恋の戦略・攻略法 8   @AB CDE FHI JKL




カカシ先輩は、四代目のような上忍師になりたいらしい。 気持ちはわかる、ボクだってそうだ。
三代目から伝えられた火の意志を、次代の若葉達に受け継がせてやりたい。 イルカ先生の様に。
今まで三回、カカシ先輩はアカデミー卒業生を落第させた。 先輩の引退は、また延びるみたいだ。
カカシ先輩が上忍師になったら、補佐のボクが部隊長。 ボクの引退は一体いつになるんだろう?

「なんという事を・・・・ ミズキは処刑、ナルトとイルカをすぐ保護するのじゃ!」
「オレ達はナルトとイルカ先生を保護する、お前らはミズキを秘密裏に処理、いいな?!」
「「はいっ!」」
「裏切り者の首を必ず獲る事、人柱力の不貞を民に知られない事、以上だ。  散!!」

今年は、イルカ先生の受け持ちの子供がたくさんいて楽しみだ、と話していたら招集がかかった。
ナルトをそそのかし禁術の巻物を盗ませ、さらにナルト本人に、九尾封印の事をバラしたらしい。
子供に優しく注意したあの、ミズキ先生が。 それを知ったイルカ先生は、飛びだして行ったそうだ。
不安定な人柱力が罪を犯した、それ見た事かと、民衆の反感を買うのだけは避けなければ。

悪戯をしてはイルカ先生に捕まり、怒られ、後始末をさせられていた、落ちこぼれのアカデミー生。
ナルトが悪戯した人にちゃんと謝ったら、イルカ先生はラーメンを食べに連れて行った、必ず。
最近ではワザと悪戯をして甘えている感じだった。 “飴と鞭” の飴が、よほど嬉しかったんだろう。
唯一かまってくれるイルカ先生に留年を告げられたから、 “卒業できるぞ” の言葉に簡単に騙された。

「このままでは、ナルトが暴走するかもしれません!」
「せっかく人を信じ始めていたのに・・・・ クソッ!!」
「ナルトにも優しかったミズキ先生が・・・・ まだ信じられませんよ、ボクは。」
「人柱力を始末する大義名分を立てたんだ。 罪を犯した、と言ってナルトを殺す為に・・・・。」

先輩とボクはアカデミーの裏山に急いだ。 三代目が意識を集中させ、水晶玉で三人を見つけた。
ソコでボク達が見たものは、木陰に隠れているナルトと、ミズキに対峙しているイルカ先生。
ナルトに絶望の表情が浮かぶ。 イルカ先生の両親を殺したのは自分の中の九尾だ、憎まれて当然だと。
でも隠れて先生の言葉を聞いたナルトは・・・・・ 唇を噛み、声を立てず、大粒の涙をこぼした。

九尾じゃない、木の葉の里の渦巻ナルト、一途で努力家の俺の生徒。 イルカ先生の本心だ、ナルト。
先生はお前が憎いから留年させた訳じゃない。 もう一度、一緒にやり直そうとしてるんだよ?
暗部が交代で保護していたナルト。 一緒に泣きたいよ。 でもボク達暗部は、泣き方を忘れてしまった。

「ここはイルカ先生に任せた方がイイかも・・・・ あ、バカッ!!」
「!!!! ナルト、出ちゃダメだっ!!」

ミズキを処分しに来た者も、ナルトとイルカ先生を保護しに来たボク達も、皆そう思った。
ナルトがイルカ先生の気持ちを知ったら、今後のナルトの成長は三代目が描いたものになる、と。
だから出遅れた。 ナルトを殺そうと思っているミズキの前に、隠れていたナルトが飛び出した。
ミズキは気配を逃さず、ナルトに向けて風魔手裏剣を放つ。 誰もがナルトの血しぶきを想像した。

「そうだよな、ナルト・・・・ 淋しかったんだよな・・・・ 気付いてやれなくてゴメンな。」
「!!!!! イルカ先生っ!!」
「くそっ!! 邪魔しやがってっ!! イルカ、お前から殺してやるっ!!」
「・・・・・イルカ先生に・・・・ イルカ先生に手を出すな!!  影分身の術!!」

血しぶきを上げたのはイルカ先生の背中。 自分をかばった先生の涙がナルトの顔にポトポト落ちる。
そしてナルトは禁術とされている影分身の術を会得し、ミズキからイルカ先生と自分を守った。
本当にあっと言う間の出来事で、誰ひとり動かなかった。 いや、動けなかったんだ、誰も。
ボク達暗部の面々は、ふたりだけの卒業式の影の参列者だ。 先生は自分の額当てをナルトに渡した。

「影分身か。 卒業試験の課題は分身の術だ。 ・・・・アカデミー卒業、おめでとうナルト。」
「うぅ・・・・  死んじゃイヤだってばよっ!!」
「バカ野郎、勝手に殺すな。 お前が火影に、なる・・・ まで・・・ 俺は・・・・」
「イルカ先生っ!!」

「大丈夫、気を失ってるダケ。 でも今すぐ病院に連れて行かなきゃ。 わかるでショ、ナルト。」
「・・・・君のやる事はひとつ。 三代目に、盗みをしてごめんなさい、と謝ることだよ?」
「おれ・・・・ じいちゃんに謝ってくる。 イルカ先生を頼むってばよ!」

その後は予定通り、処理に来た者はミズキを狩って、三代目に首を持って行った。 ボク達は・・・・
応急処置をして、背中を負傷したイルカ先生を、先輩とふたりで慎重に丁寧に運んだ。
むやみに動かすのは良くないけれど、医療班の到着を待っていたら手遅れになるかもしれない。
だからボク達で木の葉病院まで運んだ。 自慢じゃないが、先輩と歩調を合わせられるのはボクだけだ。

「イルカ先生さ、いっぱい泣いてたネ・・・・」
「・・・・あんなに泣ける人が、羨ましいですよ。」
「オレ昔四代目に、心は必ずどこかにあるから探せ、って言われたんだよネ。」
「イルカ先生は、心を殺したボク達暗部の心なんでしょうか。」