嘘も方便 7
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ボクとカカシ先輩がイルカに変化して根の忍びを迎え撃つには、本人の協力を仰がなきゃならない。
ボク達が変化してる間、イルカ本人には大人しく待機しててもらわないと困る事になる。
本物にウロチョロされて、ボク達が偽物だと気づかれでもしたら、この作戦が水の泡だ。
三代目と個人的にも親しいし、ここ最近のイルカの生い立ち情報で、一方的にイルカを知っている。
でもよく考えたら、話した事は一度もない。 ボク達は常に気配を消して火影室にいたからね。
勘のいい上忍だと気づくけど、イルカはボク達の事は知らない。 だからこれは自己紹介だ。
本来の実技試験用のダミー任務では、そこを見るんだよね。 仲間を平気で犠牲にする奴は失格なんだ。
三代目が目をかけてるから無条件で信頼してもいいんだけど、そこはやっぱり自分達の目で確かめたい。
さてさて、イルカがどういう反応をするか。 なんだかプチ適性検査みたいですよね、カカシ先輩。
ボクとカカシ先輩は、アカデミー入学を控えた年頃の子供に変化して、イルカに質問してみた。
ダンゾウが考える里の忍びと三代目が考える里の忍びの違いを、イルカの言葉で答えてもらう為に。
思った通りの答えどころか。 それ以上の答えを出してくれた。 だからつい聞いちゃったんだよね。
三代目の命だけで動く暗部の事を、イルカはどう思っているのか。 ・・・・・知ってるんだって。
イルカだけじゃなく里の皆が。 殲滅任務や報復任務をしてきても、里の為だと知ってるそうだよ。
面と向かってああいうのを言われるのって初めてだ。 任務の全容を知ってるのは火影だけだし。
確かに三代目の影響を受けたかもしれない。 でもイルカは自分の感受性で火の意志を理解してる。
木の葉の良心、か。 いや、それに近い、って三代目は言ったけど。 うん、納得だよ。
これなら。 あの周りから敬遠されている渦巻ナルトにも、自分から進んで関わっていくだろう。
実技試験はダミー任務だと知らせた。 だってイルカにはその必要がない、ボク達が証人だからね。
昨日の質疑応答で、イルカはアカデミー教師に合格したも同然。 ちゃんと三代目にも報告済みだし。
だから試験に・・・ というか、ダミー任務を請け負わなくていい。 現時点では内定だけど、確定。
「・・・・・え?! そうなんですか?! 俺が教師に?!」
「うん。 昨日の答えで明白だよ。 実技試験はパスしたも同然。」
「だって特別な事はなんにも・・・・・ あれって、実は試験だったんですか??」
「あはは! 違う違う。 イルカが狙われるのは本当だから。」
「そ、そうですよね? だからこうして・・・・」
「そう、今日からボク達が交代でイルカになるから。」
ジャンケンでいきなり負けて、イルカ変化はボクになった。 今日からボク達が交代でイルカになる。
いつまで続くんでしょうか? というイルカの質問には、ダンゾウが諦めるまで、と言っておいた。
正確にはダンゾウの価値観に合わせて、イルカが一筋縄ではいかない忍びだと思わせるまで、だけど。
「いや、家ん中でゴロゴロしてればいいって言われても・・・・・」
「中を探れない様に結界を張ってあるし、何の問題もないよ?」
「い・・・ いつの間に。 さすがは暗部・・・・・。」
「くすっ!」
ダンゾウはイルカをただの腐抜けた中忍だと思ってるから、暗殺するつもりなんだよね。
そんな忍びに根の者が影響されるのは避けたいと。 でもダンゾウを唸らせれば、話は別。
イルカがめちゃめちゃ強い忍びだと思い込めば、今の里の為に必要だと考え直すだろう?
所詮ダンゾウの価値観とはそういうもの。 心より力、他者より自分、里の安定より火影の座。
自分が間違ってたと気づいた時には、もう遅い。 そんな虚しい死に方を迎えるんじゃないかな。
これからの里を作るのは、ああいう忍びじゃないよ。 イルカの様な強い心を持つ忍び達だ。
ん? 少し離れた個所に動かない気配がある。 さっそく根の忍びのお出ましだよ。 偵察かな?
イルカがどこの誰で、住まいはこのアパート、そういうのを調べたんだろうね。 様子を窺ってる。
じゃぁ、いっちょ挨拶がてらボコってくるか・・・・。 じゃあイルカ、行ってくるからね。
「い、行ってらっしゃーい・・・・ お気をつけて?」
「ぷっ! 何それ! なんで疑問形?!」
「いや、だって・・・ それ、俺だし。 なんか変な気分・・・・。」
「・・・・・・イルカも来る?」
「・・・・・へ?」
「何かに変化すれば? ベストとか髪紐とか・・・・ 額当て、とか。」
「おお! じゃあ、額当てに変化しますっ!!」
「ん。 じゃあ巻いて行くから。」
「・・・・・物質変化の術っ!!」
さすが。 アカデミー教師を目指す中忍なだけはある。 というか、もう教師確定だけどね。
イルカは物質変化の術で木の葉の額当てに変化した。 確かに家でゴロゴロしてろと言われてもねえ?
窓やドアの隙間からチラチラと外を確認したりするだろう。 だったらこれが一番安全策だね、ふふふ!
「なんでしょう? 俺に・・・・・ なにか用でも?」
「・・・・・・・っ?!」
「バレバレ。 誰に頼まれたんです? 里ではあまり見かけませんね、あなた。」
「・・・・・・こ、この辺りに物件を探していただけだ。」
「・・・・物件って・・・・・ ぷっ! あははははっ! もっとましな言い訳して下さいよっ!」
「な、何がおかしいっ! 中忍風情が偉そ・・・・ っうっ!!」
「その中忍風情に後ろを取られるという事は、俺より格下の中忍なんですよね?」
「・・・・・・くっ!」
「・・・・あららら。 脱げ足の早い事で・・・・・ まあ、一歩前進かな?」
イルカのアパートを遠くから観察してたのは根の忍び。 背後に立ってやったら慌てて消えた。
これから本格的にイルカ排除に向けて策を練ろうとしてたんだろうけど。 残念だったね?
残念と言えば、ボコる前に根の忍びが逃げた事。 まあ、戦闘態勢じゃなかったし仕方ないか。
イルカはそんなボクと根の忍びとのやり取りを、額当てになって見学してた。 もう大変だったよ?
俺、かっこよすぎっ! とか言って。 一生懸命、ボクが変化したイルカの物真似をしてた。
ワクワクキラキラさせて、昼間のボクを真似してくれるイルカ。 本当に楽しそうに話すんだよ。
そんな表情豊かなイルカが作ってくれたご飯を一緒に食べながら。 気付いたらボクも笑ってたんだ。
うわー 吃驚。 こんなにリラックスして笑いながら食事したのって・・・・ いつ以来だろう?