歯車の潤滑油 13   @AB CDE FGH IJK M




それは誰をも圧倒する魅力。 剣の国の若獅子王と言われているこの国の若き王、昴様。
銀の甲冑を身に纏い、紫のマントを靡かせた昴王が、民の歓声に片手を上げた瞬間だった。
色とりどりの花弁が舞い上がり、まるで誰かに何かを言われた様に、ヒラリヒラリと民の頭上に降る。
誇らしげな剣士の横には青い瞳の美丈夫。 熱狂する民衆を前に、彼は声を高らかに叫んだ。

「我ここに成人の儀を迎えん、民の前で誓おう。 我この国の剣となり、民の盾となろう!」

大地が揺れたのかと思うほどの歓声が上がり、人々は誰ともなく抱きしめ合い、王を祝福する。
この自慢の王を見よ、他国のどの王よりも素晴らしい、剣の国の繁栄は確固たるもの、そう確信して。
そして痛感する。 あの幼き王をここまで立派に導いた、元皇后の素晴らしさと、城の剣士達を。
何が正しいのか、そんな事はどうだっていい。 少なくともこの国には、立派な王が誕生した。





昨夜はお仕置きなしの甘い時間だったなぁv セレモニーも大成功、これでやっと木の葉に帰れる。
このままイチャイチャ新婚旅行を、ズルズルと延ばしたい所ではあるけどね、里までの道中を。
ボク達は忍びで、仕えるのは火の国、木の葉隠れの里だ。 強引に急病になってもらった仲間達や、
アラシにもお土産を買って帰ってあげよう。 遠方の剣の国からの依頼なんて、めったにないもん。

この国は、隠れ里がなくても剣士達が民を守るだろうね。 高水準な技術の武器も駆使して。
そんな国と友好関係が結べたら、火の国にとって願ってもない話だろう。 響様の在任中は確定。
おそらく響様は、木の葉や火の国に何かあった時、支援してくれる存在となる。 つまり、この国が。

「そう言えば、碧様はどうなさったのですか? 昴王の晴れの舞台なのに・・・・・」
「すまぬな、母は公務で他国に出かけてしまったのだ。 母でないと纏まらぬ話もあるのでな。」
「お忙しいですね、王族の方は。 ウチの国主もそうなのかな? あんまり意識した事ないけど。」
「そこに住む民にそうと気付かせぬ方ならば、素晴らしい国主なのだろう。」
「フフフ、昴王に国主を褒めてもらうと、自分のコトの様に嬉しいですネ、関係ないのに。」

ウチの国主は凄いですよ? 各国の情報収集に命懸けてますから。 暇があれば里に任務依頼です。
だからこんな遠くの国の一家臣の名前も、データとして木の葉に保管してあるんですよ。
次の王に仕えるだろう重臣の情報は、何事においても先手を取る上で、最も重要な事ですからね。
火影様にしてもそうです。 集めた情報は必ず、適材適所で配置した忍びに与えるんですよ、全て。

「それでよいのだ、自国の民が共通で誇れるモノがあれば。 人でも物品でも、なんでも良い。」
「なら昴王は、まさしく、この国の民が誇れる者ですね。」
「民に恥じない生き方をしなくてはならない、そう思われているのなら尚更にな。」
「ふふふ、お会いできて光栄でした。 式典の主役の華がこんなにすばらしいだなんて。」

本当にそう思います。 ただ、あまりにも真っ直ぐで、損をしそうな方だな・・・・ とは思います。
火の国が大陸一の国だと言われるのには訳がある。 木の葉が自主的に和睦の道をとらせるから、だ。
知らない内にこうやって、火の国親派へ仕立てるんですよ。 国主や火影はそれはもう、古狸ですから。
近々、友好条約が結ばれるでしょうね。 その時の護衛は多分、暗部が担当する事になると思いますよ。

「火の企画のお三方。 最高のセレモニーを・・・ ありがとうございました。」
「わざわざ火の国までお越し下さった、響様こそ。 ありがとうございます。」
「たくさんある企画会社の中で、オレ達を選んで下さって、感謝しマス。」
「また何かイベントがあれば・・・・・ 火の企画をよろしくお願いしますね。」
「それはもう。 ・・・・・・・火の企画以外を・・・ 招こうとは思いません。」

木の葉以外の隠れ里や、火の国でなければ・・・・ きっとこの国は侵略されていただろうな。
数ある隠れ里の中で木の葉を選んだ響様は、本人が気にしている裏切り者じゃない、国の救世主だ。
ね? 力に訴えなくても、友好的にその国の文化や技術の恩恵を受けられる方法が、あるでしょう?
お人好しだとか馬鹿だとか。 火の国と木の葉はそうやって大陸一になった。 これでも馬鹿かな?


「では、火の企画のラブ&ピースチームよ。 この響が帰路も再びお送りするので安心されよ。」
「「ラ・・ブ・・・・??」」
「おや? 違ったか? 皆がそう申していたぞ?」
「あはは! いえ、違いません、俺達は・・・・ チーム、ラブ&ピース、です。」

「おおそうか。 チームラブ&ピースか、これはすまない。 響、火の国までの護衛を頼んだぞ?」
「はい、陛下。 お任せを。  ・・・・お三方、火の国まであの飛空挺で、お送りしましょう。」
「「やったー! 飛空挺っ!!」」
「・・・・もう、可愛いっっ! ちゅ! ちゅ!」
「「えへへ! ラブ&ピースvv」」

「なんとも仲の良い恋人達だな、響。」
「はあ。 あー コホン。 ・・・・・・・では、まいろうか。」
「「「はい、頼りにしてまーす、響様!」」」

だって今のはイルカ先生がしたんだもん! ボク達催促してないし! デコちゅーも大好きだけどね?
優しく触れるか触れないか、そんな唇に掠めるようなキス。 このバードキスもクセになっちゃうよ!