嘘も方便 6   @AB CDF GHI JKL




・・・・・・。 暗殺ターゲットって・・・・・ 俺が?! ちょっと待って下さいよ、なんで俺?!
自分で言うのもなんだか悲しいんですけど、大陸で名を馳せる様な手練れの忍びじゃないですよ?
ビンゴブックのはじっこにだって載ってない様な、いたって普通のどこにでもいる忍びなんです!
あ、そうか分かった! 人違いですね? うみのイルカさんとかいう同姓同名の忍びが・・・・

「ヤ、他にいないし。」
「正真正銘、君だよ?」
「・・・・・・・・。」

という事は、本当に俺って狙われてるの? なんで?! そりゃ、俺だってこれでも中忍だし・・・・
人に恨まれる様な事はしてない、とは思ってない。 でも任務でだ。 それは里の忍びとして・・・・
・・・・・・。 いや、自分の知らない所でどこかの誰かに恨まれていたとしても、当然の事だよな。
・・・・分かりました。 でも俺もみすみす殺される訳にはいきません。 その方に会わせて下さい。


「ンー それがねぇ・・・ 話し合ってどうこうなる相手じゃないのヨ。」
「君を排除しようと計画中なのは、元暗部養成組織“根”だから。」
「根・・・・ ますます意味が分かりませんよ・・・・・。」

「大丈夫、まだアッチは動いてないから。 その前に確かめたかったんだよネ。」
「対策は考えてあるから問題ないよ? うん、なんとなくね、確かめたかった。」
「確かめるって・・・・ 一体何を??」
「この前殉職した根の者の心に呼びかけた火の意志を。」
「ダンゾウが脅威に感じる人としての確固たる強さを。」
「・・・・・・・・・??」

「三代目はイルカが持つ優しさは、他者に影響を及ぼすと考えてる。 イイ意味でネ。」
「でもダンソウにとっては、自分が洗脳した忍びに影響を及ぼされては困る。 だよ。」
「・・・・・洗脳って・・・・ えっと・・・・?」


それってどういう事ですか?? もしかして、さっき変化してた時の質問と関係がある事ですか?
“忍びは人に非ず心は不要”“人と親しく関わる必要はない”とかの時代錯誤の考え方が?!
・・・・・・・え? 根の?! ダンゾウ様の・・・・教えが・・・・ さっきのなんですか?!

「そんなのあり得ないっ!! だってダンゾウ様は三代目の幼馴染でご意見番で・・・・」
「ええ、そうです。 過去には暗部隊員の養成組織を任されていたほどの人物ですよ。」
「今は三代目の直轄部隊に根の者が加わるコトはないケド。 独自に忍びを育成してる。」

「独自に・・・・ 暗部隊員の養成とは別に、って事ですか??」
「はっきり言って、根の忍びはダンゾウの私兵なんだヨ。 ダンゾウの暗部、ってコト。」
「不運にもダンゾウに拾われ、先ほどの考え方を幼い頃から教育されている忍び達です。」
「そんな・・・・ だって里の忍びは皆アカデミーで・・・・・」
「「・・・・・・うん。」」


志村ダンゾウは里の上層部の一人。 ホムラ様、コハル様と同じく火影に意見できる数少ない人物。
九尾の暴走の時に里は四代目を失い、五代目火影選出の際に名が挙がったけど、結局三代目が再任。
ダンゾウ様も三代目に協力していると思ってた。 三代目の再任を喜んでいるとばかり・・・・
火影になるっていうのは、里のどの忍びだって一度は夢見る事だ。 でもダンゾウ様は今でも?

「今でも自分の考え方、やり方が正しいと思ってる。 時代の流れなんて無視。」
「どれだけ今の平和を維持するか、って事よりも、火影の交代が重要らしいよ?」
「いつまでもそんな事じゃ・・・・ 忍びの里の信用は築けない・・・・」
「「そこが“木の葉の影”とダンゾウの根本的な相違点。」」
「・・・・・・・。」


そして暗部の二人は教えてくれた。 少し前、俺が任務中に看取った忍びが根の忍びだった事を。
忍びの力を戦力としてしか考えない根の者は、決して自分より弱い忍びを庇ったりしない事も。
どちらが生き残った方がこの後の戦力になるのか。 そういう思考だから弱者は捨て置くそうだ。

そんなのはあり得ないよ。 誰だって最初から力がある訳じゃない。 その力も人によって違うし。
自己努力や見聞を広げる事、様々な出来事を経験して初めて人として成長できる。 忍びも同じだ。
チャクラ質やチャクラ量によって違いはあるけど、戦忍だけでは隠れ里なんか維持できないよ。
ましてやその里よりも広い国を守る、だなんて。 だってそこに住む民はほとんどが力のない弱者。

「その教えで言えば、里や国で暮らす一般人など捨て置け、って事ですよね。」
「・・・・・オレ達 暗部が遂行する報復任務とはワケが違う。」
「ダンゾウは平気で自分の子飼いの忍びも餌に使います。」

「 “役に立たぬ者は不必要”それがダンゾウの道理。 尻尾切りも早いのなんの。」
「これも木の葉の為だ、と言えば根の忍びは納得するからね。 洗脳教育の賜です。」
「何が木の葉の為だっ! 自分の為じゃないかっ!!」
「「・・・・・・・・くすっ!」」

絶対そう言うと思たよと、くすくすと笑いながら言った暗部は面をずらした。 エライ男前の二人。
どっかで見た事あるなー と思ったら。 そう、俺がはじっこにも載ってないビンゴブックで見たよ。
コピー忍者のカカシと木遁使いのテンゾウだ。 ・・・・・するとなにか?! この二人って・・・・
カカシさんとテンゾウさんは黄金コンビと言われてる忍びで、今の暗部の部隊長と補佐だぞ?!

「あ・・・・ 暗部の司令塔が・・・・ 直々に?!」
「そう。 三代目に言われて。」
「根の忍びを撃退しちゃうヨ?」
「そ・・・・それはどうも・・・・ ありがとうございます・・・・・」
「「いえいえ、どういたしまして。」」

三代目に言われて根の忍びを撃退しに来たそうだ。 暗部の部隊長と補佐が。 中忍の俺の為に。
・・・・・なんか。 猛烈に感激してるんですけど、俺。 同じ暗部でもこうも違うものかと。
だってダンゾウ率いる暗部の根は、即戦力に欠ける弱い者など捨て置くんでしょう?
俺は中忍で、しかも内勤がほとんどのアカデミー教員試験を受けた忍び。 その俺の為に??

「「木の葉の良心だから。」」
「??  ・・・はあ。」
「「・・・・・・・くすくす!」」

木の葉の両親? なんじゃそりゃ。 もしかして死んだ俺の父ちゃんと母ちゃんの事か??
まあいいや、とにかく。 俺は差し迫る危険を回避できるって事だ。 明日慰霊碑に行って来よう。
父ちゃん、母ちゃん。 生前、カカシさんとテンゾウさんに恩を売ってくれててありがとう。