古今東西のセオリー 9
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ごめんなさい、俺、やっぱり勇気がありません! な感じで手を合わせ一礼。 猛ダッシュで去る!
・・・・・去ったつもりだった。 へーへー、俺のダッシュなんざ、亀の如きスパートですよ、どうせ!
しっかりくっきり先回りされ、がっちり首根っこを掴まれた。 いや、正確にはがっちり忍服の襟を。
カジキ上忍は俺の襟を掴み、そのままズルズルと廊下を引きずって行き、火影室の中に放り込んだ。
・・・・ここで代わり身の術で丸太になったら、後でボコられるな。 とか、ちょっと考えた。
・・・・ここでベストのファスナー下ろして脱皮しても、すぐ捕まるな。 とかも考えてみた。
カジキ上忍、なんであなたはカジキ上忍? ここまで面倒みてくれなくてもいいんですよ、もう!
里で指折りの上忍に“絶対に言わないで下さいね?”などと、あなただけが頼りです的な相談をした罰?
バレる・・・・ だってあのお弁当は三代目の為に作って来たんだ、中で食べてたら・・・・ 即嘘だとバレる!
何か良い言い訳を考えろ俺。 こうなったら、とことんイタイ乙女な片思い中忍男になってやるぞ。
うん、そうしよう。 カジキ上忍にウザがられるぐらい、どってことない。 二人の立場を守るんだ!
少しでもいいから、スケさんとカクさんと話す機会が欲しかった。 弁当は話すキッカケだったんです!
二人の為に作ったと言ったら受け取ってもらえないと思い、三代目に作ったと言ってしまったんです!
よーし、言い逃れ準備OK。 自分のついた嘘の深みにどんどんはまって行ってるのは・・・・ 気のせい?
階級差のある二人の野郎を同時に好きになったイタイ男。 弁当でキッカケ作りをするほど乙女らしい。
・・・・・俺の中で一体どんな変化があったらそんな事に?! てか、ここまで嘘で固めて・・・・・・
ちゃんと失恋できるのだろうか・・・・ 一抹の不安が過る。 だってカジキ上忍はずっと応援体制だし。
俺、もう諦めます・・・・ とか言おうものなら、今みたいに強制的に連行されるかもしれない・・・・・
火影室の中では俺が作った弁当を三代目が食ってて、カジキ上忍の目が点になるんだよ、それで・・・・ ?
へ? スケさんとカクさんが・・・・ 食ってるの?? はぁ?! あの、それ三代目の・・・・
・・・・・・・。 まあいいや。 ひょっとしたら三代目はお腹一杯でいらない、って言ったのかも。
じゃあ、自分達に下さいよ、みたいな? なんだか分かんないけど、嘘の上塗りはしなくていいらしい。
てか、例え三代目がくれたとはいえ・・・・ 見習いが火影室で飯食っちゃってて・・・・ いいの??
「三代目、失礼します。 コイツが意外に手こずらせまして・・・・」
「カジキか。 待っておったぞ。 おお、イルカも一緒か。」
「「モグモグ・・・・・ ? イルカ??」」
「 ど・・・・ どーもー ・・・・・・ 来ちゃいましたー ・・・・ 」
「「イルカ飯、食ってるよ 美味いっvv」」
「ありがとうございます・・・・ へへ。」
いろいろツッコミどころ満載だけど、ここは天が味方した様な偶然を、ただひたすら甘受しよう。
カジキ上忍にアピールするぞ! わー 信じられない 俺のお弁当食ってくれてます! って喜ぶぞ!
これを見て勇気が出ました、カジキ上忍のおかげです、ありがとうございました! ・・・・で、退室だ!
まず、どんな乙女だよ、なキラキラ目線をカジキ上忍に向ける! おかげで自信持てました、的な視線!
( カジキ上忍っ! 俺、明日も頑張りますっ!〈キラキラ・・・〉よ、よし退室・・・・・ )
「 ・・・・・・・・・じゃ! ・・・・・・・・・・ぅぐえっ!!」
「どこ行くんだ、お前も一緒に聞いてろ。 ・・・・って! そこの二人、不機嫌にならないっ!!」
「だって・・・ ネェ? キラキラ視線が飛んでたじゃないの。」
「それになんですか、それ。 ゴムの首輪みたいなチャクラ。」
「まあ、いろいろありまして。 逃げない様に、です。」
「「・・・・・飼い主みたいでなんか腹立つ!」」
「ほほほ。 イルカや、カジキはお主にも聞かせたいらしいぞ?」
「けほっ! ・・・・ぅ。 は、はい・・・・ けほっ、けはっ・・・・」
けほけほ・・・ カジキ上忍、いつのまに俺の忍服の襟に仕掛けを?! あ、さっきの襟掴みか・・・・
吸引チャクラが襟に仕掛けられてた・・・・ ビョーンってゴムの様にカジキ上忍の横に戻されちゃった。
ち! どこまでも無駄に優秀な上忍め、どうせ俺はイタイ片思い中忍ですよ! ・・・ちょとヘコんだ。
カジキ上忍が口頭で三代目に任務報告するのを、横で黙って聞いていた。 口頭報告は機密保持の為。
任務後は必ずその任務に対する報告書を受付に提出する。 依頼人に詳細を報告する義務があるからだ。
でも緊急時を除いて三代目に口頭で報告するのは、記録に残しておけない事柄だと思ってまず間違いない。
「この前の任務の最終報告ですが・・・・」
「うむ。 カジキ、嫌な任務を頼んで悪かったの。」
「・・・・いえ。 どこかで軌道修正が必要ならば喜んで。」
「さぞ悔しい思いをしたじゃろう。 本来お主は、交渉に長けとるからの。」
「・・・・・・・お言葉を返すようですが三代目。 “裏の裏”ですよ?」
「おお! ほほほ! さすがじゃのぉ。 そうかそうか、うむうむ。」
「「・・・やっぱりね。 なんか企んでると思った。 モグモグ・・・・」」
「・・・・・。 ( まだ食ってる・・・・ スケさんもカクさんも、案外ふてぶてしいな・・・・ ) 」
・・・・・・・・・・・・一体何の話かさっぱりだが。 俺、カジキ上忍の横で聞く必要があるのか、これ?
陣営にいた時も思ったけど、スケさんとカクさんの食べ方は何気に可愛い。 最初、ビックリしたよ。
え、見習いとはいえ暗部でしょう? 顔見せていいんですか? って。 すぐ慣れたけどな。
暗部の面を頭の後ろに回し、口布つきアンダーを下げて顎の下でひっかけて食べる。 ・・・・ん?
これの何が可愛いかって? だって後ろ前逆なんだよ。 モグモグしてるから頭の後ろの面が揺れる。
俺、後ろから見てみた事あるんだ。 面がな? ちっちゃく左右上下に揺れると呟きみたいなんだ。
音のするモンを食べてた時に思ったんだ。 で、お願いして後ろに回って観察させてもらったら。
『コリコリ・・・ ポリポリ・・・・ シャリシャリ・・・・』なんか面がボソボソ言ってるみたいだった!
動物面だしな、なんか妙に可愛いんだよ。 思わず、面の頬っぺたを触ってみたり、額を撫でたり。
まあ、その度に“今触ったネ?”“今撫でたね?”って言われたけど、優しい二人は怒らなかった。