闘犬島〈とうけんじま〉の秘密 12   @AB CDE FGH IJL




カカシさんとヤマトさんへ

おふたりの事だから、目には目を、を実行されたモノと思います。
犬達は苦しまずに逝けたでしょうか? 辛い決断を思うと胸が一杯です。

ツメさんの任務依頼完了の情報を、当の依頼人より早く知って、
八班の・・・ いえ、俺達の子供らは抱き合って喜んでいました。
あの様子じゃ、今日のCランク任務のイモ掘りは上の空ですね!

俺達のお父さん達、早く帰って来て下さいね。 でも無理は禁物ですよ。
シバが戻りたくないと、珍しく駄々をこねていました。 はて?

元気がなかったので、シバの顔に一杯キスしてあげました。  イルカ



イルカ先生はホントにボク達とシンクロする。 こんなに離れた所にいるのに一緒にいるみたい。
ツメさんの調合してくれた毒薬を、ボク達がどう使ったかなんて、先生にはお見通しなんだね。
この前“蓄積型”って書いただけなのに。 一緒に任務に就いてるみたいで、凄く嬉しい。

そうか、みんな喜んでいたんだね。 ふふ、畑で泥んこになっている八班を想像すると楽しいよ。
子の一挙一動に生き甲斐を感じる。 親ってこういうもんかな? あ、でも八班には・・・・
なにかと世話を焼く姑と舅、大酒飲みの夫婦がいた。 ボク達の子は、やっぱり七班でいいや。

「「シ〜バちゃんv おいで?」」
「う・・・・・ だから戻りたくなかったんだっ! わ、わ、わ、わぁ!」
「「キスを補充v イルカ先生、一杯ありがとーーーーっvv」」
「グルコ、ぼくも顔中舐めまわされたよ・・・・・。」

ボク達も早く、先生の待ってるお家に帰りたいです。 帰ったらすぐにイルカ先生の中に入りたい。
“何も言わなくていいです、おふたりを信じていますから”そう言って優しいキスをして欲しい。
世界には同じ人間が三人いるっていうけど、ボク達の事? だって、こんなにシンクロするから。


イルカ先生の予想通り、鞍馬達に毒を蓄積させて闘犬に食わせた。 一度人間の血肉を味わった獣。
野に放ったら大変だ。 人間は餌にしか見えないから人を襲って食う。 そう育てられたから。
だから殺すしかなかったんだ。 闘犬達は、お腹が一杯になって、お昼寝して、そのまま逝った。

でもこんな事は、里の下忍は知らなくていい。 ツメさんの任務依頼の完了と、全闘犬を死刑囚に。
その結果だけを知っておけばいいんだ。 裏を歩くのは、彼らが上忍になってからでいい。
もしそれまでに死んだら、彼らにとっての木の葉は、綺麗なままの思い出だから。 それでいい。


「ん、これでヨシ! 次に生まれ変わっても、この島に生きられるヨ。」
「またここで、綺麗な花を咲かせますよ。 きっと。」
「皆、ご苦労さん、巻物にもどっていいヨ・・・・・ ??」
「・・・・どうしたの? ・・・・やっぱり、悲しい??」

昨日死んだ闘犬の死体は、その場で燃やして遺骨に。 今朝、剛に確認してもらい、忍犬に持たせた。
丁度八匹。 小さい風呂敷に包んだそれぞれの遺骨を、首からぶら下げて歩く先輩の忍犬チーム。
口寄せ獣と犬は根本的に違うけど、でも。 同じ犬として、闘犬の一生を憐れんでいるんだね。

この近辺の海を見渡せる丘の上。 独立諸島の島々がほとんど見えるこの場所に、遺骨を埋めた。
先輩の土遁と、ボクの木遁で。 忍犬達に聞いたら、桜がいいと言うので、桜の木を生やした。
忍犬八匹は、一列に並んで、桜越しに海へと遠吠えをする。 分かるようになったんだ、ボクも辛い。
でもボクより、カカシ先輩の方が辛いんじゃないかな。 だって忍犬使いだし。 犬大好きだし。

「カカシ先輩、ボク達も叫んでみますか、一緒に。」
「ウン、イイねー。 思いっきり叫ぼうか。 せーの、」

「「 イルカ先生、愛してまーーーーす!! 」」

「ぶっ! どんだけシンクロしてんのお前! あはははは!」
「ぶっ! 先輩こそ! ここでそうきますか! あははは!」

先輩、忍犬チームが負けじと叫んでますよ。 ここは大目に見てあげましょうか、頑張ってくれたし。
パックンを中心にブル、ビスケ、ウルシ、ウーヘイ、グルコ、アキノ、シバ。 海に向かって叫んでる。
あはは!“拙者達を巻き込むなぁーーっ!”とか“ちゃんとした任務くれぇーーっ!”とか言ってるよ。
思いっきり叫ぶのって、何気に結構気持ちいいだろう? ボク達がいつも叫ぶ気持ち、分かった?

「戦うコトだけを考えている獣は、元に戻れないんだよネ。」
「心が、感情があるって、いつでも元に戻れるんですよね。」
「ウン。 見つけられてよかったよネ、ホント。」
「はい。 気付かないまま死ぬなんて悪夢です。」

感情が戻ったボク達は、叫ばずにはいられない。 溢れて来る感情に心が追いつかないんだ。
今みたいに辛い事が目の前にあったら、思い出すのはイルカ先生。 そうするとね、すぐに元気になる。
死にかけたとしても死にそうな事を忘れるぐらいの思い出が“生きて帰らなきゃ”って思わせてくれるから。