根からの刺客 12   @AB CDE FGH IJL




ダンゾウ様に渡すようにと預かったイルカ先生の書簡を渡してから、僕の新しい生活が始まった。
暗部で任務のない日は、根で任務をこなす毎日。 でも全然平気、根と兼任でと最初に言われていたから。
ダンゾウ様は、暗部での僕の活躍や、部隊長達の愛の営みの話を、とても興味深く聞いてくれる。
いつもダンゾウ様と一緒にいる、フーさんや、トルネさんも。 皆の期待に応えられた自分が誇らしい。

僕の暗部への昇格は、組織の皆の励みにもなったようで、組織の他のメンバーにも色々な事を聞かれた。
暗部はどんな凄い忍びの集まりなのか、自分達よりどれぐらい冷酷な武器の集まる所なのか、とか。
僕が見た事をそのまま伝えた。 里や国の為に、自らの手を汚す事が忍びの誇りにさえ思えるよ、って。

そういえばイルカ先生は、カカシさんとヤマトさんの情人だそうだ。 引退したのは重婚の為だとか。
セックスもするんですかと聞いたら“愛の営みと言ってくれる?”と訂正。 寿退部というらしい。
他の暗部の先輩方が、部隊長と補佐を上手に操縦できるのは火影様とイルカ先生ぐらいだ、と言っていた。
僕が油断した完璧な作り笑いをした人。 寿退部したとはいえ、やはりイルカ先生は凄い人だった。

その先生に、入隊祝いにもらった自由帳をいつも持ち歩いている。 先生は僕の絵を褒めてくれた。
チャクラを込めないで、好きな時に好きなモノを描いてごらん? そう言って渡されたミニブック。
特にこれと言って浮びませんと言ったら。 心に浮かんだ人の事でもいいんだよ、俺とかな! って。

こう・・・ 親指で自分をさして、なんだかカッコよくポーズをつけてるその姿が・・・・
なんというか、すごく間抜けで。 言った本人も真っ赤になって照れてるし。 思わず・・・・
本当に思わず小さく笑ってしまったんだ。 クスリ、と。 そうしたら、即座に拘束された。
以前のテストの時のように、僕の腕ごとギュウギュウと。 “今の笑顔は良かったぞ?”そう言って。

イルカ先生には驚かされる。 もう同じミスは犯さない様に心がけていたのに、また油断した。
この瞬間、この人が敵だったら、ああ、僕は死んでたな。 改めてそう思ったんだ、さすがは元暗部。
あの時の様に、またカカシさんとヤマトさんがすっ飛んできたんだけど、今度は剥がされなかった。

部隊長も補佐も、僕をギュウギュウするイルカ先生ごと、ギュウギュウして。 ちょっと息苦しかったな。




先輩達はとても不思議だ。 僕は感情を殺せと教わって来た、でもここにいると浮いてると感じる。
殲滅任務や討伐任務、報復任務や粛清任務。 皆、もの凄く強いのに。 背筋が伸びるほど怖いのに。
くだらないダジャレを言って大声で笑ったり。 面白くなくても笑わなくちゃいけなかったり。

「イルカ先生の背中には大きな傷があるのヨ、ちなみにナルトを庇ってできたヤツ。 燃えるよネ〜v」
「やっぱりボク達は殺し屋じゃないですか。 つい、傷口とか傷跡とかなぞりたくなるって言うか〜v」
「あそこだけ皮膚が新しいから、汗かかないのヨ。 ツルン、ってしちゃってるワケv」
「舐めて、舐めてv って誘ってるみたいでねー ムキになって吸いついちゃったりv」
「「夢中になって樹液吸ってるカブト虫みたいなんだよ〜 笑えるぅ〜〜〜 あははは!!」」


「あの、すみません、アラシさん。 あれの・・・・ どのヘンが笑えるんでしょうか??」
「サイ、取り合えず・・・“羨ましいなぁ〜”って羨ましがって笑ってあげてくれる?」
「はい。 “うらやましいなあー ははははー”   これでいいでしょうか。」
「・・・・・いや、サイ、もっとこう・・・ まあ、いいや。 まずは形から、だ。」

そういう時は、必ず聞く事にした。 そうすると、先輩方は皆、ちゃんと形を教えてくれるから。
僕は笑わせるつもりで言ったんじゃないのに、凄くウケる時もある。 どうしてだか分からないけど。
いつだったか、蛇の面の人が女言葉でしゃべっていたから、気になって。 先輩の一人に聞いてみた。
あの人、女ですか男ですか、って。 だって面で顔は分からないし、声質だって変えてるかもしれない。

そうしたら別の先輩が、本人に直接聞いてみろと言ったので、僕はなんて聞こうかもの凄く迷った。
先輩に向かって、改めて年や性別を聞くのに、どう言えば。 長時間変化出来る人なのかもしれないし。
その時、部隊長達のマイルールを思い出したんだ“言いたい事を言う”っていう話。 だから言った。

『大五郎さん、あの・・・・ ちんぽ、ついてますか?』
『 はぁ?! 当たり前でしょう?! 何言ってんの、サイッ!! 』

『『ぶーーーーーっっ!!! あはははは!! サイ、最高っ!!』』
『いや、シャレじゃねーから! わはははは!! 大五郎、ついてたのかよ!』
『『あははは! 超、腹痛てーーーっ!! サイ、いいぞ! 言いたい事言え!!』』
『まったく、失礼しちゃう! ・・・・でも、今のギャグは良かったわね。』

僕は素朴な疑問を口に出しただけなのに、ギャグにされてしまった。 皆が声をあげて笑うと・・・・
どうしてだかボクも嬉しくなってしまって。 それからミニブックは僕のネタ帳にもなってる。
このセリフは、何人笑わせた、とか。 このセリフは、敵の挑発に使える、とか。 日々研究の毎日だ。

ちなみに“ちんぽ ついてる?”と挨拶するのが一番ウケたので、僕の持ち味にしようと決めた。
組織で言ってもあんまりウケなかったので、根ではネタ帳から引用したセリフを使わない事にしている。