歯車の潤滑油 9   @AB CDE FHI JKL M




上手くはぐらかされてるな、とは思ってた。 確かに仮人質の話を最初に聞かされたら暴れてたね。
当然の事だけど、弱みを握ったからと言って、火の国は剣の国に見返りを求めない、木の葉も。
まあ、国主や五代目を知らないなら、しょうがないか。 特許を持つ、あの飛空挺を見れば分かる。
高い技術を保持する剣の国を、吸収したいだろう他国は、世界中に掃いて捨てるほどあるだろう。

世界にはたくさんの国があってバランスが取れている。 統一世界、っていうのはあくまで理想。
それは絶対不可能、必ず力に訴えるし。 意思を尊重し合うなんて、人類はそこまで進歩していない。
自国の意思を押しつけようとしたり、他国の文化を力づくで壊そうとするから、争いに発展するんだ。

我らが国主と影は、その世の理を大事に重んじる人達。 馬鹿だと言われようともそれでいい、と。
だからたくさんの国があっていいんだ、それを押しつけもせず壊しもしない、独自の文化を持つ国々が。
ボク達木の葉隠れの里の忍びには、火の意志がある。 そんな火の国と里を誇りに思ってるんだ。








一応ね、こんなカッコしてるけど、本当はボク達忍びなんですよ。 今だって影分身で城内を探ってる。
遠くからの視線やひそひそ声も、しっかり感じちゃうし、聞こえちゃったりするんですよ、なんてね。
メジャーやノートを持ってウロウロしているボク達。 今も、柱の陰から4人分の視線を浴びてる最中。

「ねぇねぇ聞いた? 大陸一の企画会社ですって! 素敵〜!」
「カッコいいものね〜 特にあの銀髪の人! なんだかとってもミステリアス!」
「あらアタシは短髪の黒髪の彼がイイわ〜! 優しそうな雰囲気だと思わない?」
「長髪の彼もとっても魅力的。 顔に傷があるのに、凄く人懐っこそうだもの!」

「「「・・・・・・くす! (そりゃどうも。) 」」」

早くもボク達は噂の的だ。 そりゃそうか、異国の青年が三人、騒がない侍女達がいる方がおかしい。
城の中はお堅い、それこそ響様のような剣士ばかり。 殿下はまだ15才、恋愛の対象じゃないしね。
でもまあ、ハッキリさせておかなくっちゃ。 だってボク達は恋人兼、会社のチーム、なんだから。
あ。 上手い具合に、イルカ先生が廊下の壁の絵のサイズを測ろうとしてる。 よし、ここは・・・・・。

「イルカさん、肩に乗って下さいナ。」
「ボク達が土台になりますよ、はい。」
「ありがとうございます、では・・・・  よっと!」

この絵にひっかけて何かを飾るのかな? イルカ先生が大きな絵のサイズをメジャーで測ろうとしてた。
ボクとカカシ先輩の肩を提供すると、ヒラリと乗っかる先生。 これぐらいなら忍びだとバレないか。
当初の目的通り、測り終えた瞬間を見逃さず、彼女達に分からない様にズレる。 え? 目的??
これこれ、この為。 バランスを崩したイルカ先生をキャッチする為だ。 あの時受け止めた様に。

「「イルカさん、大丈夫?!」」
「ふーーぅ、ありがとうございます、助かりました。」
「「お礼なら、いつものをお願いvv」」
「了解です、んーー ちゅ! ちゅ!」

「きゃぁ〜〜〜〜っっ!! 今の何?!」
「「え〜?! そういう仲なの〜?!」」
「やぁ〜ん! なんだかドキドキしちゃう!」

ふふふ、効果テキメン! ボク達は彼女達に、しっかり恋人として認識された。 後は待つだけ。
あれぐらいの女の子は、人の噂や変わったネタが大好き。 ものの三時間ほどで城中に広まるだろうね。
知ってか知らずかイルカ先生は、ボク達の唇にキスをくれた。 本当に新婚旅行みたい、ふふふ。

花はカーネーションで統一しましょう、幕は紫のビロードで、とテキパキと指示を出すイルカ先生。
さすがたくさんの式典を取り仕切って来ただけはある。 ボク達の任務はほとんどが暗殺だったから。
こういうのはヤッタことない。 てか、本来は上忍と組んで当たる任務だったから当然なんだけど!







「「イルカ先生、ナニを書いてるの?」」
「ふふふ、内緒です。 ・・・・と! これでよし!  ・・・・はい。」
「「???」」
「すみませんが、この手紙を碧様に変化して部屋に置いて来て下さい。」

「・・・・せっかく影を戻したのに! ジャンケンですよ、先輩。」
「こい、最初はグー、ジャンケンポン!!  ・・・・・ハイ、テンゾー 行ってらっしゃ〜い!」
「ちぇ、やっぱりボクか。 影分身の術っ! ・・・変化の術っ! じゃあ、ボク、これお願い。」
「あはは! やっぱり凄いなぁ。 全部同時進行で済んじゃうんだもん。」

「「先生自慢の、暗部の黄金コンビでしたからvv」」
「はい! 俺の自慢! 木の葉の・・・・ 里の誇りですよ、甘えん坊だけど。」
「「・・・・・それは先生にだけっ! もう!!」」
「くすくす! いいんです、それで。 俺だけが知ってるふたりがいて。 ふふふ。」

ディナーで難しい名前の料理を食べた。 どれもさすがというモノばかり。 ・・・・でもね?
上等の材料で、手の込んだ仕込をしなくても、イルカ先生の作ってくれる料理が一番おいしいよ。
焚きたてのご飯とおみそ汁があれば、ボク達は十分なんです。 だって先生の愛情がたっぷりだし!
イルカ先生の作る料理ならなんでも食べちゃう。 でも一番好物は、やっぱり先生本人。 ね、先輩?

「「・・・・・先生を食べるまで、お腹一杯にならないんだけど?」」
「あははは。 生モノですから、お早めにv」
「「やったっvv いっただっきまーーすっ!」」
「あはははは! んんーーー ん、ん、 はぁ・・・・・ 大好きです、ん、見せてあげたい、心を。」

え? 碧様に変化した影? そなのとっくに戻したよ! 先生とイチャコラする時は完全体でなくちゃ!
うん。 感じるよ、イルカ先生の柔らかい笑みも、とろける視線も、優しい手も。 全身で感じる。
大好き、愛してる、何よりも、誰よりも。 全部ね、そう言ってる。 ありがとう先生、ボク達、幸せ。

それはソレこれはコレ。 仮とは言え、里の信用の為に人質を申し出るなんて、やっぱり許せないよ。
って事で、木遁で先生のを縛っちゃった。 ごめんなさい、って言うまで解放しないからね!