根からの刺客 13   @AB CDE FGH IJK




ダンゾウの事だ、火影様にはワシからも挨拶をしておいたからな、とかなんとか言ったんだろうね。
“保護者用の書簡” を受け取ったヤツは、子を思う父親になりすまして、サイに返事を持たせた。
餌に喰いついたんだ。 これが本当なら、なんて里や息子の事を思っている親だろう、って思うよ。



我が子の可能性を認めて下さってありがとうございます。 里の精鋭集団に入隊とは言葉もありません。
本来ならご挨拶に伺う所ですが、忍びでもない私は、あの子の枷になるのではと、思い止まりました。
隊員の素性は一切極秘扱いだと聞いております。 もしばれるような事があれば、後悔しきれません。

あの子が忍びになると決めた時、こうなる事は覚悟していました。 例え我が子であっても里の子。
あの子が民の為、木の葉の為に命を捧げるというのなら、喜んで送り出してやろうと思います。
どうかサイの事をよろしくお願いします。 口下手で空気の読めない子ですが優しい子です。
暗殺戦術特殊部隊は、火影直属の極秘部隊。 わが身が我が子の弱みになる事に耐えられません。

ですから書簡をもらった日に、サイとはしっかりとお別れを致しました。 父を探してはならぬと。
風の噂で聞くお前の活躍を心の支えに、また誇りにして、遠くの地より見守っているよと。
極秘部隊に入ったからには、もう会えぬと思えども、我が子を思わぬ日は一日たりともありません。




・・・・・・もっともらしく書いてるけど、綱手様に会わない為の口実だ。 だって自分だとバレるから。
さすが無知な子供を集めて洗脳教育してきた男、敵ながらアッパレ。 いや、左遷組だけど里のご意見番。
当のサイ本人は何も知らない。 自分は暗部に昇格した忍びで、根の任務も兼任してると思っている。
ダンゾウはそんなサイを、暗部の情報を得る為のスパイに仕立てたつもり。 全部ボク達の思惑通りだ。

サイは、ダンゾウが里からも綱手様からも信任の厚いご意見番だと思わされているけど、実際は違う。
暗部養成機関“根”は10年前に解体された。 三代目も五代目も、ダンゾウのやり方には反対だ。
奴は本気で里の為に行動してると思い込んでいる。 自分が火影になる事が里にとって有意義だとね。

自分の持ち駒を育てる事は同時に、それがいい忍びであればあるだけ、奴にとっての人質という事。
持ち駒を持ち主がどう使おうが、死にそうな命を拾って育てた者の自由。 そう言われればお終い。
三代目、五代目は忍びの命と誇りを大切にする。 ダンゾウはそれを知っていて、生きた盾を作ったんだ。
自分を粛清すれば、この若き忍び達の命はない、それでもいいのか? 惜しくは無いか? そういう事だよ。

それでなくても表向きは解体された組織、いつでも切れる。 自分に手が回りそうになったら、その時は。
火影になる自分の命と教えが何よりも優先の男だ。 事実上存在しない養成組織など切り捨てる。
あの男は、あの山の中の養成施設も根の痕跡も全て破壊して、知らぬ存ぜぬで通すだろうね。





「カカシ、ヤマト。 ダンゾウが接触して来たぞ?」
「へー。 やっと動きましたか。 で、ナンて?」
「第七班の新メンバーを、カカシが探しているとばら撒いておいたからな。」
「・・・・て事は。 ボク達が気に入って暗部に入隊させた人間を、表でも?」
「ふ。 作戦成功だな? まあ、ナルトが戻ってくるのは、まだずっと先だが。」

人柱力の監視だとか何とか言って、ナルトに近付ける腹だ。 サイを利用する為に。 ウン、計画通り!
あの脅威に思えた封印術が、人柱力すら封印出来ると知ったから。 ヤツならそうくると思ったヨ。
サイを始末しなくて良かったと思ったはず。 もし人柱力を手中に収めれば、里はヤツの思いのままだ。
それにオレ達も知っているから、信用して油断すると思っている。 暗部の後輩だから、ってネ。

これで晴れて、サイを七班の一員に迎える事ができる。 なんてったって、ダンゾウ自らのご推薦だし?
だからって、ナルトをみすみす封印させるはずは無い。 その頃には、サイは自分で答えを見つける。
自分の目で確かめ、それが本当に里にとっての最善なコトなのかどうかを見極めるようになってるヨ。

もしかしたら使命感を持たせる為に、木の葉の抜け忍 うちはサスケの暗殺命令を出すかもしれない。
もしそうなら、サイは暗殺に燃えるだろうネ。 イルカ先生やオレを裏切った、って思ってるから。
実は不器用なりにも、サイはオレ達に懐いてくれてるんだヨ。 サスケが元弟子で教え子だと知ってる。

例え意気揚々と暗殺に行ったとしても、感情の戻りかけたサイなら、自分の行動の結果を考えるヨ。
サスケに会えば、ナルトやサクラの気持ちを優先する決断をするかもしれない。 そうなって欲しいし?
でもまだオレ達は知らないフリ。 ダンゾウが綱手様に推薦したい忍びがいると話したダケ。
きっとサイ自身も知らないコト。 サイは本当によく働く忍びだヨ。 早くナルト達に会わせたい。

「よし! サイ、七班にゲット・・・・ の予定!!」
「先輩、新生七班の誕生・・・・ ですね、多分!!」
「ヤマト。 その時はお前も上忍師にしてやるぞ? これは決定だ。」

「え! 本当ですか?! やりましたよ、先輩っ!!」
「綱手様、オレは?! カカシ班じゃないの?!」
「交代で担当すればいいじゃないか。 お前、倒れてサボるの得意だろ?」
「・・・・・・・・ヤ、ソレはイタチが・・・」
「あははは! バレてますよ、先輩っ!」

それはあえて否定しませんが。 ナルトが帰ってきたら、ヤマトの木遁チャクラが必要になる。
尾獣チャクラの暴走を止める為に、どうしても必要だから。 個別修行かと思った・・・・ でも。
これ、前に先生が言ってた、三人のお父さん’Sだよネ? わー なんか無性にナルトに会いたくなった。
きっと先生がポロポロ泣いて迎えるんだヨ。 そんでオレ達はそんな先生を慰めるんだ、愛の営みで!

「交代で担当してもらった方が、暗部の任務もはかどるからな。」
「「・・・・・・そっちが本音ですか。」」
「まあ、そうボヤくな。 お前達の好きな、親子ごっこが出来るじゃないか。」
「「ですね! ・・・・・・・イルカ先生、愛してまぁ〜〜〜〜すvv」」
やかましいっ! いいかげん叫ぶのはヤメロッ!!

ま、ナルトが帰って来る頃には、サイの洗脳もだいぶマシになっているはず、問題無い。 それにネ。
最近では、あのミニブックに誰かを描いているんだヨ。 残念ながら顔がのっぺらぼうだケド。
それは多分、サイの心の中にある記憶ですよ、きっとお兄さんですね、とイルカ先生は言った。
自分の中の記憶を思い出そうとするのは、洗脳が解けかかっている証拠だ。 頑張れ、サイ。


・・・・一つだけ心配なのは、事情を知ってるオレ達の部下が、サイにいろんな事を吹き込んでんのヨ。
部下も洗脳教育には腹を立ててた。 ヘンな挨拶とか、覚えなきゃいいんだケド。 ・・・大丈夫だよネ?  




サイはイルカ先生が元暗部だと信じ込んだままです。 そしてあの挨拶でナルトにドン引きされるのです!(爆)   聖