古今東西のセオリー 10
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火の漫遊記の事といい、暗部面に触らせてくれた事といい、本当に気さくで優しい暗部さん達だろ?
はぁー ズルイよなぁ。 これで、先輩暗部を誰にも気付かれずに殺せるぐらい腕が立つんだぞ?
その・・・・ お顔もな? イイ男なんだよ、二人とも。 どうよ、この完璧な火影直属の隊員達は!
これでまだ見習いなんだぞ? 絶対、この二人は組織を変えてくれる! そう夢見ちゃうだろ? な?
「こりゃイルカ。 カジキの話を聞いておったか?」
「へ? ・・・・や、あの・・・・ なんか難しい任務の報告ですよ・・・・・ ね??」
「ほら、これですよ、恋は盲目です。 イルカは二人に気をとられて聞いてませんよ、多分。」
「「もぐもぐ・・・・・・ くすくすくす!」」
いや、気をとられてたのは本当ですけど・・・・・。 あー うー その・・・・・・ 駄目だ。
カジキ上忍にも誘導されそうになったのに・・・・ 三代目だぞ? プロフェッサー猿飛ヒルゼンだぞ?!
ここで俺が下手に否定でもしたら追及されて喋らされた揚句・・・・ 確実に二人の同胞殺しがバレるっ!!
イタズラやって尻叩かれてた俺。 小助さんに習った料理をアレンジしては、味見係を頼んでた俺。
火の漫遊記の放映日の翌日“ご老公!”と呼んで怒られた俺。 結構泣き虫で感動屋さんな俺。
“こんな忍びも面白いのぉ”と、三代目に言ってもらったそんな・・・・ 今迄の俺は忘れて下さいっ!
・・・・・三代目、俺は二人と出会って恋するイタイ乙女な中忍にモデルチェンジしたんです!!
「そ、その・・・ はい。 胸が一杯で。 あの・・・ 出来れば今一度ご説明をば・・・・・」
「なんと! なんじゃお主、そのウルウルしとる目は!! こ奴らに、か?!」
「そういう事です。 海野中忍のコレは、さすがに予想外でして・・・・・。」
「「・・・・もぐもぐ。 ・・・ふふふvv」」
やっぱり分かります? ちょっとね・・・・ 今のこんな自分に嫌気がさして、泣きそうになりました。
まあ、涙目のおかげで。 三代目も乙女な俺へのモデルチェンジをすんなり受け入れてくれた様だ。
すみません火影様。 数週間後、ちゃんと失恋報告をしたら、またすぐに前の俺に戻りますからね?
“いいか、今度はちゃんと聞いてろよ”と前置きして、カジキ上忍は順を追って話してくれた。
暗部は火影直属の暗殺部隊、三代目の勅命でのみ動く。 隊員の行動そのものが三代目の代行である。
だから現場に合流した暗部隊員には、応援を要請した交戦部隊の隊長であろうと命令は出来ない。
一旦暗部が現場に出たら、引き揚げるまで隊員の行動は誰にも制御できない。 火影命令の名の元に。
だが最近の暗部の行動は目に余る。 確かに彼らの行動はある意味で正当、里の為なのかもしれないが。
作らなくていい敵を作っている。 戦いを終結させる為にわざわざ来てもらったのに、本末転倒だ。
三代目、恐れながら進言させて頂きます。 このままではただひたすらに恨みの種を蒔くだけですよ?
そうカジキ上忍が三代目に訴えたら、“同胞を計略にかける任務”を引き受ける事になったらしい。
嫌な任務を頼んで悪かったと、三代目をもってそう言わしめた任務とは、その暗部隊員の見極め任務。
カジキ上忍の訴えと同じ様な状況を使って、隊員の動向を試すんだ。 つまり、実際に敵がいる戦場で。
暗部が無駄に長引く戦場に投入される時、それは双方の交戦部隊の隊長の交渉に繋げる為でもある。
投降交渉が難航している現場ではお互い疲労が増すだけ。 敵部隊に戦意を喪失させなければならない。
少数の忍びに手も足も出ないのか、と敵方の無力感を煽れば決定打、犠牲も必要最小限に留められる。
それだからよく、長期戦に暗部が投入されるんだ。 現場の交戦部隊の隊長が里に応援を要請するから。
俺は本当に胸が一杯になった。 だってそうだろ? 現場で俺も“これはおかしい”と思っていた事が・・・
ただ単に綺麗事だと諦めていた事が、事実だったんだ。 そいういう戦い方を、木の葉の忍びはしてた。
“木の葉は対面での約束は守る”と、他里の忍びも信じている事。 殺しの中にもある道理が存在した。
俺が一番初めに任務で一緒になった暗部。 その後何度か見た死体。 そしてこの前の死んだ隊員達。
生と死の中で、本人も気付かずに道を誤る同胞はいる。 悲しいかなそれは暗部の隊員も同様だった。
正規の忍びは暗部がそれを判断する、でも暗部隊員がもし道を誤ってしまった場合、誰が判断するのか。
俺達 木の葉隠れの忍びは皆、額当てをその手にもらった時から、木の葉の火の意志を受け継いだ。
直轄部隊の暗部がする事だからと、ただ黙認してしまいがちだが、そこに否を唱える者もちゃんといる。
直接声に出して訴えたのは今回の場合、カジキ上忍だった。 そして皆も・・・・ そう思っていた。
遅かれ早かれ誰かの口に上る、俺だって現場で衝突しそうになった。 正規の忍び皆が判断材料だったんだ。
敵の裏切りに備えて、暗部は敵忍の退却までを完全に見届ける。 そしてもし木の葉を計略にかけたら。
撤退と見せかけ待ち伏せ、首を差出した敵方の隊長すら替え玉、残念ながら稀にそういう事もあるらしい。
交渉自体が敵の謀であったなら、応援に来た暗部が敵方を退路で一掃、首と胴体を切り離して放置する。
切り口が焼けてたのは、一目で木の葉の暗部の仕業だと分かる様に。 これみよがしに死体を放置して。
俺が暗部に失望するキッカケとなったの敵忍の殲滅は・・・・ 裏切り行為への報復措置だったんだ・・・
なら全員は殺していないだろう。 結果を報告させる為、敵忍の数人を生かして自里まで戻らせたはず。
カジキ上忍が“悔しいよ”と言ったのは、隊長同士交した別れの盃、対面約束を反故にされたから、だ。
暗部は・・・ 俺の両親が生前聞かせてくれた組織だった。 三代目の手足となって動く忍び達だった。
世の悪を成敗して回る火の漫遊記に例えたね? 父ちゃん、母ちゃん、二人が教えてくれた通りだったよ?
本当に三代目がご老公様、暗部の部隊長と補佐がスケさんとカクさんみたいなんだ。 へへ、俺、嬉しいや。