恋の戦略・攻略法 2   @BC DEF GHI JKL




志村ダンゾウが、今年で3歳になる渦巻ナルトを連れ出した。 渦巻ナルトは尾獣九尾の人柱力だ。
まだ尾獣のチャクラをコントロールするどころか、己のチャクラもコントロールできない小さな子供。
三代目が、チャクラの安定を確信するまでは屋敷の地下で保護し、ボク達暗部に警護させていた。
九尾を抑え込む人柱力を保持出来た、と里の人々に安心感を与える為に。 だがその計画もここまでだ。

「すみません、油断してました。 こんな大それた事するなんて思っても・・・・・」
「あのヒトが相手じゃ、仕方ないでショ。 追尾システムはどうなってる?」
「追跡用種子は飲ませてありますが、排泄していると使えません。 早急に動いた方がイイと。」
「そうか、ならおまえはすぐ、オレの忍犬と追ってくれ。」
「了解です。」
「待機している隊員は補佐の後を追え! オレは火影様に報告する。  散!!」

人柱力は他里でもその扱いが差別的だ。 四代目夫妻の遺児だ、三代目は極力それを避けようとしていた。
人は人外の強大な力を恐れる。 ましてやその尾獣に里は襲われた。 不安は自己安堵の為の憎悪を生む。
まだ不安定なナルトを見たら、里の民はありもしない事を想像し、さらにはナルトを憎むかもしれない。
まったく、あの男は一歩先しか見ていない。 三歩も四歩も先を見据えている三代目とは、器が違うのに。


「この中に九尾がいるっ! いつ暴走するやもしれん人間兵器など、里に置いておいて良いというのか?!」
「ダンゾウ様に従えば、その恐怖から我々は解放されるっ! 尾獣の力などいらん!」
「一体何があの四代目夫妻を殺したのか、我々は忘れてはいないだろう?」

「わしは里に害をなすものは、何であろうと容赦はしない! 猿飛は火影として甘い、そう思わんか?」

「そうよ、あの子供さえいなかったら、もう争いに巻き込まれずにすむ・・・・。」
「偉大な黄色い閃光を殺したのは、まぎれもなく妖孤九尾だっ! あの悪魔の尾獣!」
「いっそのこと、殺してしまった方が、あの子の為なのかも・・・・。」

「今こそ里には強い決断力のあるリーダーが必要だ。 わしなら、里の民の為に辛い決断を実行できる!」

なにを企んでいると思ったら、火影の地位を奪う為の画策・・・・ あの男は、まだ諦めていないのか。
ダンゾウの火影の座に対する執着は、並々ならぬものがある。 かく言うボクも、祭り上げられたくちだ。
あの時は何だっけ? そうそう、『猿飛の里抜けした弟子が、こんな不幸な子供を作ったのだ!』 だった。
三代目の足元を見ることしか考えていない。 自分のことしか考えない奴が火影になんて、笑ってしまう。

「パックン、ナルトを発見したと、カカシ先輩に伝えて来て。」
「心得た。 ・・・・・お主一人で大丈夫か?」
「何人かボク達を追ってきてたはずだから。 隊員がそろったら、あの謀反演説をやめさせるよ。」
「よし、わかった。 伝令、確かに承った!」

とは言っても・・・・ アイツら遅いな・・・・・ 結構ヒートアップして、怪しい雰囲気になって来た。
くそっ、このまま奴にしゃべらせておいたら、民は洗脳されてしまう・・・・。 人柱力を殺しかねない。
まずいな、すぐ追いついてくると思って、パックンを伝令に走らせたのに・・・・・ !!!
なんだ?! あの自己中心的な熱狂演説の中に、水を差す奴が?! あの子は・・・・・ 下忍??

「よ、お待ちどーさん。 アイツらなら待っても来ないヨ。」
「あ、カカシ先輩。 え、どういう事ですか?」
「今まだ遊んでる最中。 “根”の奴らに足止めされてたし。 オレのが早かったネ。」
「まったく・・・・ ダンゾウの “根” なんかに足止めされて・・・・ たるんでますね。」

カカシ先輩の方が早いって、いくらなんでもたるみ過ぎだよ。 アイツらまとめて、後でお仕置きだ。
この間にダンゾウの奴が調子に乗って、火影交代の審議を声高らかに叫びだしたじゃないか。
民の中にもチラホラ、奴の言う事に耳を傾けはじめたし。  あ・・・・ あの下忍どこ行った??

「ダネ。 ところで、あの子ヤバくない?」
「そ、そうでした! 助けに行きましょう、あの下忍。 すぐ捕まっちゃいますよ、あれじゃ。」
「んじゃ、忍犬に追わすか。  口寄せの術っ!     シバ、あの下忍を援護して来い。」
「オーケイ。 カカシ。」

カカシ先輩はどこから見てたんだろう。 あの下忍が石を投げたトコロは、見てたのかな?
そう、あの下忍は、自分本位なダンゾウの演説が盛り上りかけた時、ダンゾウの前に現れ石を投げた。
ダンゾウを睨みつけて、石つぶてを飛ばした。 下忍の石つぶてなど、別段大したことはないが。
うるさい蚊を払う様なしぐさをしたダンゾウの、鼻に、ほっぺたに、それらは微力ながらも命中していた。

「・・・・・あの子・・・・ 良い目してたね。」
「なかなか見物でしたよ。 ダンゾウ、目がテンになってました。」
「ははは。 よし、オレ達は、ダンゾウからナルトを取り戻す。 行くヨ?」
「はい! あの懲りない男を、蹴散らしに行きましょう。」

下忍は石を投げ終わって逃げ出す前に、“その子を殺したら、お前こそが木の葉の害だ!”と叫んだ。
目下逃走中だが、ダンゾウの手下に捕まったら、ただじゃ済まない。 でも、先輩の忍犬が行けば大丈夫。
小さな勇気が、里の民を洗脳まがいな演説から正気に戻させた。 これは三代目に報告するべきだろう。
きっとあの御仁は喜ぶ。 そんな若葉が育って来たのか、と。 ボクに言ってくれたように。

「志村ダンゾウ、ちょっと今回はやり過ぎたネ。 三代目からの伝言を伝える。
 人柱力誘拐殺人なら、根の人員並びに志村ダンゾウを公開処刑。
 未遂で済んだのなら、暗部養成組織 “根” の解体に留める。」

「あの下忍に感謝すると良いですよ。 あなた方の命の恩人です。
 もし、あの下忍に手出しする様な事があったらその時は・・・・ わかりますよね?」



『大蛇丸の影なぞ、己が力でねじ伏せてみよ。 これからお主は、あヤツより遥かに強くなる。
 強くなったと慢心した大木より、強くなろうと努力する若葉の方が伸びるのは、世の常じゃよ?』