闘犬島〈とうけんじま〉の秘密 8   @AB CDE FHI JKL




この任務依頼の依頼主は犬塚ツメさん。 闘犬島の牙に代わって、牙の家族を殺した奴らの暗殺だ。
だから偵察部隊が先行した。 皆殺しにする訳にはいかないからね。 情報収集は迅速行動のカギ。
第八班に課せられた任務は、ターゲットの絞り込み、及び、侵入経路・退路における傭兵数の把握。

ところが、鼻の利く忍犬 赤丸が闘犬の正体を暴いた。 あの犬は、術をかけられた人間だ、と。

憤慨した紅班は、油女一族 シノの蟲を使って、その闘犬の一匹から情報を盗み取ることにした。
そしてそれらが、元は監獄島に投獄されていた死刑囚だと知る。 大半が闘犬にされた罪人だった。
日向一族 ヒナタが白眼で確認したところ、変化は固定されていて、術者の痕跡もないらしい。
白眼・蟲使い・獣術は、探索や偵察に向いている。 イルカ先生は偵察部隊の班編制にしたんだね。

「先輩、八班の偵察で、ここ一番使えます。 90%、気付かれずに出入りできますよ?」
「んーと、剛の緊急時の抜け道か・・・・ ナルホド。 偵察部隊の期待の星だーネ。」
「抜け道を反対から通ってくるなんて、思いもしないでしょう。 寝室に出るのかな、ここだと。」
「あ、ホントだ・・・・ 床の間の掛け軸の裏って。 ベタ過ぎるでショ。 まぁコレは、裏の裏?」

水の国と火の国の間に位置する独立諸島。 ウチが知らなかったと言う事は、おそらく霧隠れだろう。
第八班は憤ったが、事を荒立てず速やかに帰って来た。 そしてボク達暗部がこの任務を引き継いだ。
綱手様の辞令は、島の所有者 剛に接触し、必ず暗殺許可を得る事。 その見返り条件を提示する事。

ボク達暗部には、里の正規の忍びが戸惑うような任務を与えられる事が多い。 つまり、こんなの。
剛の右腕でもある大会主催者の鞍馬 〈くらま〉 の暗殺と、霧隠れの独占シェアを横取りする事。
毒をもって毒を制す、暗部は皆、それをモットーにしている。 当然、裏取引はお手のモノだ。

今、カカシ先輩と掛け軸の裏の抜け道で待機中。 夜中になったらここから出て、交渉開始。
夜中まで待たなきゃならない、気配を消して待機している、そんなボク達の頭の中は昨夜の情事。
目を閉じると、先生の体温や吐息をすぐに思い出せる。 ボク達今、無言で幸せリプレイ中。





『ちゅ、ちゅ! んでね、毎日報告しますから、ちゅ、ちゅ!』
 ん、はっ・・・・ はぃ、まっってぇ、・・・ますぅ、んっ、ぁ・・・
『キバ達には、チュ、チュ! 知らせて、チュ、あげてネ? チュ!』
 ぅぅん・・・ゃ、ぁ・・・わかぁり、ぃん・・・ましたぁ、んっ・・・





ふふ、昨日も充実したんだよね。 なんで先生って、ちゃんと答えてくれるのかな? 先生だから??
どんな状況でも問いかけに応えてくれる、っていうのは・・・・ これね、結構燃えるよ?
荒い息の下で、悶えてるんだか話してるんだか判らないような、イルカ先生の途切れ途切れの声。

もう、カカシ先輩とボクの、ちょっとSっぽいトコロを刺激し過ぎ! だってボク達、暗殺部隊だし。
ちゃんと聞こえなかったよ? なんて言ったの? とか・・・・ 思わず言っちゃうでしょう?
それでも律儀なイルカ先生は、頑張って答えようとしてくれるんだよ、もう、たまんないっ!

イルカ先生との触れ合いを思い出したら、待機なんてあっという間。 残念、時間になっちゃった!
でも時間がもっとあったら、それこそ思い出し過ぎて、ちょっとナニがヤバい事になりそうだった。
これぐらいが丁度いいのかもしれない。 交渉前に軽くヌイて、最中に見つかったら、間抜けだしね?



「そなたたち、一体どこから・・・・ まあいい。 私が今、死んでいないという事は、内緒話か?」
「さすが剛様、話が速い。 密談交渉ですヨ。 火の国は木の葉隠れの里 火影の代理で参りました。」
「火影直属暗殺部隊 部隊長カカシと補佐ヤマト、闘犬島にとって、より良いお話を持って来ました。」

「・・・・・ほう? 木の葉の暗部の長がわざわざそろって来るとは。 その誠意は買わねばな?」
「ありがとうございます。 最近新しい商売を始められたようで? ゼヒお耳に入れたいナー と。」
「監獄島は、剛様の次に。 処刑ショーの権限を持つこの島の所有者へ、まずご確認いただきたい。」

剛が飛びつくような、美味しい餌を投げてやればいい。 頭の回転が速い奴なら、必ず即答するはず。
闘犬島も、監獄島も、木の葉の里も、皆、潤う。 損をするのは、得意先を失くす霧隠れの里だけ。
裏で堂々と渡り合う事。 ボク達、火影直属部隊 暗殺戦術特殊部隊が、三代目から受け継いだ事だ。


一、監獄島における死刑囚の闘犬変化を、霧隠れの半分で請け負う事。 囚人の購入が安くなります。

二、必要経費を最小限に抑えられます。 一により、全ての闘犬を死刑囚にすれば、餌代のみです。

三、術を廃止、丸薬を使用し完全獣化させる。 これで死亡時に術が解け人間に戻る事はありません。

四、大会内容の充実。 三により、試合中に死んでしまっても問題ない為、死闘による決着が可能。

五、闘犬大会の開催数を増加。 闘犬の寿命を考えなくてよい為、好きなだけ回数を増やせます。


牙や家族が必要に追われたのは、闘犬の正体を知ってしまったからだ。 その記憶ごと口封じの為に。
この屋敷の地下牢に捕らわれていたなら。 死体に戻った闘犬、監獄島の死刑囚を見てしまったはず。
島の伝統ある闘犬大会は死刑執行を娯楽にリサイクルしただけのモノ。 それを知ってしまったんだよ。