嘘も方便 5   @AB CEF GHI JKL




木の葉を創設した千手兄弟から三代目に伝えられたものは、オレ達やイルカにもしっかり伝わってる。
ケド、理想と現実は表裏一体。 その火の意志を伝えて行く為には苦渋の決断だって時には必要。
そういう火の意志を持つ忍びがたくさんいる里にする為なら、オレ達は泥をかぶるのなんて平気。

理想の里を語ってもイイじゃないの。 それを表だって語れる様にするのが忍びの仕事でショ?
さっきも言ったケド、物事には裏表が必ず存在する、人の心の中にもネ。 全部が表裏一体なのヨ。
正規の忍びがいて暗部や火影がいる。 全部で木の葉隠れの里、どれが欠けても忍びの里じゃないヨ。

もしも三代目の危惧してる様なコト・・・・ ヤ、もうコレは危惧じゃないよネ、きっと。
小さい頃から競ってきた好敵手のダンゾウ。 扉間様の小隊に組み込まれて一緒に戦場を駆けた。
常にそんなダンゾウの近くにいた三代目だからこそ、あの男の行き着く思考も想定できるんだヨ。

このままイルカの様な忍びを放置すれば、きれいごとだけを語る不甲斐ない忍びが増えるだけだ。
そんな腑抜け連中のはびこる木の葉になど出来ない、里に害をなす忍びは今のうちに排除すべき。
そうなる前に手を打つ。 土の中の種、芽を出す前に掘り出して潰せばそれでお終い、ってネ。


ンー。 聞けば聞くほどイルカが狙われるかもしれないというのが、真実味を帯びてきたヨ。
三代目の勧めで、イルカはアカデミーの教員試験を受けたんだって。 んで、筆記試験をパス。
だから今度は、実技試験があるらしいヨ? 普通の子供が通う学校じゃなく、忍者学校の実技試験。
中忍以上の忍び達だから忍術披露の実技は必要ない。 ベストを着てるんだもん、できて当然。

どんなのが実技試験にあたるのか。 それは偽任務を与えて受験者の人となりを判断するんだヨ。
もちろん受験者は、その任務がダミーだとは知らされない。 抜き打ち適性検査みたいなもんだネ。
なんでオレ達がそんなのを知ってるかと言うと、試験官を命じられるのは、ほぼ暗部だから。

でもいつもじゃない。 暗部が出払ってる時は、正規の上忍に極秘任務として割り当てられる。
だからダンゾウがその気になったら、いつでも裏工作が出来ちゃうのヨ。 暗部が出払ってる時に。
暗部の代理で試験官をするはずの上忍と、ちゃっかり交代するコトだって充分考えられる。


根が洗脳して使っていた忍びと偶然にも現場で居合わせ、本来の里の忍びの思考に戻したイルカ。
アカデミーの実技試験で落ちる様に手を回したり、本人を脅すだけじゃすまないかもしれない。
三代目が想定してるのは・・・・ 近々、イルカが根の暗殺ターゲットにされかねない、ってコト。

里を思うあまりダンゾウは忘れてる。 イルカは三代目個人の考えに同調できる忍びでショ?
こういう里でありたい、こういう忍びを増やしたい、そう願う火影の考えを否定したも同然。
つまり初代火影 柱間様から受け継がれてきた火の意志を否定してるコトに気付いてないんだよネ。

力で制するしか方法を知らない忍びの独断。 理想を実現させようと、里の皆は頑張ってんのにサ。


「・・・・恋人のフリして、か。 いっそ、イルカにそう言えばイイんじゃないの?」
「イルカの性格を知っておろう? 不自然でない恋人のフリなんぞ、あ奴に出来ると思うか?」
「ボロが出ますね、間違いなく。 で、ボク達が根の排除に動き出してると憶測が飛ぶ。」
「・・・・じゃろ? イルカはお買い得じゃぞ? 料理も上手いし優しいしの?」
「「・・・・・・それでも野郎です。」」
「ほほほほ! 頑固じゃのう、まあよい。」


まだアカデミーの実技試験は先だケド。 根の忍びならダミー任務に乱入するかもしれないネ。
もしかしたら。 この前の根の者の仇と称し、子飼いの忍びの一人に犠牲になれと命令するかも。
刺し違えてこい、とか。 その私闘が逆恨みの末の不幸な事故の偶発、で片付けられる様に。

イルカを暗殺する為には、根の忍びが何人犠牲になってもイイ、そう思ってるなら最悪だヨ・・・・
もしそうなら根と暗部の全面戦争。 冗談、オレ達の部下をそんなのに巻き込むワケにはいかない。
根の忍びとヤリ合って部下が何人も死んだ、なんてコトになったら。 オレ達がキレちゃうもん。

「三代目。 イルカやダンゾウに気付かれないで、根の忍びを撃退すればイイんですよネ?」
「まあ、そういう事じゃ。 ダンゾウに抗争の口実を先に与えなければ、それで良い。」
「・・・・・・イルカの側にいて不自然じゃない者に変化するとか・・・・・。」
「ふむ・・・・ 根の者を返り討ちにしても不自然じゃない人物は、あまりおらんぞ?」

「イルカ本人が強い、ってコトにしちゃえば??」
「なるほど!! ボク達がイルカに変化すれば!」
「ソウだヨ! オレ達はどっちかが影分身で部隊長と補佐になってればイイだけだもんネ?」
「そうしましょうよ、カカシ先輩っ! “実はイルカは強いんです”伝説を作りましょう!」
「ほほほほ、なるほどの。 一筋縄ではいかん、と思わせるのか。 ふむふむ・・・」

「よし、それを実行じゃ! “木の葉の良心”を失いたくはない。 守ってやってくれ。」
「「御意。」」

恋人になって側にいるとか、恋人のフリして警護するとか。 そんなまどろっこしいコトはナシだヨ。
テンゾウもオレもお互いのクセや行動を熟知してる。 どっちがどっちに影分身で変化してもOK!
部下達には見分けがつかないよ、絶対にネ。 ってコトは、もちろんダンゾウにも見破れない。

イルカ変化の日と、影分身変化の日はクジで決めようネ、テンゾウ。 ア、ジャンケンでもいいヨ?