根からの刺客 9   @AB CDE FHI JKL




ダンゾウ様には最終報告をしなくていいと言われ、暗殺は失敗だったのになぜですか、と聞いてみた。
すると、僕の任務に対する姿勢は合格だから、明日の本テストを行う事にしたと説明された。
僕は、第一次試験に通ったんだ。 第一次試験があの暗殺任務で、第二次試験が技術披露だそうだ。

暗殺が失敗したからてっきり、僕は今回の推薦が取り消されるものだと。 でもそうじゃなかった。
任務に対する姿勢が評価されたのだとしたら、やっぱりラーメン屋での接触が良かったんだろう。
イルカ先生ほど完璧ではないにしても、僕の笑顔なら十分、里外の市井で通用するという事だ。

全ては明日にかかっている。 どんな課題を出されても良いように、シミュレーションしよう。
兄さん、僕にはまだ暗部昇格への道が残されていたよ。 今以上に里の為に働けるんだ、見ててね。








「サイ、一番得意な技、もしくは術を見せてくれる?」
「はい。 ・・・・・忍法っ! 超獣偽画っっ!!」
「へー 面白い。 描いたものを実体化できるんだね?」
「わー サイは芸術家だなぁ! しかも墨絵か! めちゃくちゃ味があるじゃないかっ!」

「でも一番得意なのは封印術です。“虎視耽弾” なら、どんな敵も巻物の中に引きずり込めます。」
「フーン。 どんな敵も、ねぇ? 例えば・・・・ 暴走しそうになった人柱力とかはどう?」
「問題ありません。 大虎が咥えてくれるので、尾獣チャクラに触れるのは僕ではありませんから。」
「・・・・なるほどね。 ボクの木遁忍術以外でも、尾獣チャクラに触れられる、ってことか。」

「おいおい、じゃぁ、その気になれば、ナルトもその巻物に封印出来るんじゃないか?! サイ!」
「あ。 そういう事になります。 さすがイルカ先生です、人柱力も封印できますね、僕。」
「「へー 凄いね! ・・・・・。 (そこまで強固な封印術なら脅威も感じるか・・・・) 」」

忍法 超獣偽画で出した鳥を木に止まらせた。 芸術家とまで言われ称賛されたけど、僕の一番は違う。
封印術ではお前の右に出るモノはいないとダンゾウ様に言われている、その実力をアピールしなくては。
封印対象がいないので説明だけになってしまったけど、僕の高い能力の未知の可能性を示唆してくれた。
言われてみればそうだ。 僕の大虎なら、人柱力も封印出来る。 常時安全に保持する事も可能だ。

「ンー オッケー! 気に入った! ごぉおーかぁーくっ!! サイ、暗部入隊推薦!」
「ただし! 何年かは根と兼任してもらうつもりだから、後で綱手様に挨拶に行こう?」
「サイ、よかったな! おめでとうっ!! 部隊長と補佐の後押しがあれば昇格確定だ!」
「は・・・・はい! 有り難うございますっ!」

今、里は優秀な人員が少なく、またそういう人員は必ず兼任しているそうだ。 このトップツーも。
上忍として通常任務をこなしつつ、暗部の部隊長、補佐として陰でも動く。 それほど優秀な人材。
イルカ先生は3つも兼任してる。 僕も根と兼任なら、彼らに優秀な人材だと認めてもらった証拠だ。

ダンゾウ様、僕は感情を上手く表現できませんが。 里の意向の奥の深さには、脱帽するばかりです。
入隊テストでは不合格だったけど、僕の無二の能力を認めてくれて、術の可能性にも気付いてくれた。
今回のテストの課題だった、うみの中忍暗殺任務は、あくまでも僕の計画性を確かめる為だけのモノ。
里の同胞を殺した後、霧忍の仕業に見せかけるという暗殺計画は、完璧だと褒めてもらえた。

そしてなにより驚いた事は、人柱力の常時里内保持の体制の事。 国外に出したのには訳があった。
大陸の中心地にある火の国の木の葉隠れの里は、揺るぐわけにはいかない。 忍びはその里の武器だ。
人柱力を里に待機させるだけでは、他里に最強の尾獣を保持していると、その脅威を示す事ができない。

「フフ、サイに裏の読み方を教えるヨ? どうして自来也様が同行してると思う?」
「不安定な人柱力の護衛・・・・ では、なさそうですね・・・・」
「自来也様は仙人チャクラを操る、伝説の三忍の一人。 こう言えば分かるかな?」
「・・・・人柱力が・・・・ 仙術まで使える忍びだと・・・・ 知らしめる為、ですか。」

「お! さすがサイだ。 少しのヒントで明確な答えを導き出せたね。」
「あ、ありがとうございます・・・・・ そうか・・・・“結果”は必要ないんだ・・・」
「その通ーり。 仙術を使えようが使えまいが、そんなコトはどうでもいいのヨ。」
「うん。 重要なのは、他里の連中にいかにそう思わせるか、なんだよ。」

人柱力は里内に保持するだけでは意味がない、国外に出て、脅威をチラつかせてこそ意味がある。
それが一番現実的で、有効な切り札の使い方だと説明された時、もの凄く納得した。 これが実践だ。
しかも“自来也様と修行の旅に出ている”というだけで、九尾の人柱力の付加価値は上がる。
仙術まで扱えて、尾獣チャクラもコントロール出来る忍び・・・・ それはもう、木の葉の最強の武器だ。

今実際に木の葉崩しで人材が不足しているが、兼任という形でカバーし、内外にそう思わせないのも。
忍びは騙し合いの世界に生きる者。 例えそれが真実であろうとなかろうと、そう思わせた方が勝ちだ。
火影直属 暗殺戦術特殊部隊はやはり、僕達“根”の誰もが目指す、里で最高の武器の集まりだった。