根からの刺客 5
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ご馳走になったラーメンは、おいしかった。 他に醤油や味噌・塩・豚骨があった、今度食べてみよう。
今迄里には何度も来た事はあるけど・・・・ というか。 お店の開いている時間に来た事はなかった。
闇にまぎれて同胞やその家族の始末に来る事がほとんどだったから。 日中の里入りは始めてかも。
今回は初めての事が多い。 暗殺対象と会話をしたり、その為に昼間に里内をうろついたり。
面を外しても怪しまれない為に笑顔を絶やさずにいろ、そうすれば誰も根の者とは思わないと教えられた。
僕と兄さんが暮らしていた山小屋に置いてあった “笑顔の表情美学” という本の著者がダンゾウ様だ。
全てにおいて実践で役立つ。 本当にその通りだと、こんなところでダンゾウ様の教えの凄さを実感した。
笑顔は人を欺く為の最大の表情。 誰しもが油断して隙を見せる表情。 ただ笑うだけでいいなんて。
あの中忍も僕の笑顔を見る度、頭を撫でてきたし。 腕を切り落としてやろうと何度も思ったけど、つい。
残りのラーメンが食べたくて我慢した。 あの先生なら、頼むにしても何にしてもいつでも殺せるから。
僕がアカデミーに降格を言い渡された下忍だと信じた中忍は、明日アカデミーの裏山に来いと言った。
つまり今日だ。 今日ここで、今から。 中忍が僕に大事な話があるらしい。 ところが少し待てと言う。
自分から呼び出しておいて、大事な話があるとか言っておいて。 いきなり今度は待て、とは。
まさかこの中忍・・・・ 僕の目的に気付いていて命乞いか? いや、遺言を頼むつもりなのかもしれない。
「すまんな、もうちょっと待ってくれ、どうしても会わせたい人がいてな?」
「会わせたい・・・・ 人?」
「あー まあ先に言っちゃってもいいかな? 二人とも公言してるし。」
「二人? 僕がその人達と会う事は、里の為になるような事で・・・・・・ っ!!」
顔には出なかったが少しビックリした。 いきなり中忍が僕を抱きしめたからだ。 何するんだ、コイツ。
しまった、これでは両手が使えない! 文鎮刀も背中から抜けないし、超獣戯画も描けない・・・・
僕が・・・・ 動きを封じられたというのか?! こんなヘラヘラしてていつでも殺せそうな・・・・ はっ?!
“笑顔は誰しもが油断して隙を見せる表情”だ、この中忍も笑っていたから、僕も油断してしまったのか!
「里の為に人と出会うんじゃない、それはあくまでも結果だ。 そうじゃなくても出会っていいんだ。」
「・・・・・・応援を呼んだの。 僕とした事が・・・・・」
「笑うな! 無理に笑わなくていい。 ここには俺とお前しかいない、作らなくていい!」
「・・・・・・そこまで鋭い様にも見えなかった。 やるね。」
ばれちゃってたなら話は早い、正直に話そう。 もともと敵忍の仕業に見せかけて殺すつもりだったし。
人柱力の里内保持を強化させる為に大役をお願いします、って。 その死をもって現実を直視させる様に。
これから来る二人とやらに、この中忍の惨殺死体を発見してもらえば、大騒ぎになるだろう。
準備は万端。 この前狩った霧隠れの額当てがある。 死んだ彼の手に握らせれば、僕の計画通りだ。
「 チョット!! なんでギュウギュウしてるのっ!! イルカ先生、離れなさいっ!!」
「早っ! 早かったですね、つい今さっき式を飛ば・・・ わわわっ! 〈ベリッ!〉」
「 君もっ! もっと小さい子かと思ったよっ!! ナルト達と同じぐらいじゃなかっ!!」
「 〈ベリッ!〉 ・・・・・・・・。 (僕が・・・ 気配に気付けなかった?!)」
アカデミーの裏山でゆっくり話を聞きたい。 とても大切な話があるからと。 昨日のあの時に思った。
人気のないところにわざわざ呼び出してくれてありがとう、では明日そこで死んでもらいますね? って。
ラーメンと笑顔に油断した、その結果がこれか。 何の気配も感じなかった。 空気の揺れの一つも。
暗部入隊に一番近いと言われている、この僕が。 もの凄い速さで有無も言わさず引き剥がされた。
なんだろう。 このふたりは何者なんだ? 僕を拘束するつもりはないらしい、剥がされただけだ。
拘束されたのは彼の方だった。 なぜか“ビックリしただろうゴメンな”と僕に謝っていたけど。
・・・?? 組織が僕の任務に補助を寄越した? いや、でも昨日の時点ではそんな話は・・・・・
「君がサイ? 話はイルカ先生から聞いてるよ。 ボクはヤマト。」
「ハハ、ビックリさせちゃった? ゴメーンネ。 オレはカカシ。」
「あー サイ? 俺が会わせたかった二人。 暗殺戦術特殊部隊の部隊長と補佐の二人だ。」
「!! 暗部の・・・・・ 黄金コンビ・・・・ このふたりが・・・・・」
彼が呼んだ応援は暗部のトップツーだった。 なら、僕が気配を察知できなくても不思議じゃない。
どうして・・・・ はっ!! これはまさか・・・・ 取引か?! 見逃す変わりに僕を暗部に紹介すると?!
そうだ、何を勘違いしていたんだ僕は。 彼はヒルゼン様の時代から、火影室に出入りを許された忍び。
笑顔の裏で取引を画策するぐらいの忍びでなければ、火影の懐に入れてはもらえないはずじゃないか。
しかもさっきからずっと拘束され続けている。 危険・・・・ なのか? ひょっとして彼は危険人物?!
ダンゾウ様。 笑顔は人を欺く為の最大の表情、これがその手本なのですね。 実践で学べという事だ。
腕ごと僕を抱きしめたのは、腕を封じただけではない。 彼がその気なら、僕は今、生きてはいない。
さっき僕は殺されていたかもしれないという事実。 隙だらけの隙こそが、カモフラージュだったのか。
ダンゾウ様が実践で学べと送り出してくれたという事は・・・ まさか。 これは暗部昇格の試験か?!
きっとそうだ、彼の様な忍びに対峙させ、暗部のトップツーから直接、合否を言い渡されるのだろう。