あうんの門の狛犬 9
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“木の葉の忍びは現金以外でも依頼を受けてくれる、畑でとれた野菜や川の魚でもいいらしいぞ”
“下忍が自主的に町を巡回してくれているらしい、誰でも気軽に手伝いを頼んでもいいそうだよ”
イヤー 凄い効果だネ? イヤな顔ひとつせず、現物支給で働くイルカ君達の噂は瞬く間に広がった。
噂が噂を呼び、町に行かせたスリーマンセルの下忍のほとんどが、声をかけられるようになったの。
里の財政難を救うコトが己の使命だとかほざいて、暗部を突然引退したあの人は、かなりのヤリ手。
水を得た魚のように生き生きと・・・・ そりゃそうか。 個性豊かな隊員を束ねていた人物だし?
不器用ないぶし銀の板前さんみたいな外見なのに、ビックリするほど手先が器用だったりネ。
元部隊長の手掛けたトラップは、どれも実用的なモノばかり。 ネーミングはちょっとアレだケド。
こりゃ、暗部の予算をたっぷり組んでくれるって約束の日は、そう遠くない未来かもしれないヨ?
あれから二年、イルカ君はトコトン我が道を行く少年みたい。 月一回のペースで門へお供えをする。
その度に扉に話しかけていて、門番や正規の忍びは敵の幻術なのか? って警戒したんだってサ。
でも中には、あうんの門には里を守ってる狛犬がいるらしい・・・・ って言い出す人も出るぐらい。
そのせいか、イルカ君以外にも門にお供えしてる人もいて。 こっそり夜中に回収させてもらうんだヨ。
暗部本来の任務をこなして、里の明かりを目指して帰ってくるとネ、門の横にいろんなモノが置いてある。
小さな野草の花束とか、お饅頭とか酒とか。 待機所に持って帰って、皆で分けるコトにしてるんだヨ。
部下には経緯を全て説明してある、狛犬は暗部だからネ? って。 待機所は温かい贈り物でイッパイ。
でもネ、イルカ君のおにぎりだけは、オレ達が食べるからネ? って言ってある。 当然でショ?
イルカ君とオレ達の出会いがなかったら、里の財源は極貧のまま赤字に突入してたかもしれない。
そんなオレ達の可愛いワガママぐらい、アゴ先で認めさせるヨ? なんてったって部隊長と補佐だし。
今やテンゾウとオレは息ピッタリ、まさにあうんの呼吸でもって暗部を統括している黄金コンビだ。
ま、これはもう掟といってイイ。 イルカ君がお供えに来ると、必ず部下の誰かが知らせに来てくれるし。
何気にオレ達は、イルカ君の独り言が楽しみなんだヨ。 毎回毎回、笑わせてくれるからネー。
フフ、相変わらず迷子になってんのネ? 困ったお年寄りを引き寄せる老人ホイホイだよネ、って笑う。
イルカ君がお供えしてくれるおにぎりの時だけ、夜中に兵糧丸を置いて来る。 最近は本当に兵糧丸なの。
正露丸には “まず過ぎだよ、これ!” って言っていたイルカ君も、奈良家秘伝の兵糧丸にはビックリ。
“あれ? まずくなくなった・・・? とうとう大人の味覚になったか、俺!” なんて喜んでたっけ。
オレ達、小声でツッコミまくったヨ。 ソレ噛んじゃダメでショ? 味覚云々じゃないからネ? って。
テンゾウは木遁チャクラのコントロールで、日々格闘中。 モノホン触手プレイも秒読み段階に入ったの。
オビト、もうすぐだヨーv フフフ、里に帰ってくると、こうやって楽しい気分をイッパイ味わえる。
待機室でテンゾウとツルの格闘をニマニマしながら眺めていたら、部下がいつものように呼びに来た。
「部隊長、補佐! イルカ君、門におにぎり持って来てますよ!」
「ン、ありがと。 ・・・・テンゾウ行くよ? ツルしまって、ホラ!」
「わ、イルカ君が・・・・ ととと・・・ ちょっと待って下さい、こいつなかなか・・・・」
「補佐、器用ですねー 木遁をあんな風に操れるんですから・・・・」
「動きがまだ滑らかじゃないのよネー、あと一歩なんだケド。」
「ふぅ! お待たせしました、恥辱っぽくなるにはもう少しですね。」
「そ、そうですか、行ってらっしゃい・・・・・ てか、 滑らか?? 恥辱??」
「でね? 絵のモデルなんてやった事なかったから緊張しちゃって・・・・・ へへへ!」
(( ・・・・・・ 絵の・・・ モデル?? ))
「大丈夫、忍びだし! 明日は動かない様に頑張るよ、俺! 人の視線って・・・・ 照れるね?」
(( 我が道を行くイルカ君が照れるような・・・ 視線?! ))
・・・・・いつもイルカ君はおにぎりをお供えして、近況を報告してくれて、それで感謝もしてくれる。
オレ達はそんなイルカ君のおにぎりと、笑える独り言を盗み聞きするのが、楽しみだったのに。
動かない絵のモデルって・・・ ナニ? そんなボランティア、今まで一度も聞いてないヨ、オレ達。
イルカ君は親切そう、話しかけやすそうなオーラを確かに発してる。 だから・・・・ 騙されやすい。
と言うか、本人が騙されているとは気付かないで、いいコトしたって満足しちゃってるカラ。
ホント我が道を行くだなって、オレ達に小さな笑いを提供してくれていた。 そんな程度だったもん。
・・・・・ン? あ、やっぱりお前も心配? 木の葉の下忍に頼むようなコトじゃ・・・・ ないよネ?
明日あの時の様に、イルカ君をコッソリつけよう、んで、ナニがどうなってるのか確認して来なきゃ。
イルカ君は木の葉カンパニーの看板息子。 この“話しかけやすそうオーラ”には誰もかなわない。
ヘンなコトに巻き込まれていなきゃイイんだケド。 オレ達の勘って・・・・ 当たるんだよネ。