どうしてそうなる? 12   @AB CDE FGH IJL




どうするかは決まってる。 イルカ先生を狙った刺客を狩った事にするんだよ、当然じゃないか。
実力でかなわない相手の恋人を狙う事は、精神的にその相手を追い詰める上で最上の策だよ。
だからこれは、今後本当に起こり得るかもしれないシミュレーションだ。 本番前の予行練習。

え? そんな奴が本当にいたら、だって? 迷いの森の肥料に決定だよ、ミンチにして蒔いてやる。


とりあえず、暴れました感を出さなくちゃならないので、森の中で先輩とターザンごっこだ。
意味もなく樹の上でリスを追いかけまわしたりしながら時間を潰すと、いい感じに薄汚れた。

仕上げは血臭。 ターザンごっこをする前、川に仕掛けておいたんだよ、木遁質の地引網をね。
罪をなすりつけるのはどこでもいいんだけど、ズバリ、エアー刺客は水関連の里、という事で!
魚臭い血臭をプンプンさせてれば、なんとなく霧隠れの里か雨隠れの里を連想させるだろう?

お、結構入ってますよ、カカシ先輩! わりとでっかいのを4〜5匹、素手で掻っ捌いた。
ちなみに素手で捌いても、切り口は綺麗だよ? チャクラを纏った手刀の三枚おろしだから。
魚は森の宿のご主人への手土産だ。 作戦会議の為に休ませてもらったからね、ほんの気持ち。
例え一瞬だろがタダで宿の部屋を使わせてもらったんだから、その恩には報いなくちゃね!

「ヨーシ、なんちゃって処刑タイム終了!! 宿のご主人に夕飯の材料の差し入れだヨ。」
「なんともいえない魚の血生臭さが漂ってます。 誰がどう見ても狩りのその後ですね。」



そうそう、森の宿のご主人に魚の三枚おろしを差し入れしたら、めちゃくちゃ喜んでいたよ。
ほんの数分間だけなのに、暗部の皆さんはどんな事にでも仁義を通される方なのですね、だって!
こんなやり取りさえも、規約厳守がウリの森の宿なら、ここで起こった事は絶対に他者へ漏れない。
だから“困った時は迷いの森”なんて呼ばれてるんだ。 里の上忍の隠れ家も結構多いんだよ?




これはボク達の面子にも関わる事だから失敗は許されない。 それに里内外にもアピールできるからね。
ボク達の情人を狙うとこうなるんだ、という脅しだよ。 まあ、今回はシミュレーションだけど。
小細工はバッチリした、下忍ならチビリそうな殺気も大いに纏った。 よし、ここからが本番だ!
暗部専用 第七演習場こと、お山の麓の戌猫ゾーンでは、使命感に燃えたボク達の部下が勢ぞろい。
そんな、いかにも中に誰かを匿ってます、みたいなバレバレの布陣はどうかと思うけど。
ボク達の情人を狙って刺客が里内に入り込んだと思っているから、張り切るなと言う方が無理か。

先生がいるらしい小屋の戸の前で、忍刀を地面に突き刺したまま仁王立ちしているのはミカミだ。



「ヨ! ミカミ、お疲れー。 先生は中?」
「お・・・・ お疲れっしたぁっっ!!」
「もう足止めは必要ないよ、殺ってきたから。」

「はい! ・・・ですがそれはちょっと・・・・」
「「・・・・何?」」
「えっと・・・ 殺気はもう少し抑えた方が・・・・」

「・・・・アー ゴメン、ゴメン。 そうだよネ?」
「・・・久しぶりに楽しく運動しちゃったからね。」
「あとですね・・・ その・・・ 血が・・・ 若干ついたままです。」
「「・・・・あ、ほんとだ。 洗ってくるねvv」」


パーフェクトなツッコミだよ、ミカミ! そうそう、そういうのを言ってくれなくちゃね。
殺気も血臭も気づいてくれないと意味がない、せっかく小細工したボク達の苦労が水の泡だ。
うんうん、おまけに見事に感じ取ってくれたよ。 “その魚臭さは・・・ 霧、ですか”って。
打てば響く部下達に乾杯! 予想通り深読みしまくってくれて・・・・ ありがとうっ!!


「ンー すっかり頭に血が上っててねぇ・・・・ 自然淘汰させちゃったヨ。」
「どうせなら肥やしにするか、って。 気付いたら原型を留めてなくてね。」
「という事は・・・・ 迷いの森に?」
「「そう、大正解!」」
「「「「おおーーーーーっ!」」」」

「そっかー 迷いの森か。 ならもう何も残ってねーな・・・・」
「おう。 カラスとか野ネズミとかの餌になってるんじゃね?」
「しかしバカな奴らだな・・・ 部隊長達の本気っぷりも知らずに。」
「てか、俺らもチョット前に知ったばっかだけどな? はははは!」


ふふふ! 今頃部下達の頭には、謎の刺客のミンチが自然淘汰される様が浮かんでいるよ?
カカシ先輩。 “でっち上げよう水の刺客大作戦”は、これ以上ないほど上手くいきましたね!

もしボク達のいない間に同様の騒ぎが起こったらよろしく頼むね? と、部下達に言った。
今回は猿軍団の勘違いハイテンションで先を越されたけど、今度は出遅れるなよ? と付け加えて。
これも予想通り。 ミカミ、ヒロ、コバを筆頭に、そりゃーもう、皆が一丸となって吠えまくってた。

イルカ先生はボク達から微かにする血臭で、何があったかを悟ったらしい。 さすがは元潜入員!
まあ、ボク達の部下に引き止められて小屋の中に軟禁状態、変に思わない方がおかしいけどね。
しかもあそこまでバレバレな防衛布陣。 もしや自分は守られている側か? と察しがつくだろう。

小屋に入ると“お帰りなさい、ありがとうございました”とイルカ先生がボク達にほほ笑んだ。
同僚の先生達がボク達を不審者扱いしたせいだよ、とは言えないから、あいまいな笑いを返す。

すると、里内で狩りを楽しんだのを後悔してる様に見えたのか、先生が激甘濃厚キスをしてくれたんだ。
こんなのされた日にゃ、股間直撃だよ。 ボク達の雀の涙ほどもない自制心なんて即、蒸発するよね?


「ンー ・・・・この返り血・・・・ ン、・・・ 先生の体で洗ってくれると嬉しい。 アリ?」
「ちゅ・・・ アリです。 一杯泡立てて大切に洗います。 ちゅ・・・・ 乗っかってほしい?」
「んっ・・・・ やったv もちろん乗っかってほしいよ。 ちゅ・・・・ ヌルヌルにして?」
「あははは! 仮面の忍者木の葉のモデルがこんなにスケベだなんて絶対に詐欺だ、ふふふ!」


先生は男で冗談も言う、普通ならシモネタで終わる所。 なのに本気に聞こえちゃうんだよね。
イルカ先生の人柄のせいだと分かってるけど、そういう冗談を言われた方はドキッとするんだ。
それにそんな時の先生はプチ挑発的。 それが妙に男受けする原因だと、絶対に気付いてないよ?

でもボク達はラブい恋人達、冗談じゃなく思いっきり本気。 ヌルヌルを実行してもらえるんだv
そんな事絶対にしません、って顔してアカデミー生達の前に出てるくせに。 先生こそ詐欺だよね?