恋の戦略・攻略法 6   @AB CDF GHI JKL




「お主たちは子供に変化して遊べ、良いな?  完璧に気配は変えるんじゃぞ?」
「「了解です。」」

極秘任務を言い渡された。 今年からナルトを忍者アカデミーに入れるから、教員を増やすそうだ。
先輩とボクの任務は、内偵任務だ。 暗部は秘密裏に動く事が多々ある。 今回もそのうちの一つ。
アカデミー教員候補に接触、私情はなしで、ボク達が体験した事をそのまま火影様に報告する。
報告書のどこを見るのかわからないが、アカデミー教員の合否が、その報告書で決まるらしい。

「結構、責任重大ですね。 今回の合格者が、行く行くはナルトを受け持つんですから。」
「だからオレ達に任務がきたんだろう? 私情を挟まず、客観的な報告書を作成する為に。」
「ナルト絡みだと・・・・・ アカデミーに入れる事すら反対の輩がいますからね・・・・。」
「あのダンゾウのせいで、ナルトはいらない迫害を受けるコトになった。 辛いヨ。」

四代目夫妻の忘れ形見なのに。 里を救った英雄達の子供なのに。 ボク達忍びは動けない。
三代目が戒厳令を敷いたから。 九尾の事も、四代目の事も、ナルトに聞かせてはならないと。
不安定な人柱力の存在が公になった事で、三代目は育成方針を変えた。 過保護から放任主義へ。
我が子を谷に突き落とした。 自分の足で這い上がって来い、と。 コレは大きな賭けだ。

「結局、他里の人柱力の扱いと、ほぼ変わりませんね・・・・」
「・・・・強大な力は非力な人間達にとって、脅威以外のナニモノでもないヨ。」
「里は一度九尾に襲われていますから、さらに風当たりは強いでしょう。」
「三代目も、苦渋の決断だったんだろうネ。 里を背負う強い忍びになってもらう為に。」

何も知らないナルトが、里の人々を、木の葉の仲間を、憎んでしまう可能性だってある。
考えたくはないが、もしそうなったら、ナルトの中の九尾は暴走するかもしれない・・・・・。
苦労は買ってでもしろ、この場合ソレに当てはまるかどうか謎だ。 裏目に出ない事を祈ろう。



カカシ先輩とボクは子供に変化した。 これからここで、ボク達ふたりが火遁と手裏剣を使って遊ぶ。
里には忍びではない民がたくさん住んでいて、その一般住宅も近くにある、この道の真ん中で。
今日は教員試験の説明会があるから、教員候補は皆、アカデミーに続くこの一本道を通るはずだ。

「えいっ! それっ!!」
「あぶねっ、お返しだっ!!」
「くそ〜、これならどうだ、火遁 火粉の術!!」
「やったなっ!! 火遁 火玉の術!!」

微笑ましく見守る者、苦笑いする者、無関心な者。 彼らの顔とその反応を、全て記憶する。
ボク達の体験談を報告書にまとめ、三代目に提出する為だ。 ふたりを除いて、通り過ぎて行った。
15人の教員候補の中で、ふたりだけがボク達に声をかけた。 危険な行為を注意したのだ。
ひとりは烈火のごとく怒鳴り、もうひとりは優しく。 もちろんそのままを報告書に書いた。

「コラお前達!! 忍術や忍具を遊びに使うなっ!! ここをどこだと思ってる!」
「ねえ君達、この向こう側は一般の住宅街だ、それはとっても危険な行為だよ?」
「それだけじゃないっ!! 使い方を誤れば死んでしまうんだ! わかってんのかっ?!」
「おいおいイルカ。 なにも子供にそんな言い方しなくても・・・・」
「ふざけんなミズキ! 何かあってからじゃ遅いんだぞ?!」

教員試験に申し込んでたんだね。 もう一人は、彼と気心の知れた友達のような感じで、同じく中忍。
ボク達に優しく注意したミズキ中忍にも、イルカ中忍は怒った。 本気で心配してくれた様だ。
ごめんなさい、もうしません・・・・ と、彼の目を見て誓わされた。 しかし、凄い迫力だったな。
それからイルカ中忍は、笑って頭を撫でてくれた。 “ふたりとも、スジがイイぞ?” と言って。

「きっと合格者は、あのふたりでしょうね。」
「うん、多分。 ・・・・・イルカ・・・・先生、か。」
「無鉄砲下忍から仲間思いの中忍へ。 今度は、おっかないアカデミーの先生・・・・候補。」
「ふふ、怒るのは本気で心配してるからだって、小さな子供でさえ感じるだろうネ。」

飴と鞭を上手に使い分けてるなぁ。 子供に本気で怒った後、あんなに優しく笑うなんて・・・・・。
ねえ先輩、イルカ中忍はボク達の事全然知りませんけど、ボク達はよく知ってる気がしませんか?
彼に会う度、ボク達の中の何かが温かくなる、そんな感じがするんです。 不思議ですよね。