恋の戦略・攻略法 5
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そうか、同情からは愛情に変わらないのか、目から鱗だ。 オレのバイブルだった“イチャパラ”。
すっかり信じ込んでいたが、あくまでフィクシヨンだと教えられた。 ま、面白いからソレはソレで。
おもろい夫婦が言うには、同情っぽい愛情は、万人に向かうらしい。 たくさんの人に同じ様に。
万人と同じなんて、絶対ダメだ。 イルカ先生は、泣き方を忘れたオレの心だから。
「聞きました、カカシさん。 命懸けでアイツらを守ったって・・・・。」
「命懸けなんてそんな。 ただ夢中で体が動いたんです、霧の抜け忍でしたからね。」
「あなたにもしもの事があったら、アイツらが一番悲しみます、ムチャはしないで下さい。」
「イルカ先生も・・・・ 悲しいですか、オレに何かあったら。」
「当たり前じゃないですかっ!! うぅぅ・・・・。」
アスマ紅コンビが流した波の国の任務情報で、下忍を命懸けで守ったヒーロー上忍にされてしまった。
ま、オレが怪我をしたのも事実だしネ。 アイツらも無事だったけど、傷だらけだったし。
相手が桃地再不斬だったから、無傷で勝てるとは思ってなかった。 肉を切らせて骨を断ったダケ。
イルカ先生はオレを心配してくれてたらしい。 目に涙をイッパイためて、木の葉病院の前にいた。
アイツらはイルカ先生に武勇伝を聞かせる、特にナルト。 得意になってベラベラ話しただろう。
先生は子供思いで心配性。 さすがおもろい夫婦、同情作戦より強力な、外堀を埋める作戦とは。
下忍の口から語られる活躍劇の裏で、上忍師の働きは如何なものか、中忍ならわかるはず。
効果テキメン。 病院から出て来たオレの問いかけに、イルカ先生はとうとう泣きだしてしまった。
「わかってます、アイツらが無事だったのは、全部カカシさんが・・・・うぅ、ううっ。」
「すみません、意地の悪い質問でしたね。 ・・・・イルカ先生、泣かないで下さい。」
「よかったです・・・・ うう またお話出来て、本当に良かったですっっ!」
「アイツらも、オレも、オレ自身が守ると誓います。 イルカ先生の前で。」
「かかしさんっっ!!」
イルカ先生が思い余って抱きついてきた。 “ガシッ”っていう抱きつき方だけど、まあイイか。
ここはグッとこらえて、ポンポンと背中を叩いた。 肩に顔を埋めてかき抱きたかったケド。
イルカ先生が落ち着くまであやした。 コレ結構イイんじゃない? 同情じゃないよね、完璧に。
おもろい夫婦の仕掛けた作戦に感謝しつつ、戦略を考える。 下忍からPR作戦の次は・・・・。
他里で開催されるのなら見送ろうと思っていたが、今年の中忍試験は木の葉隠れで開催される。
よしココは、アイツらを認めています的な行動を示して、中忍試験を受けさせてみるか。
ウチでやるなら、まず間違いは起こらない。 いざとなったら乱入出来るから、安心だしネ。
おもろい夫婦の助言の元、日々順調にイルカ先生の意識をオレに向けさせていた。 好調、好調!
「口出し無用! アイツらはもうあなたの生徒じゃない、オレの部下です。」
「くっ・・・・」
優しいだけじゃなく厳しい顔も見せろというコトで、下忍のアイツらをつき放してみる。
イルカ先生ならきっと、厳しいオレの意見に感銘してくれるはず・・・・ だよね? なのに・・・・
・・・・・・・・・ なんで? どこらヘンがまずかったの?? 順調だったよネ?!
ガイ? ガイに泣きついちゃうの?! そこは “そうですね、その通りです” ってなる予定なのに。
「カカシだって悪気がある訳じゃない。 アイツは人一倍厳しい奴なんだ、わかってやれ。」
「そうですね、ガイさんのおっしゃる通りです。 暗部の部隊長まで務められた方ですもんね。」
「ああ。 アイツは厳しいが、それに裏付けされた熱い魂の叫びがあるっ!! 我がライバルだっ!」
「俺、審査官に立候補して来ます! この目で・・・・ アイツらを厳しく審査する為に!!」
え、なに? 下忍じゃなくイルカに厳しくしてどうする? ・・・・・・あ。 間違えた・・・・。
一人前の忍びなんです、って言おうとしてたのに。 オレの部下です、って言っちゃったヨ、つい癖で。
この前まで暗部にいて、部下を持ってた。 部隊長の権限として、隊員達をある程度自由に動かせた。
オレだけの部下じゃないよネ、七班の下忍だヨ。 オレ達はみんなで、木の葉隠れのカカシ班。
・・・・もう部隊長じゃない、オレは上忍師なんだ。 ははは、イルカ先生が感銘するはずないよネ。
「オレ、忍びの考えでしかイメージが出来ないんだ。 ・・・・戦略を考えないと動けない。」
「バカね、カカシ・・・・ そんな不器用なアンタ、嫌いじゃないわよ?」
「おう、おれもだ。 お前、暗部生活長かったからな。 いいかカカシ、“恋”は任務じゃねえ。」
「いくら戦略を練っても、その感情は思う通りにならないのよ?」
「・・・・ただの穴なんていらない。 イルカ先生が欲しいんだ、あの心が・・・・。」
「あ、穴?!」
「あー、多分、女のコトだと思うぞ?」
「・・・・・暗部だもんね。 そう思わなきゃ、生きてこられなかったのね、きっと・・・・。」
「その暗部の元トップがよ、“心が欲しい”なんて、泣かせるじゃねーか!」
「なんとかしてやりたいわね・・・・。 でも酒代は別。」
「・・・・だな。 よし、カカシ。 飲みに行くぞっ!!」
「小助さんトコ? ん・・・・ わかった・・・・。」
「もう、しっかりしなさいよっ! 嫌われた訳じゃないんだからっ!!」