根からの刺客 6   @AB CDF GHI JKL




だとしたらこの任務そのものが、暗部入隊の為のテストだった可能性がある。 そう考えるのが妥当だ。
でなければ、話した次の日に暗部のトップツーが面接するはずはない。 唯の中忍には不可能な事。
このふたりが、上忍というだけではなく暗部だという事は、あの気を感じればすぐに分かる。

僕は油断して暗殺に失敗しただけでなく、逆に隙を見せてしまって動きを封じられてしまった。
瞬時に引き剥がされた事、彼がまだ拘束されている事、あのままでは僕は殺されていたという証拠だ。
使えそうな駒を傷つける訳にはいかない、暗部のトップツーならそう判断して止めに入ったのだろう。

合否がどうであれ、このテストの反省点を実践で生かさなければならない。 同じ失敗をしない為に。
僕の立てた “うみのイルカ暗殺計画” を説明すれば、どこで油断してしまったのかを聞ける。
それに自分で言うのもなんだけど、いいトコロまではいけたと思うんだ。 相手が悪かっただけで。
でも実践じゃ、相手が悪かっただけなんて言い訳は出来ない。 これがテストで良かったと思う。

「僕のどこが間違っていたか、知りたい。」
「フフフ、自分の間違いと向き合うのは立派なコトだーヨ。」
「でもどこから間違えてしまったか、何が間違いなのかさえ、分からないんだね?」
「・・・・・はい。 その通りです。」

「カカシさんっ! ヤマトさんっ! そろそろ手を離して下さいっ!」
「ごめーんネv でも、次にコノ手がサイの頭にいくのかなー とか思ったらサ? な、ヤマト?」
「ええ。 先生は絶対、可愛がっちゃいますもん、サイの事。 だからこの手はキープなんです。」
「・・・・・こんなので説得力あると思います?    どう思う、サイ?」
「僕に触らせない為であるなら、有効な手段かと思います。」

どう思うかと聞かれた。 黄金コンビは僕の安全を確保してくれているのだから、説得力もなにも。
どうやら、彼の手が僕の頭に触れると危険だったらしい。 では昨日のラーメン屋での接触は・・・ 囮?
一度安心させておけば、それは相手にとって無警戒の動作になる・・・・ 全てが計算されたモノ、だ。
いや、もしかしたらあの時の接触で、僕の頭に何かを仕掛けたのかもしれない。 相互性のある術とか。

「そ、そうか? まあ、そう思ってくれているなら・・・・ もう少ししたら落ち着くと思うし・・・・」
「「サイって・・・・ 実はもの凄く理解力のある子だったりする?」」
「どうでしょうか・・・・ では、落ち着いたら離して下さいね?」
「「了解っvv (先生の手とラブ繋ぎvv 幸せ〜〜〜) 」」

“可愛がる”とは? ちょっと僕の頭の中を弄って? 恐ろしい忍びだ、殺気は感じなかった。
もう少ししたら落ち着くとは・・・・ 彼の殺気の無い殺気が静まる、という事なのだろうか。
そういえば、最初腕ごと束縛してたけど、今は・・・・・ 手のひらを押さえるだけに留めている。
少しずつだが、落ち着いてきているのかもしれない。 黄金コンビも完璧な作り笑顔だ、凄い。

「「違う所も触りた〜〜いvv」」
「こらっ! 調子に乗るなっ!」
「「むー イルカ先生が駄目って言った・・・・。」」
「駄目とは言ってません。 今は、禁止なだけです。」
「「やったっvv」」

黄金コンビがそれぞれ両手を拘束しなければならないほどの、無意識の殺気・・・・。 この中忍はもしや。
暗部の中でも信を置かれている隊員なのか? 今迄の事柄を整理すると、そうとしか思えない。
火影室の出入りを許されている、人柱力に及ぼす影響力は多大だ、それに暗部入隊テストの試験官も。

表向きはアカデミーの教師で受付忍・・・・ やはり暗部は素晴らしい。 超エリート集団だ。
中忍の・・・ いや。 僕もイルカ先生と呼ばせてもらおう。 イルカ先生から学ぶ価値はありそうだ。
ダンゾウ様の “笑顔の表情美学” より上をいく笑顔の作り方を、実践で教えてもらおう。
この二人のニコニコも凄いけど、やはり僕が最初に騙されたイルカ先生から教えてもらいたい。

黄金コンビが止めに入ったぐらいだから、僕は彼らから見ても有能な忍びだと評価してもらえたはず。
もし不合格でも、少しでも気に入ってもらえるように努力をすれば、いい印象には残るだろう。
ダンゾウ様、見てて下さい。 僕はこの三人に教えを請い、暗部入隊を必ず果たしてみせます。