 体温高いですね、イルカ君・・・・」
「お子チャマだからねー、寝てる子は熱いのなんの。」
先輩が突然、おんぶしていたイルカ君をボクにトスした。 危ないなぁ、落としたらどうするんですか!
部屋の中にいるイルカ君の下忍仲間にも、瞳術をかけて眠らせるらしい。 まあ、当然といえば当然か。
部隊長のトラップの噂が広まっては困る。 里の忍びは基本、開門まで待機が原則だもんね。
イルカ君は下忍、三代目からそう聞いているはずなのにね? そう言えばボクも13ですよ、先輩。
「マジで? あんまり体温高くないネ? あ、木が熱を吸収しちゃうんじゃないの?」
「ボクが木材で出来ているって事ですか? なんですかソレ、そんな訳ないじゃないですか。」
「・・・・・エー 違うの? つまんないじゃない、木でイイじゃないの、木で!」
「嫌ですよっ! ってか、なんの話してるんですか! 早く眠らせに行って下さいよ、もう!」
カカシ先輩は尊敬する暗部の補佐だが、探究心旺盛で困る。 人と違った事を発見したら追求するんだ。
ボクの木遁忍術もそう。 ナニそれ、もう一回やって、ツルとかビョーンって伸ばせるの? って。
暗部入隊の自己紹介で木遁忍術を披露したら、それから質問攻め。 で、妙に気に入られて廓デビュー。
いや、部隊の補佐に気に入られるって事は、ボクの部内での立場を確立したも同然だからいいんだけど。
・・・・・だからか。 前にチャクラの使い過ぎでへばってたら、植物栄養剤を差し入れてくれた。
木の葉にこの人ありと言われている写輪眼のカカシは、とっても研究熱心で仲間思いの部隊長補佐だ。