闘犬島〈とうけんじま〉の秘密 7   @AB CDE GHI JKL




話を聞いたイルカ先生は、次の日早速、闘犬島の偵察任務に、夫婦の奥方率いる第八班を推薦した。
きっとツメ黒コンビに、牙のコト聞かされただろう息子、犬塚キバとパートナーの赤丸がいたからだ。
キバも先生の教え子。 自分と同じ名前の犬の為、きっとキバは張りきって任務に就いただろうネ。

まだ三日しか経ってないけど、もう偵察から帰って来た第八班を見れば、その効果が分かるというモノ。
出戻り暗部だけど、まだ上忍師も兼ねているオレは、上忍待機所でイチャパラを読んでる・・・・ フリ。
第八班が戻ったと聞いたから、ちょとオレも気になってネ? ほら、奥方の気配が近付いて来た。

「あ、いたいた。 カカシ、ちょっといい?」
「お疲れ奥方! 三日だって? 早かったネ、キバと赤丸、張りきったんでショ。」
「ちょっと! その呼び方は止めなさい! お姉さんとお呼びなさい、せめて!」
「んー わかった。 紅姐さん。」
「・・・・微妙にニュアンスが違う気がするけど・・・・ まあいいわ。 あのね・・・・・」


姐さんの話はこうだ。 あの島で行われる闘犬大会は、ただ犬闘士を戦わせる大会じゃない。
闘犬島にはとんでもない裏があった。 偵察任務だからと、爆発しそうな皆をなだめて帰って来た。
自分も皆も、ついムキになって深入りしすぎてしまったけど、これは国交問題だから動くな、と。
ひょっとしたら、暗部に回されるかもしれない、ちょっと特殊な裏事情なんだそうだ。

「カカシ先輩、紅さん、綱手様がお呼びです。」
「・・・・・コレの話・・・・ かナ?」
「多分。 ゴメンね、きっとウチの班の子が色々聞きに来ると思うわ。 アンタ達に。」
「・・・・でも優秀だよネ、ちゃんと “待て” が出来るようになったじゃない、キバ達。」

姐さんとオレを、ヤマトが呼びに来た。 間違いなく、今回の偵察の話なんだろう。 う〜ん・・・。
実際、姐さんトコの第八班は、いいチームプレイが出来るようになった。 旦那んトコの第十班も。
オレのライバルを自称するガイの第三班は言わずもがな。 サスケめっ! 帰ってきたら千年殺し決定。

まあ、それはおいといて。 牙の家族を脅してたヤツを、その場で殺してこなかったコトはスゴイよ。
腕に絶対の自信があるサスケ、単純猪突猛進型のナルト、サスケのコトしか見てないサクラが偵察任務。
もしコレがちょっと前の七班だったら、って考えたら。 スパッと仇討ちして万歳三唱、ってなったヨ。
牙という名の犬。 きっとキバと赤丸だけじゃない、八班全員が自分のコトのように考えたんだネ。




水の国と火の国の間の海に浮ぶ小さな島 闘犬島。 大陸の自称 “国” を名乗る小国よりも大きいが。
この辺りは点在する島が多く、そのほとんどが中立で、全部ひっくるめて中立諸島なんて言われてる。
中立諸島の中で中心に位置するのが、監獄島。 その名の通り、監獄施設ばかりがある流刑地だ。

各国から排出される罪人の監獄。 隠れ里に国の罪人を全員投獄したら、里の牢獄は半日で満員御礼。
忍びではない重犯罪者達、各国がその末路を放棄した者達が送られる流刑地。 それが監獄島。
死刑囚に食わせる飯はないとばかりに、わずかな金で罪人の管理を一任出来るのだから、一石二鳥。

その重犯罪者達の末路がどうなっているか、処刑の方法などは、監獄島に一任されている。
元来さっさと殺してしまいたいような犯罪者達だ、たとえどんな処刑法方でも、誰も文句はつけない。
八班が調べて来たコトは、大陸における国同士の、そんな暗黙の了解の事柄の、さらに裏事情だった。

「紅、八班の奴らに、くれぐれも口外するなと伝えておけ。 この任務は暗部が引き継ぐ。」
「・・・・はい、綱手様。 ・・・・でも暗部だと公言してるこのふたりに、迷惑が・・・・。」
「ボク達は、イルカ先生の教え子が寄ってくるだけで嬉しいですから、大丈夫です。」
「まぁ、ネ? 事情を知ったら気になるモンでショ。 話ぐらいはイイですよネ、綱手様?」

なるほど、その裏事情を知ってしまったキバ達は、何も出来ない自分達にイライラしただろう。
これが世の中の仕組みなんだ、と納得はしていても、割り切れない気持ちになったに違いない。
闘犬大会に出場させる闘犬の大半が、監獄島の死刑囚。 犬に変化させられた人間だったんだ。
闘犬島で年に一回行われる伝統ある闘犬大会は、いつの頃からか罪人の処刑ショーへと変わっていた。

「きっと毎朝、任務受付所でも聞くと思うわ。 あの任務の経過はどうなってますか、って。」
「わー、なんか、ボクも上忍師になったみたいで照れちゃうなぁ。 えへへ。」
「弟子はネ、仔犬みたいに寄って来て可愛いーの、若干一名迷子だけどネ?」

「違うわよ、この上忍師フェチ! 任務受付所で聞くのはイルカに、よ。」
「「あ・・・・・。 イルカ先生ね・・・・。」」
「ふぅ、アンタ達だけじゃなくて、一緒に住んでるイルカにも迷惑かけちゃう事になるわ。」

「「お母さんにも聞いちゃうの? ・・・・イルカ先生、愛してまーすvv」」
「はぁ?! アンタ達馬鹿?! もう、訳わかんないっ! 」
「「なんかね、お父さんとお母さん、その子供達、みたいなんだもんっ!」」
「くっ・・・ 仕事の邪魔しちゃ駄目だって、人が本気で心配してるのに! コイツら!」

「ふふふ、後に依頼人のツメも知る事だが。 ・・・・これは極秘扱いとする、里外には漏らすなよ?」


忍犬は相手が変化した人間だと判るから、ショーには使えない。 だから普通の犬を闘犬に仕立てる。
闘犬は人間の血の味を知る獣にされた。 ただの人間が闘犬に勝てるか、アカデミー生でもわかる。
キバ達はもう、監獄島の存在意義を判らない子供じゃない。 火の国の木の葉隠れの里の忍び。
ただ、処刑ショーに、本物の犬が使われているコトが、我慢ならないんだろう。 犬塚一族なら余計に。

オレも忍犬使い、その気持ちは痛いほど分かるヨ。 人肉を喰らうだけの獣? 冗談じゃない、ってネ。