嘘も方便 8
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ヨ! お待たせ、交代の・・・・・ ナニ、ワザとらしく閉じた目は。 今更寝たフリしてもムダ!
オレがこの時間に来るコト、分かってたでショ? 人目がない早朝に交代、って決めたじゃないの。
チョット、テンゾウ! もうちょっと、じゃないの、モウ! ハイハイ、布団にしがみつかない!
・・・・・久しぶりに熟睡した、って? あのネ、熟睡するのは布団で丸まってるイルカで十分!
へー 偵察か・・・・・ 三代目の予想通り、ダンゾウが動いたんだネ。 先回りしてて大正解。
アッチは特に問題なかったヨー。 ア、そうそう。 今日サ、木遁で木彫りの置物の補修ヨロシク!
アイツら、昨日城内で暴れたらしくてサ。 ホラ、ガラクタ集家で有名な大名、陽公様の城。
バカでっかい木彫りの龍の置物の髭がもげちゃったんだって。 “明日行く” って言っといたヨ。
なんでボクが・・・・ って。 暗部が壊しちゃったんだから、責任取らなきゃダメでショ?!
モー! ブーブー言わない! 木遁使えんの、お前だけなんだから。 ちゃんと本体で行ってネ?
ア、髭もいだ張本人は、お前に変化してた影分身で一発入れといた。 いつもの恐怖の支配ってヤツ。
「そういや、イルカはおとなしく家で待機してた?」
「えっと・・・・ 額当てになってボクと同行しました。 その方が安全かなと思って。」
「へ? 額当てって・・・・? 同行ってコトは、巻いたの? イルカを??」
「ええ、里の忍びの見本の様に、キッチリと頭に。」
ぷっ! 好奇心丸出しでチラチラ覗くかもしれないから? アー ウン、そうかも。 フフフ!
イルカはあり得ないほど感情表現が豊か。 嘘がつけない忍びというのは、天然記念物級だよネ。
・・・・というか、イルカの場合はバレちゃうんだケド! まったく分かり易いったらないヨ。
じゃ、仕方ない。 オレも今日はイルカを頭に巻いて根の忍びを撃退するとしますか!
「昨日といい、今日といい。 俺への知らない忍びの視線が気になります。 偶然でしょうか?」
「・・・・っ?!」
「ははは・・・ 実は隠れファンがいたりするんでしょうかね? 俺にも。」
「い、いつの間に・・・・・」
「対談の場なら設けますよ? 用のあるご本人にそうお伝え下さい。」
「い、いや・・・・・ たまたま通りかかっただけで・・・・」
「もしかして他里の間者ですか? それなら容赦はしません! ハッ!! 」
「っ! ま、待てっ!! 違うっ! 長期任務から戻って来た木の葉の忍びだっ!!」
「これは失礼しました。 蹴りを入れかけた事は火影様には内緒にしておいて下さいね?」
「わ、わかった・・・ こっちもジロジロ見て悪かった・・・・ すまん・・・・」
「長期任務、お疲れ様でした。 報告が一番ですよ? 寄り道はなさらずに。」
「・・・・・・・・あ、ああ。」
昨日と今日の偵察でイルカに見つかった根の忍び、きっとダンソウへの報告はこんなのだヨ。
『海野中忍は只者ではありません、上忍レベルの中忍です。 かなりの腕前ですよ。』とか。
そうすればダンゾウは、ムダにイイ頭をフル回転させて先の出来事を反復する。 根の忍びの殉職を。
役にも立たない中忍を庇ったのではなく、自分より手練れの忍びだと判断したから庇ったのか。
木の葉の戦力の為、自分より強い者を残したのなら。 ヤツは根の教えに背いた訳ではない。
立派に根の忍びとしての役目を果たした、という事だ。 里の為の犠牲は弱者と決まっている。
・・・・・と、こんな思考に行きつくはずだヨ。 ま、あと何人か試しに送り込んでくるだろうケド。
何人来ようが一緒。 しっかりクッキリ撃退、実はイルカは強いんです伝説を作っちゃうからサ。
・・・・・ヤ、聞いてたけどネ? モノマネしながら自画自賛する、って。 ま、気持ちは分かる。
イルカなら蹴りの寸止めなんて芸当、無理だもんネ? それ以前に、根の忍びに対峙できないだろうし。
クスクス! チョット。 オレそこまでドヤ顔してなかったでショ? まったく・・・・ フフフ!
テンゾウが言ってたケド。 この時間が楽しいヨ。 ヤー もう、食が進むコト、進むコト!
「ところでイルカ、この味噌汁に入ってるテロンとした具、ナニ??」
「何って・・・ ナスですよ? 普通の。」
「へー。 ナスって味噌汁に入れると案外美味いのネ。」
「・・・ぶあははは! マジで?! 暗部のトップがナス好きなんて面白いっ!」
「そう言うコトをゲラゲラ笑って言うイルカの方が面白いヨ。」
「バカにした訳じゃありませんよ?! 庶民的で親しみやすいなー って思ったんです!」
「・・・・・・ウン。」
イルカに悪気はない、そんなコト分かってるヨ。 オレに向かって親しみやすいとか、面白いとかサ。
普通なら言わないもんだヨ? だって暗部の部隊長だし。 イルカにとっては二回しか面識ないし。
人懐っこいというか、警戒心がないというか。 遠慮がないんだけど、決して無礼じゃない、不思議。
一昨日、イルカがオレ達の変化だと知らずに聞かせた説教は迫力があった。 コレも表裏の部類?
大らかなのに厳格な顔も隠してる、ってコト? ・・・・ウン、やっぱり天然記念物級は間違いない。
だってどっちもイイ意味での裏表だから。 イルカの場合は表裏一体が、言葉の意味そのマンマ。
「ウン、イルカって教師に向いてるヨ。 人に興味を持たせんのが上手いもん。」
「あー 実は・・・ 最初、それほど教師になりたかった訳ではないんです。」
「三代目が勧めたんでショ? 知ってる。 でも今は、すっかり教師に意識が向いてるネ?」
「はい。 一昨日聞いた根の教えが頭から離れません、俺。 このままじゃいけない、って。」
そうだろうと思ったヨ。 根の者は基本的にダンゾウが集めた身寄りのない子供達なんだよネ。
だから身元引受人はダンゾウ。 その子らを引取ったのはダンゾウで、どう育てようが自由なの。
昔からダンゾウの傘下にいる忍びは、木の葉を陰から支えている組織だと洗脳されてるしネ。
そういう環境で更にあの教えでもって洗脳教育されたんじゃ、ナニが一番大事か判断できないヨ。
「いつか。 そういう考えの子を教える機会があったら、俺、全力投球しますっ!」
「アハハ! なんかイイね、そういうの。 里の未来の為に意味がある行動、っていうのかな。」
「むっ! ハイ、ハイッ! 暗部 部隊長どのっ! 異議ありっ!!」
「ナ・・・・ナニ?? ・・・・コホン。 ハイ、海野君、どーぞ?」
「俺の行動が未来だとしたら、カカシさんとテンゾウさんは未来を守った事になると思いますっ!」
「・・・・・・・・・・・ウン、そーだネ。 ありがと。」
「“もしかして他里の間者ですか? それなら容赦はしません!”ですもんっ! カッコイー!!」
「・・・・プハッ! モウッ! せかっくの味噌汁を吹きそうになったじゃないのっ!」
クスクス! だから! オレの変化したイルカでも、そんなドヤ顔してなかったでショ、って!
何だろう、別にナスが大好物って訳じゃない。 でもこのナスの味噌汁はメチャクチャ美味いヨ。
テンゾウ。 オレ達、男は勘弁だったよネ? なんでイルカの手料理にホンワカしちゃうの?
・・・・・人体の不思議かも。 間違ったんだヨ! イルカの染色体サ、本当はxxじゃないの?
ナンか、どっかでこんがらがって、yが急に割り込んできて・・・・ xyになったダケでショ!