根からの刺客 2   @BC DEF GHI JKL




根の訓練所はダンゾウ様の所有する山中にある。 火の国の国境付近の山、里からはだいぶ遠い。
山を下りると水の国や波の国の沿岸、重要な国境地点だ。 暗部養成組織 根が監視を任されている。
さすがと言おうか、木の葉隠れの里の警備体制は万事無駄がない。 組織がそこにあれば実践で学べる。
他国からの侵入をいち早く阻止する事。 つまり、里を他国の脅威から守っているのは僕達、根の者だ。

火の国や里を、他国・他里の脅威から日々守っている僕達の夢は、暗殺戦術特殊部隊に入隊する事。
皆、火影直属のエリート部隊の隊員を目指している。 そうすれば今以上、里の為に働けるんだ。
忍びは里の武器であらねばならない。 これは小さい頃からダンゾウ様に教わってきた心得の一つ。

立派な武器である為には、強い心を手に入れる事。 里の為に手を汚す事を恐れない、強い心を。
僕はもう、その強い心は持っている。 後はダンゾウ様が言う様に、推薦があれば入隊できるはず。
暗部や根の忍びは、正規の忍びに顔を見せない。 だから僕が素顔で里に入っても誰も顔を知らない。
裏で動く忍びは、だからこそ動きやすい。 顔を知られれば、同胞殺しはやりにくいから。

ダンゾウ様は言った。 根の者は暗部隊員の養成組織、更に極秘の組織なのだ、選ばれた者達なのだと。
その誇りが僕達を突き動かす原動力。 里の為に手を汚し続ける暗部の隊員に、一日も早く昇格する事。
ダンゾウ様の言葉に胸が熱くなった。 とうとう僕も里の暗部の隊員になれるって。 兄さん聞いた?


暗殺ターゲットは中忍。 うみのイルカ 男 24才 忍者アカデミーの教員。 故に里での知名度は高い。
任務受付所の受付係、三代目火影ヒルゼン様の保護した九尾孤児で、火影室の出入りを許されている。
人柱力 渦巻ナルトのアカデミー卒業を認めた担任教師。 ラーメン一楽の常連客。 独身。

教えられた情報は以上。 ダンゾウ様は、アカデミーに出戻りの下忍のフリして近付けって言ったけど。
さっきから遠目で観察している彼は、凄く実直そうな忍びだ。 火影室に出入りしてた先生だし。
火影室に出入りを許された忍び、って事は里の裏の顔も知っている・・・ という事だと思う。
だから僕は、正直に死んでほしいと頼めば、死んでくれるんじゃないか、そんな気がしてきた。





「イルカ先生、ナルトが旅立って・・・・ 淋しいでしょう?」
「そ、そんなことありませんよ! それに今は・・・・ いや。 やっぱり分かります?」
「ははは! 一口食べては思い出し笑いしてりゃね、誰でも分かりますって!」
「帰ってきたら、一番に食べさせてやろうって思ってますよ、おやっさんのミソ豚骨!」

「おう! 任せときな! その時はナルトと先生の為に貸し切りにするよ!」
「おやっさん・・・・ いつもアイツを気にかけてくれて・・・・ 有り難うございます。」
「水クサイねぇ、イルカ先生。 おりゃー、ゴーグルつけてた時代から知ってんだぜ?」
「ははは! そうそう、あいつイタズラばっかりして、その度に・・・・・・・・・」





ほら。 彼は人柱力の為には何でもしてくれそうな実直な人間そのもの。 正直に打ち明ければ・・・・
まだ尾獣チャクラをコントロール出来ない不安定な人柱力を、国外に出すべきじゃない。
忍びなら客観的に自分を評価しなければならない、人柱力の里での立場を自覚する布石になって欲しい。
親しい者の死を乗り越える、国外に出る事の危険性を理解する、貴方が死ねば一石二鳥です、って。

あんなに嬉しそうに話しているのだから、彼はよほど人柱力にとって親しい人物なのだろう。
その人柱力の為に、木の葉隠れの里の切り札を使える状態にして置く為に、何が最善なのか分かるはず。
自分が役に立つのならと、殺害方法も考えてくれそうな忍びだ。 彼にも火の意志があるのだから。

でも。 正直に話すにしても、近付かなきゃならないのか。 僕、会話って・・・・ 得意じゃない。
しかも暗殺対象と会話するなんて、今迄一度もなかった。 ダンゾウ様はこれも予想されていたのかな。
近付けば、説得しようが即殺害しようが、僕の好きに出来る。 話すのが面倒になったら殺せばいいか。
よし、あのラーメン屋に行こう。 アカデミーの先生ですか、ご相談があります、とか何とか言って。





「あの、あなたアカデミー教師ですか。 下忍から降格です。 何をすればいいですか。」
「・・・・・・・。   あーーーーー 取り合えず・・・・・  おやっさん、ミソ豚骨追加!」
「あいよ、イルカ先生! ミソ豚骨一丁っ! ・・・すぐ出来るから。 まあ、座れや坊主。」

「・・・・・・・はあ。 じゃ・・・・・・・・」
「“はあ”じゃないっ! “はい”だっ! 言い直せっ!」
「・・・・・・・。 はい。」
「上出来だ。 ・・・・あのな、ここのミソ豚骨は最高だぞ?」

「ははは! 早速イルカ先生の教育的指導ってヤツが出たな?  へい、ミソ豚骨一丁、お待ちっ!」
「なんですか、教育的指導って。 ん。 ちゃんと言えた人にはご褒美だ、ほら、食え? お前のだ。」
「・・・・・・・・・どうも。」
「“いただきます”だ。」

「あははは! おう、遠慮なくいけ、イルカ先生のおごりだ! な? 先生?」
「そういう事。 今いつも俺にたかる奴がいないから、いくらでも食え?」
「・・・・・・・・・いただき、ます・・・。」

いきなりラーメンを食えと言われた。 二回も言い直しをさせられた。 アカデミーの先生は皆、こうなのか。