歯車の潤滑油 5   @AB CEF GHI JKL M




「響様、この度のご依頼、ここにいますふたりが、お受けいたします。」
「木の葉の暗部 元部隊長 コピー忍者のカカシと、現部隊長 木遁使いのテンゾウです。」
「そんな有名な忍びが出向いて下さるとは。 なんとも心強い。」
「ま、有名かどうかは別として、上忍5人分の働きは致しますヨ。」

剣の国の剣士、響様。 先代から王家に仕えて今は昴王の側近だとか。 そんな人が昴王の母君を。
そうとうな事情があるはずだ。 ボク達忍びは任務なら、例え相手が誰であろうと仕事としてこなす。
でも剣の国の剣士は、独特の騎士道を重んじる。 鉄の国の武士道と、相通じるモノがあるかな、少し。
だからというか、こんなめんどくさい事をする気になったんだろうけど。 頭が固いんだよね。

「随分とご謙遜を。 木の葉の暗部と言えば、わが国でも知らぬ剣士はおりません。」
「「恐れ入りまして。」」
「ふふふ、そうなんですよ、ちょっと自慢しちゃっていいですか? このふたりは・・・・・」

あはは! イルカ先生、我が事の様に自慢してる! 照れちゃうな、別に褒められる事でもないのにね。
ボク達暗部が自慢できるのは、人を殺して来た数ぐらい。 そしてそれでも生き残ってる今が自慢、かな。
イルカ先生に褒めてもらうと、もの凄く立派な人間に思えるんだよね、とっても安らぐんだ、不思議。


騎士道の忠節は命。 王に仕える剣士は先代の遺言がない限り、その仕えた王と死を共にする。
忠臣は二君に仕えず、というヤツだ。 これは一見綺麗な事に思えるけど、国に住む民には最悪の事。
優秀な人材が一緒に死んじゃうなんて、馬鹿もいいとこ。 ボクに言わせれば国を混乱させるだけ、だ。
本当に国の為を思うなら、己の事でも王の事でもない、そこに住む民の事を考えるべきだ。

・・・・・とか言うのは、三代目の受け売り。 ようは自分の死がもたらす負を考慮せよ、って言う事。
だから自ら生きる事を放棄しない限り、それは全ての民の生に繋がる。 部品は壊れちゃ駄目だしね。
その性能を維持するのもとっても大切な事。 ふふ、だからボク達にはイルカ先生が必要なんだよ。

この人は先代の遺言で、昴王に仕えている。 なら、先代は確かに尊敬できる人物だったのかも。
自分の死後も、息子や民の事を考えたから遺言したんだ。 それこそ立派な決断だと思う、あの国で。
ん? 火の国や木の葉隠れはどうか、だって? ふふふ、歴代火影は皆立派な人だよ、当然じゃないか。
ボク達の事も、好きにさせてくれる。 これはボク達が、いい部品であればあるだけ黙認される事だ。

考えてもみてよ。 もしイルカ先生とボク達を引き離したらどうなるか。 ボク達は超優良な部品だ。
しかもカカシ先輩とボク、ふたつの部品が組み合わさって歯車の様に噛み合ってる。 それを外す?
そんなの里のする事じゃないでしょう? そんなことしたらどうなるか、あのダンゾウでも分かるよ。

ボク達が育てた子供達も・・・・ というか、今んとこ、イルカ先生とカカシ先輩が中心だけど、
どんどん良い部品になりつつある。 ボクもナルトが帰ってきたら、暗部を引退して育成に携わるんだ。
もう絶対、里には必要不可欠の存在でしょう? だってその立場を確立するのに時間をかけたもん。
それに歴代火影は、ボク達忍びをただの部品としては扱わない。 心を持ち続けろ、って教わって来た。


ふふふ、あんな顔して。 これでもか、ってほど自慢してるイルカ先生。 響様がポカンとしてる。
褒めちぎられて思わず、先輩もボクもイルカ先生の腕を両サイドからホールドして、畳に倒した。
響様に一生懸命話をしているイルカ先生を、グイーッと後ろに倒してその上に乗っかる。

「んー。 この嬉しそうな目元にキスしちゃおーっと! チュv」
「じゃ、ボクは反対の目元に。 イルカ先生、褒め過ぎ! ちゅv」
「ぁ、ん・・・ まだ自慢し足りません、俺の誇りなんだから。 もう! あははv」

「・・・・・・・木の葉の忍びのスキンシップは、かなり過激なのですね。」
「「「あ・・・・・。」」」

・・・・・・いや、つい、ね? ほら。 嬉し過ぎて子供に戻らない様になるべく他の事考えてたけど。
あの顔見ちゃったら、たまらなくなるでしょう? 誰だって。 好き、大好き! ってなるよね?
じゃれ合ってるボク達を見て、響様が言った。 我が国ではそこまでやりませんから吃驚しました、と。
木の葉の忍びの日常なのでしょうかと。 いや、あの、真面目な顔でそんな事言われても・・・・ ね?