恋の戦略・攻略法 1   ABC DEF GHI JKL




ホラどう? ちょっと影あるイイ男オーラ、バリバリでショ? もうバッチリ同情したよネ?
自分で言うのもナンだけど、イルカ先生の同情を引くぐらい訳ない。 暗い過去だって事実、持ってるし。
相手の弱点を瞬時に見抜くコトが大事。 忍びは自分の持ってるモノなら、何でも利用するじゃない。
それを自分の有利なように使うのが肝心。  相手が気付いた時にはもう遅い、そんなの当然でショ? 

「あの時誓ったんです。 オレが、オビトの目の代わりになって未来をみせてやろう、って・・・・。」
「うぅ・・・・ こんな立派な上忍師が七班の担当なんて、うっ・・・ アイツら幸せ者ですっ!!」
「いえ、オレは自分勝手だった自分を、戒め続けているだけなんですよ、自己満足に過ぎません。」
「カカシさんっ! どこまで自分に厳しい方なんだ・・・・ 上忍の鏡です、木の葉の誇りですっ!!」

イルカ先生は、あの渦巻ナルトを卒業させた忍者アカデミーの先生。 涙もろくて、情に絆されやすい。
ヒトの辛い過去に、めっぽう弱い。 すぐ同調する。 そんで泣いちゃうのヨ。 こんな風にネ?
オレね、このヒトの心が欲しいの。 戦略を練ってきた。 目下、同情作戦を決行中。

「こんなコト聞かせてしまって・・・・ すみません。 いつになく弱気になってしまいました。
 ただ、あなただけには本当のオレを、知ってもらいたかったのかもしれません・・・・。」

忍びは心を殺せと教えられてきた。 6歳で中忍になったオレは、とうの昔に心を殺した。
そうしなければ、生きてこられなかったし、生き抜いてもこれなかった。 なのに上忍師は・・・・
生前、四代目火影は言った。 『カカシ君、心はどこかにあるもんなんだよ? 見つけなきゃ駄目。』
渦巻ナルトは、そのオレの上忍師だった四代目火影 波風ミナトの息子。 尾獣九尾の人柱力。

「上忍の方にこんな言い方失礼かもしれませんが、時には羽を休めたっていいと思うんです、俺。」
「イルカ先生は、そんな上忍を情けなく思わないですか? しかも、いい年した年上の男の・・・・」
「思いません!! 思う訳ないっ! 年上だろうが上忍だろうが、あなたはひとりの人間なんです!!」

里の民は、まるで九尾そのモノの様にナルトを扱う。 誰かを責めるコトで、恐怖を克服していた。
それだって立派な克服方だ、精神の弱い人間の楽な逃避の方法。 オレ達から見たら、最低ではあるが。

イルカ先生との出会いは、実は今回が始めてじゃない。 過去に何度か会ってるんだヨ、一方的に。
オレ達暗部は、三代目に任命されて、交代で人柱力を警護していたんだ。 三代目の屋敷の地下で。
ナルトはある年齢がくるまで、オレ達暗部に保護されているはずだったんだけど、ネ・・・・。

「こんな時間までスミマセンでした。 あなたに話したら、どこかスッキリしましたよ。」
「力じゃ上忍の方には遠く及ばないですが、いつだって手助けをしたいって思ってます、みなさんの。」
「・・・・・また、羽休めに・・・・ つきあってもらえますか?」

今日は、誘いたくてウズウズしてたイルカ先生を、やっと誘えた。 長かったよ、ここまで来るのに。
それまでは暗部にいたから、忍服着てウロウロ出来なかったし。 上忍師になったオレは、晴れてお役御免。
暗殺戦術特殊部隊は、オレが一番目をかけてたアイツに任せてきた。 もう動いてもイイでしょ?

「もちろんです! ・・・・て言っても、俺、話を聞くぐらいしか出来ないけど。」
「それでイイんです。 これが女だったら、変な色気出されてうっとおしいダケだから。」
「あはははは! そんなセリフ言ってみたいですよ、俺!  じゃ、おやすみなさい、カカシさん!」
「ふふふ、おやすみなさい、イルカ先生。」

初陣は成功、もう手ごたえ十分。 イルカ先生の中できっとオレは、ほっておけない上忍になったはず。
これから少しずつ、少しずつ近付いていく予定。 そしてオレは、殺したはずの心を手に入れる。
自分の中に無くなっても必ずどこかにある、と四代目が言った。 ほんとにあったよ、ミナト先生。 
オレはあの時心を見つけた、イルカ先生を。 今ではアカデミー教師の、下忍だった海野イルカ。

もう随分前だけど、ある事件が起こった。 ナルトが屋敷からいなくなったコトがあったんだ。
人柱力の誘拐殺人未遂事件。 出入りできるのは暗部と上層部だけだったから、当然内部の犯行だった。
今だって十分きな臭いコトをやってるあの男、志村ダンゾウ。 三代目になにかと立て付く獅子身中の虫。

三代目はあの男の行動を黙認している。 『アイツなりに里を思っておる、ちと頭が固いだけじゃ』と。
事あるごとに三代目に対抗しては、ホゾを噛む。 三代目からすれば、良きライバルといったトコロか。
だけど、火影である三代目のするコトにイチイチ逆うのは、オレ達からしたら反逆者も同然。

三代目を中心として、皆が九尾の爪痕を乗り越え、里が落ち着いてきた頃に起こした、あの事件もそうだ。
あれでナルトが三代目の屋敷にいると知られ、里の無知な人々の憎悪の対象になった。