どうしてそうなる? 1   ABC DEF GHI JKL




部内の均衡を保つのはオレ達 部隊長の役目。 血の気の多いヤツばかりだケド、皆不思議と仲がイイ。
生死を共にして戦う、背中を預けられる、喜んで一緒に泥をかぶる、そんなヤツらばっかりだからネ。
こんなコト張り合ったって自慢にもならないけどサ、正規の忍びの即席小隊なんてメじゃないぐらい。
生きるか死ぬかに直面したヤツらには等しく、言葉なんていらない。 だから一緒にいても楽なんだヨ。


そんなオレ自慢の部下達が。 どういうコト?! チョット、チョット! ナニやってんの、お前ら。
暗部訓練所でもある第七演習場で訓練でもなく、大乱闘。 組手かそうでないかぐらい、一目瞭然。
ミカミと・・・・・ ヒロが?? 一体ナニがあってこうなったのか、原因を聞かせてくれる?



「・・・・いや、ちょっと。 コイツ、海野中忍にチョッカイかけそうだったんで。」
「・・・・・海野中忍って・・・ イルカ先生とな?     なにぃ?!
「い、いや・・・・ あの、柔かそうだな・・・ って、唇が・・・・・・。」
「・・・・・フフフ。     ミカミ!! ぶっ殺すっ!!!

ぎゃーーーーっ!! 落ち着いて下さい部隊長っ!!
わーーーっ!! 最後まで聞いて下さい、部隊長っ!! 唇を撫でただけですっ!!」
「おれがちゃんと説明がてら喝を入れておきました!! ミカミはもうクタクタですっ!!」
「・・・・・・。 チョッカイとか言うからサ、てっきりチューかと・・・・・」


・・・・・コホン。 あんまり部下の前で取り乱すのは部隊長としてヨロシクないよネ。
説明しろと言ったのはオレだしサ。 ・・・・にしても、イルカ先生の唇に?? なんでまた・・・・・
ヒロが説明がてら喝を入れたってコトは、イルカ先生がオレとテンゾウの情人だと教えたってコトか。
いや、別に教えてもいいヨ。 暗部内の結束は固いし、その方が後々なにかと心強いしネ。

そうそう、あの唇は柔かいのヨ。 なんとなく肉厚でエロいでショ? 女と違って口紅の味もしないし!
・・・・じゃないや。 今は“なんで唇をなでてしまったアクシデント”が起こったのかを聞かなきゃ。


ほうほう、火影室で会ったのネ? うんうん、イルカ先生は三代目によく呼ばれるもんネ?
任務報告をしに行ったらたまたまそこに居合わせたのか、ふ〜ん。 ・・・・・・で?
三代目の袖のほつれを縫ってたんだ? ついでにマントの穴も縫ってあげます、って言われたの。 へー。

着たまま? 肩の位置だったから顔が近くにあったのネ? そんで仕上げに糸を噛み切った時・・・・
糸が唇に引っかかってたから取ってあげた、と。 ・・・・・まあ、撫でた経緯は理解できたヨ、ウン。
触った感触が心地よくて、なんとなくもう一回触ってみたくなった、か。 ・・・・なるほどネー。

もう一回触って自分の気持ちが本物かどうか確かめようとした時、ヒロが火影室に入って来たと。
それは分かるヨ。 オレ達暗部が処理以外で、自分からもう一回触りたい、だなんて思うワケないもん。
・・・・・現に、オレもテンゾウも前まではそうだったし? イルカ先生の嘘を本当にするまでは。


「・・・・・ってコトは、知っちゃったのネ? イルカ先生が誰の情人なのかを。」
「はい、軽率でした。 まさかカオルさんの情人だとは思わずに・・・・」
「そうそう、イルカ先生は・・・・・  はぁあ?! カオルだぁ?!  」
「・・・・・・・・・ぇ。」

「・・・・・・・・・ヒロ、お前・・・・。」
「いや、あの・・・・・ 確かに名前は伏せてましたけど・・・ まさかそっちにいくとは。」
「暗部内の均衡を保つのは当然なのに、あり得ないと頭から思い込んでましたから・・・ ははは!」


・・・・・チョット。 どうしてそうなるのっ!! なんでソコでカオルの名前が出てくるワケ?!
だいたいナンでオレ達の名を伏せる必要があるの。 ヒロが一番事情を知ってるはずだよネ?
・・・・・・・フンフン、他の奴にはくれぐれも公言するな、と。 ・・・・・確かに言ったヨ。

アレは先生がまだ情人になってない時の話で・・・・ じゃないか、ヒロと猫班三名は思い込んでた。
イルカ先生は長年日陰生活に耐えていたオレ達の情人で、媚薬でつい口を割ってしまったんだと。
ヒロ達だけを信用しているから、他のヤツらには喋るなとも言った。 しまった・・・・ 忘れてた。

「しかし、あのカオルさんが。 まだ信じられませんよ。 でも・・・ 分かる気がするなぁ。」
「「・・・・・・・・。」」
「ヒロが喝を入れてくれなきゃマズかったです。 今後、充分気をつけますっ! ではっ!!」
「「・・・・・・・・・。」」

ヤ、分からないでイイからそんなコト、勘違いだから完全に。 そういう前にミカミは瞬身で消えた。
二人が散々暴れただろう第七演習場に取り残されたオレとヒロ。 言わずもがなお互いが無言だ。


「えっと・・・・ 名は明かせないが、暗部の部隊長の情人だ、と最初に・・・・・・」
「・・・・。 まあ、その通りだネ?」
「それで・・・・ 男に転ぶなんてお前が一番想像出来ない人だ、分かるだろう? って。」
「・・・・。 それもその通りだーヨ。」

「てっきり伝ったものだと思っておれ・・・・ 発散させてやろうと組み手を・・・・」
「ウン、そうだネ。 ヒロの気持ちも分かる、お前一人に頼んでたからサ。」
「す・・・すみません部隊長。」
「大丈夫、オレの口から話せば、ミカミは分かってくれる、でショ?」

「お、おれも及ばずながら援護しますっ! 今後はミカミと二人で・・・・・」
「ウン。 オレの不在中、イルカ先生の警護はお前たちに任せるネ?」
「はいっっ!!」





ウンウン、説明不足で落ち込んでたヒロが立ち直った。 部下をやる気にさせるのもオレ達の仕事。
ああは言ったものの。 もしミカミが猿班のヤツらに喋ってたら? ・・・・・・・・・・。 まずい!!
敵の間者であっても洗脳して部隊長の傍に置いておきます! と号泣してたよネ、アイツら・・・・・
前言撤回!! 生死を共にした信頼できる仲間でも、伝えるべき言葉は少なからず必要だヨッ!!