古今東西のセオリー 3
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「・・・・・・ナ〜ニ? 海野中忍なんかモノ言いたげな視線、だネ?」
「・・・・・・アレですよさっきの。 先輩方の態度ですよ、きっと。」
「いえ、暗部が食事をとりに来たのって・・・ 始めてだなー と・・・・・」
「・・・・・先輩達っておバカだよネー? こんなに美味しいのにサ!」
「ほんと、おバカですよ。 里の仲間が一生懸命作ってくれたのに!」
「・・・・・ぶっ! 暗部の先輩にそんな事言っちゃ、駄目で・・・・す! ぷっ、あははは!」
食べてくれて、美味しいって言ってもらえて・・・・ それだけでも信じられないぐらいだったのに。
なんと暗部の見習いの二人は、事もあろうに先輩を “おバカ” 呼ばわり。 あり得ない!!
だって、暗部の上下関係はめちゃくちゃ厳しいって聞いた。 部隊を束ねる長には絶対服従なんだって。
なのに・・・ こんな会話いいんですか? あははは! “おバカ” を連呼しないで下さいよ、もう!
「「わー 海野中忍って、表情がくるくる変わって可愛い!」」
「可愛いって・・・くす! 実は名前はもっと可愛いかったりして。 “イルカ”なんですよ?」
「「おー ほんとだ、名前も可愛いっ!!」」
「あははは!! 名前と顔がマッチしないって、いつも言われます! ふふふ!」」
「「いや、ピッタリ! 海で泳いでるイルカと一緒!」」
「え? それって、超音波で会話する不思議ちゃん、って事ですか??」
「アハハ! 違うヨ、モウッ! イルカって人懐っこいでショ? 同じー!」
「それより上かも? だって懐くだけじゃなくて、ご飯も作ってくれるし!」
「うわ、嬉しいっ! あのイルカに勝ったのはハジメテだっ! へへへ!」
「「くすくす! うん、人間のイルカの勝ちv」」
ほんと吃驚。 こんなに気さくな暗部がいるなんて。 ・・・・正確には、まだ隊員見習いらしいけど。
隊員の見習いでも、暗部に入隊した忍びなのに。 きっと凄く強い忍び達なんだろうと想像できる。
なのに、俺の料理を食べてくれて、俺の緊張をほぐす為に笑わせてくれて。 今、俺・・・ 猛烈感動中。
これからはイルカって呼んじゃおーっと! そう言って、めちゃくちゃフレンドリーに接してくれた。
そんなフレンドリーな暗部見習いの二人が、自分達の事をスケさん・カクさんと名乗ったから吹き出した。
絶対違う名前だと思うけど、暗部の面と同じで、名前も公に出来ないんだろうな。 ・・・・ぷくくく!
なんでスケさんとカクさん?! まさかあの番組からパクッたの?! あははは! もう最高!!
『火の漫遊記』という一時間モノのTVドラマで、主人公は元火の国の有名な大名というご老人。
その主人公のお爺ちゃんのお付きの者が、スケさんとカクさんっていう、超強い忍び二人組なんだ。
家督を子に譲った後、身分をちりめん問屋と偽り、三人で火の国を放浪。 悪を成敗して回るお話。
嘘か誠かご老人にはモデルがいて、それは火の国でも国主の信頼厚い、肇ユウダイ様・・・・ らしいよ?
「あははは!! なんですかそれ! 俺、小さい頃からあのドラマ大好きなんですよ!」
「フフフ。 じゃ、これからスケさんと呼んでネ?」
「ふふふ。 じゃぁ、ボクの事は、カクさん、と。」
「その度に吹き出さなきゃいいけど・・・・ くす!」
「「スケさんとカクさん、だからね? ヨロシクvv」」
「はい、スケさん、カクさ・・・・・ んぶぶぶっ!! あはははは!!」
「「くすくすくす!」」
ラスト15分前位になったら、必ずお爺ちゃんの正体を明かすんだよ。 ワシが証人じゃ! みたいな。
『控えおろう! このお方をどなたと心得る! 先の大名様なるぞ! 頭が高い! 控えおろうっ!』
んで、スケさんかカクさんが家紋の入った印籠を懐から取り出すんだ。 コレが目に入らぬか! って。
シラを切ってた奴らは逆切れして突っ込んで来て、忍びのスケさんとカクさんに成敗されるんだよ。
火の国でも稀に見る長寿番組。 老若男女問わず人気が高い。 でも皆、必ず一度は言うんだ。
『最初に印籠出せよ!!』って。 お爺ちゃん役の俳優さんは、三代目にちょっと似てる。
だからって訳じゃないけど、俺は小さい頃から“火の漫遊記”が大好きだった。 もちろん今も。
テレビの前で火の漫遊記を見てた時、俺の両親はその三人を火影と暗部に例えてくれたんだよ。
大名様が火影で、スケさんとカクさんが暗部の部隊長と補佐だと思え、カッコいいだろ? って。
俺が暗部に夢を持ってたのも、そういうのが関係してるかもしれない。 勝手に弱者の味方だと思って。
本物の暗部にしたら、イイ迷惑だよ。 TV番組や中忍の理想をおしつけられちゃ、たまったもんじゃない。
「そうだ、イルカ。 さっき先輩に言ってたけど・・・ 好きな食材持って来ていいの?」
「ええ。 里から食材を持ってきてますが、なんでも食べたい物を持って来て下さい。」
「とってもスタミナつけたい気分。 肉なんか持って来ても・・・ さばける?」
「おー いいですね! 皆喜びますよ! 戦場は体力勝負ですからね、肉大歓迎!!」
「「よっし! 決まりっっ!!」」
次の日、暗部の自称スケさんとカクさんは、本当に大量の肉を差し入れてくれた。 カジキ隊の皆に、って。
しかもちゃんと血抜きまでしてあるヤツ、マメだ。 自分達だけが食べたいから、じゃなかったんだ。
当然だけど即活用。 バーベキューやらなにやら、バッチリ肉を使ったスタミナ料理を皆に提供出来た。
めちゃくちゃ好評だったな・・・。 食材が豊富にあるって凄い! 皆が喜んで食ってくれるのが幸せ。
隊の全員の事を考えて差し入れしてくれたんだ。 こんな暗部もいるんだと、本当に嬉しくなった。