嘘も方便 3
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ハイハイ、また三代目の幸せ自慢ネ。 還暦が近いからって、最近めっきり舅っぽくなっちゃって。
ワシの幸せ自慢から、ウチの子自慢になって来た。 それもこれも家出中の実子、アスマのせいだヨ。
アイツが三代目と喧嘩して木の葉を飛び出さなきゃ、ウチの子自慢はアスマだけで済んだのにサ。
ま、アスマならお世話になってるからと、弁当を差し入れたり、火影室の掃除なんかしないけどネ。
とにかく、血を分けた我が子アスマが屁理屈こねて出ていっても、自分を慕うイルカが側にいた。
三代目の立場なら、素直に感謝してくれるイルカは可愛くて仕方がないんだヨ、分かるけどサ。
オレ達だって何を隠そう、三代目には可愛がってもらったクチだもん。 だからスゴクよく分かるヨ。
ただ、イルカが表してる様な感謝の気持ちを、オレ達は直接三代目の手足として動くことを選んだ。
ヤ、イルカが直接里に貢献してないとか、そんな意味じゃない。 感謝の形は人それぞれでショ?
イルカの場合は意外と料理が上手かったり、お片付け上手だったりする。 得意分野で貢献ってコト。
そんなこんなで、舅モードバリバリの三代目は、オレ達のどちらかにイルカを任せたいみたい。
気分は早くも孫を夢見るジイジ。 ケド、オスは勘弁だネ、変化させてまで男を抱く趣味はないヨ。
最近やたらイルカを勧めるからか、この話に関して妙にシャットアウト気味だったケド。 ・・・・ウン。
冷静に考えてみたら、ほんの最近だよネ。 孫の顔が見たいだのなんだのと言い出したのは。
別の意図がそこにあったのなら・・・・ オレ達のどっちかをイルカにつけたい、ってコトになる。
暗部と中忍の接点はまるでナシ。 でも恋人同士なら私生活で近くにいても不思議じゃない。 でショ?
「三代目。 イルカ、誰かに狙われてます?」
「最初からそれならそうと言って下さいよ。」
「・・・・表だってイルカに暗部をつけると面倒な事になるやもしれんからの。」
「面倒なコト・・・ ねぇ? 手ごわい相手、ってコト?」
「・・・・ワシの思い過ごしならええんじゃがの。」
「え? ボク達をたきつけたのは予防線なんですか?」
「己の恋人を守っただけ、それなら相手を返り討ちにしても問題ないじゃろ?」
「「偶発を装うのか・・・・ なるほど。」」
「うむ。 ・・・・この前、任務から帰ってきたイルカが泣いておったのを覚えておるか?」
「不本意ながら、よく覚えていますよ。」
「しばらく泣いてましたよネ、イルカ。」
「ふむ。 あの時、あ奴が看取った忍びは“根”の者じゃった。」
「「根の・・・・・ 忍び?!」」
ウン、この前火影室でずっと泣いてたのヨ、イルカ。 火影室の机の後ろに隠れるようにして。
オレ達 暗部は正規の忍びがいる時や三代目に来客がある時は、火影室で気配を消してるのヨ。
だからネ、一方的に知ってる。 イルカが任務報告をすませ、三代目に会いに来て泣いてたのを。
三代目が座っていた椅子の斜め後ろ。 膝を抱えて床に座りこんでサ、泣いてたんだよネ。
その間に何人も忍びが出入りしてたけど、誰もイルカがそこで泣いてるのに気付かなかったの。
そりゃそうだよネ、机と三代目に隠れるようにして丸まってれば、反対側からは何も見えないもん。
時々三代目は、斜め後ろにあるイルカの頭をヨシヨシ、と撫でてやってたんだ。 よく覚えてる。
きっと任務で殉職した忍びがいて、すごく個人的に仲が良かったんだろうな、ぐらいに思ってた。
あと、あんなに惜しんでもらえたら、逝ったヤツも浮かばれるな、って。 まさか根の忍びだとは。
「暗部養成組織“根”は確か。 大蛇丸が抜けた時に解体されたはずじゃなかったデスか?」
「ええ、アンコやボクが保護された、あの小島での非人道的な実験が明るみに出たからだと。」
「先手を打たれての。 大蛇丸は根の忍び故、ダンゾウは責任をとり組織を解体したんじゃよ。」
「「・・・・・・・・自分でそう公表したのか、あの男・・・・。」」
「元はと言えば大蛇丸はワシの弟子。 本来ならワシが火影を退任すべきじゃった。」
「そんなっ! 抜けるのは個人の自由ですよ! 研究に没頭しようが、どうしようが!」
「解体したのは、根が大蛇丸の研究に手を貸してた証拠を隠滅したかっただけでショ?」
「それでも、じゃ。 大蛇丸の非人道的な実験の責任を取り解体、それが表向きの理由じゃ。」
「「それでは実質“根”は・・・・」」
「うむ。 水面下で活動しとる。 直接牙を剥くまではワシも容認せざるを得ん。」
納得だネ。 そうやって責任を取ったという形で公表したのなら、ダンゾウの支持者は減らない。
減るどころか組織の結束は固くなる。 三代目の弟子だった大蛇丸の失態を庇った形だからネ。
木の葉の為に、里の為に。 暗部養成組織の根は表向きの名を失ったが信念は失っていないと。
里と三代目の為に泥をかぶった、そういう態度に徹してるダンゾウ。 そりゃ信者も出るヨ。
もし暗部が表だって根の忍びと対峙したら、きっとこう言うヨ? 責任を取らせないのかと。
根の忍びが死んだのは任務中。 死因をイルカのせいにするのなんて、余裕ででっち上げるからネ。
火影直属部隊の長ともあろう者が、自分達よりも仲間を死に追いやった中忍を擁護するのか、って。
「先に口実をアッチに与えたら・・・・ 確かに面倒なコトになりますねぇ・・・」
「ここぞと火影退任を言い出すかも。 暗部の判断は鈍った、とかなんとか言って。」
「ダンゾウは尻尾切りが素早いでの。 尻尾の毛先すらなかなか触れはせん。」
「「・・・・・・・・同感です。」」
三代目が確信もなく、根の者が絡んでるからというだけで、イルカが狙われてると思うはずはない。
思い過ごしならいい、か。 ・・・三代目が危惧する様なコトがある、ってコトじゃないの、ソレ。
確かにネ。 暗部の長、という立場じゃなくてただの恋人なら。 めんどくさい理由は必要ないヨ。
自分の恋人を襲撃したヤツを返り討ちにしただけ、ってなるもん。 もし仮に襲ってきてもネ。
「ちなみに三代目、ホントにくっついちゃったらどうするおつもりで?」
「大いに結構! イルカはええ子じゃて。 ワシの一押しじゃからの?」
「・・・・・そっちもある程度本気だった訳ですか。」
「うむっ! イルカの恋人として、お主らなら申し分ないっ!」
「「・・・・・・・・。」」
どうやら、三代目の舅モードは本物だったらしい。 まさか孫の顔が見たいのも本気・・・・ とか言う?