嘘も方便 2   @BC DEF GHI JKL




三代目に火影室へ呼ばれた。 何事かと慌てて駆けつけてみれば、還暦のお祝いの品のお披露目。
ボクもカカシ先輩も、火影の直轄部隊を統括している立場にいるから、何を置いても駆けつける。
そんな、忠実で迅速かつ律儀なボク達を待っていたのは、嬉しそうな三代目と毛糸の腹巻だった。


「この腹巻はの、イルカの手編みなのじゃ。 ・・・・・ほほほほ。」
「還暦のお祝いに腹巻・・・ デスか。 ちゃんちゃんこじゃなく?」
「ワシの着物に合わせて小豆色にしたと言っておった。 なかなか気が利いておるわい。」
「小豆色って。 これまた微妙なコーディネートを・・・・」

「ほんにイルカは心根の優しい子じゃて・・・・ うむうむ。」
「・・・・・・・・・またこの話ネ?」
「・・・・・・・・・その様ですね。」
「なのにあ奴は良縁に恵まれん。 早く孫の顔がみたいのぉ・・・・・。」
「「・・・・・・・・。」」

「どうじゃ? お主らのどっちでもええ、イルカを・・・・・」
「「謹んでお断り申し上げます。」」


またか。 最近やたらとイルカ・・・ じゃない、海野イルカ中忍・・・・ もういいやイルカで。
三代目が事あるごとにイルカイルカと呼ぶから、もうボク達の中ではイルカがインプットされてる。
今更、イルカ中忍や海野中忍などと畏まった呼び方をしても、違和感があるぐらい浸透してるんだ。

そう、そのイルカというのは男。 孫の顔が見たいとか、意味不明な事を三代目は言うけど、無理。
男はどんなに頑張っても産めない・・・・ じゃなくて。 そんな事はどうでもいい、イルカの話。
三代目はイルカに恋人を作ってやろうと模索しているらしいんだ。 で、その候補がボク達という訳。

火影直属 暗殺戦術特殊部隊は三代目選りすぐりの忍びの部隊。 その部隊長と部隊長補佐だしね。
まあ、三代目がお主らなら、と目をかけてくれたという点は素直に喜ぶべきところだけど。 微妙。
だってボクも、もちろんカカシ先輩も。 変化させてもいいけど、出来れば普通に女の方がいい。
私生活まで忍術を使ってどうこう、なんて。 心が休まる場所がないじゃないか、そんなのは御免だ。

「手編みじゃぞ? 真心がこもっておるのじゃ。 ・・・・羨ましいじゃろ?」
「「・・・・腹巻は必要ありません。」」
「なんじゃ、つまらんのう。 ちっとは優しい心根に打たれた、とかは・・・・」
「「残念ながらこれっぽっちも。」」
「・・・・・・ちっ! 手ごわいのぉ。」
「「・・・・・・・・・・。」」

手ごわいもクソも。 カカシ先輩もボクも毎回断固として拒否しているのに、諦めない舅だ。
イルカの事はボク達もよく知ってる。 というか、三代目のおかげでぷちイルカ通かもしれない。
海野イルカは19才の中忍。 下忍昇格11才、中忍昇格16才。 肉親は九尾暴走の時に他界。

尾獣九尾が里で暴走した時、災害孤児になった子供は大勢いた。 今でもイルカの後見人は三代目。
最終的に引き取り手がなかったから、というのが尤もらしい理由。 贔屓臭がプンプンするけどね。
とにかく、九尾孤児でいまだに三代目が後見人のままというのは、実はイルカだけなんだよ。

三代目には、実子でもある猿飛アスマという図体の馬鹿デカイ息子がいるが、目下家出中なんだ。
・・・・・だからかもしれないな。 自分の直轄部隊のボク達や、イルカの世話を焼くのは。
ボク達も身寄りがないから可愛がってもらっているという自負はあるけど、イルカほどじゃない。

・・・・・・・? そもそもなんで最近になって急にイルカの恋人を探してやろうなんて・・・・。
そりゃ、三代目がイルカを特に可愛がっているのは知っているけど。 ・・・・・・・・・・・。
差し入れの弁当自慢や、火影室の整理整頓自慢がほとんどだった。 いわゆるワシの幸せ自慢だ。
後見人が三代目、ってだけで。 イルカは里内で特別の庇護下に置かれてるんだ、今更・・・・・?

彼は19才の中忍。 恋人の世話なんて三代目が焼かなくても出会いのひとつもあるだろうに。
・・・・・・最近だ、こんな話が出だしたのは。 もし三代目が普段の世話焼き舅じゃないなら??
私生活に踏み込んだ話をフルのは直轄部隊、それもそのトップであるボク達だから、だとしたら?

もしかして。 カカシ先輩、これって・・・・ 三代目はボク達に何かをさせるつもりでしょうか?