嘘も方便 4   @AB DEF GHI JKL




孫も本気かもしれませんね。 三代目はイルカが男だという事を忘れていませんか、カカシ先輩。
ひょっとしたら三代目は、密かに野郎を孕ませる禁術なんぞを開発しているかもしれませんよ?
というか。 イルカの意思は完全無視なんですけど。 そこのところはどうなんでしょうか??

殉職者が根の者だった、というのは三代目も後から知ったらしい。 任務受付所の書類を見てね。
任務に同行していた忍びじゃなかったから。 たまたま現場に居合わせた忍びだったみたい。
でも任務受付所で殉職者の報告はする。 その忍びが木の葉の額当てをしていたなら尚更にね。
だからイルカは自分の任務報告書に名前を書いて提出した。 ちゃんと額当てを持って帰って来て。

市井に潜ってる潜入員とか、偶然その場に居合わせた同胞とか、里外に出ればゴロゴロしてる。
そういう忍びの最期に居合わせたら看取って額当てを持って帰って来る。 別に普通じゃないか。
イルカは木の葉の中忍として当然の事をしたまでだ。 そんなイルカを口実に使うなんて。

「それとも敵討ちだとか言うつもりですかね、まさか。」
「あり得るネ。 正当化してくるのは間違いないヨ。」
「・・・・いや、その事が発端じゃったと気付いたのは最近じゃ。」
「「・・・・・・・・・と、いうと?」」

どうやら決定的な何かがあったみたいだ。 イルカが狙われるかもしれない、という要因が。
・・・・・・? アカデミー教員試験?? え、イルカが、ですか? だってイルカはまだ・・・・
いや、確かにアカデミー教員はオールラウンダーな中忍が多いけど。 ・・・・へ? 三代目が??
・・・・・・・・。 イルカの事だ、三代目に勧められたら嫌とは言えなかっただろうね。

でも根の忍びが殉職した事が発端で、アカデミーの教員試験を受けた事で更に、って・・・・。
それとこれは、どうつながるんですか?? いや何事もなければそれでいいんでしょうけど。
危惧する様な何かを感じたから、ボク達を前もってイルカに近づけようとしてる訳でしょう?

「イルカはの。 お主ら同様、強い火の意志を受け継いでおる。 嬉しい誤算じゃて。」
「まあ、そうでしょうね、実直です。 ・・・・それが?」
「昔から懐いてくれておったからの、ワシの考えをよく理解してくれておるのじゃ。」
「エエ、そう思いますヨ。 三代目を慕ってますもん。」

それはそうでしょう。 孫の顔云々は別にして、ボク達と同じくイルカは三代目の近くにいる。
暗部は火影直属の部隊だ、だから三代目の近くにいて、その考えを理解するのは当然の事だよ。
でもイルカは暗部じゃないから火影の考えじゃなく、猿飛ヒルゼンの考えを理解しているんだね。

火影の考えと、猿飛ヒルゼンの考え。 どちらも同じ人物だけど、切り離さなきゃならない思考だ。
前者は忍びの里の長としての決断で、後者は一忍びとしての決断だ。 個人的な考えは二の次。
猿飛ヒルゼンは火影である以上、里の長としての考えを優先しなきゃならない、望んでいなくても。
要は三代目個人の考え方をイルカは理解してる、って事か。 うん、そりゃ可愛がるよね・・・・。

“どちらもワシにとってはかけがえのない理解者なのじゃ”と三代目は言った。 その通りだろう。
火影としてならボク達 暗部が、一忍びとしてならイルカが。 それぞれ三代目の考えを理解してるなら。
そしてこうも言ったんだ。 “木の葉の良心は大げさかもしれんが、それに近い”って。




木の葉の良心・・・・ なんだか言い得て妙だ。 というのも、イルカは忍びのくせによく泣く。
三代目の前では無理せずに、いつでも子供に戻れるからなんだろう。 火影室へ泣きに来るんだよ。
残念ながらボク達はもう、仲間が死んだぐらいじゃ泣けない。 泣くより報復する事を考える。

里や火影の立場を優先するという考えが、ボク達 暗部には染み込んでいるから仕方がないんだ。
そうやって、逝った者の為に少しでも惜しむ時間を作るイルカは、とても人間らしいよね。
忍びとして甘いとか、そういう事じゃなく。 自分の中でちゃんとお別れをしているんだよ。

逝った者の為と、これからの自分の為に。 一杯泣いて吹っ切れたら、また元のイルカに戻る。
吹っ切り方は人それぞれ。 ヤケ食いしたり、浪費したり、色に溺れたり。 イルカの場合は泣く。
この前もそうだったな、根の忍びの時も。 うん。 誰かの為に泣いてあげれるのは、良心だよね。

「・・・・殉職した根の者はの、イルカを庇って死んだんじゃよ。」
「それでイルカはあんなに泣いてたんですか・・・・ 面識のない根の忍びでも・・・・。」
「根の者が中忍のイルカを・・・・ ねぇ? あまり考えられないコトですよネ・・・・。」
「そうじゃ。 本来なら自分より立場が弱い忍びなど、捨て置くのが根の忍びじゃ。」
「「・・・・・・・・・確かに。」」

三代目は続けて言った。 イルカの持つ人としての良心を、脅威に感じているかもしれないと。
忍びである前に人、イルカは相手が誰であろうとそう接するから。 それが根の忍びでも同じく。
だから根の忍びは無意識でイルカを庇った。 理屈ではなく体が動いたのではないか、と。

つまり、イルカを庇った根の忍びは、任務遂行より同胞を守る為に動いた、そういう事だ。
ダンゾウにしてみれば、イルカがそうさせたと思うかもしれない。 根の忍びの判断を鈍らせたと。
もしかしたらイルカの良心は、根の忍びの心の底にある火の意志に訴えるのかもしれないね。

「ワシやお主達が思ってても口に出せんきれいごとを口にしよるからの、あ奴は。」
「洗脳されてるはずの根の忍びの何かを呼び起こす・・・・ とでも?」
「ウン。 すり替えたはずの火の意志を目覚めさせる、とかサ。」
「イルカが正式にアカデミー教師になれば、ナルトを任せようと思おておるのじゃ。」
「「・・・・・・・・。」」

尾獣チャクラを制御出来る様になれば、誰もが一目置く忍びになるけど、今はまだ畏怖の対象だ。
そうか。 渦巻ナルトは敬遠される不安定な人柱力、一人の人間として接するイルカなら適任。
・・・・三代目曰く“木の葉の良心”だから。 大げさでもなんでもなく、本当にそうかもよ?

ナルトだけじゃなく、イルカの持つ強い火の意志は、次代の忍び達に影響を与えるかもしれない。
ダンゾウがその根の忍びの行動によってイルカを脅威だと感じたなら。 教師にはさせないかもね。