古今東西のセオリー 7   @AB CDE GHI JKL M




・・・・・はぁ。 あの時以来、カジキ上忍は俺を見る度に、親指を立ててエールを送ってくれるんだ。
ぎこちない笑いで返しても全然不自然じゃない、そんな俺の秘めたる恋心に喝を入れてるつもりらしい。
なんだかなぁ。 確かにどんな嘘でもつき通してやる! って誓ったけど、もうちょっとマシな・・・・

「・・・・・・・・ふぅ。」
「「ため息?! どうしたの、何か悩み事?!」」
「?! あ、いや。 つい、この前の事を思い出して・・・・ 俺って馬鹿だな、って・・・・」

「イルカは馬鹿じゃないよ? 馬鹿なのはアイツらだ。」
「ウンウン、イルカはネ、オレ達を照らしてくれたヨ。」
「スケさん、カクさん・・・・。 里の中でそんな事口走っちゃ駄目です!」
「「そうだった、ごめんごめん!」」

ふふ! ヘンテコな事情を抱えちゃったけど、そんなのは聞いたカジキ上忍と俺の間で発生するだけで。
他には何の問題もない。 こうやって二人が元気な姿で、この前と変わりなく話しかけてくれてるんだ。
もうそれだけで嬉しい。 戦忍達の様に実力がずば抜けてる訳じゃないけど、俺も役に立ってるんだよ。
俺より遥かに強いだろう二人を、つまらない理由で殺させはしない。 これって里に貢献してるよな?

へへ、なんか料理作ってる時もそうだけど、そういう忍び達の為に何かをするって・・・・ 誇らしい。
これが誰かの最後に口にする食い物になるかもしれない、そう思ったら給仕にも力が入る、ってもんだ。
戦場では皆の体の元になる食事を提供できる喜び、今また、二人の暗部が元気でいてくれる喜び。

俺はいつでも仲間と一緒に逝く覚悟は出来てる。 そんなの額当てをもらった時から当然出来てるよ。
例え戦場で背中を守れなくても、自分が任務に就いた先の隊に、もし何かあったら迷わず一緒に逝く!
俺自身があの世へ逝って、父ちゃんと母ちゃんに、今迄こんなに木の葉の仲間の役に立ったよ、って。
いつでも死んだ両親に自慢できる俺でいたい。 まあ・・・・・ 多少の軽率な発言は否めないけどな。

だからこうやって。 俺の理想を具現化してる二人が生きててくれて。 めちゃくちゃ嬉しい。
この二人が生き続けてこのままで上まで上り詰めたとしたら・・・・ きっと暗部は変わるんじゃないかな。
その時に俺がまだ同じ様に生きてたら、三代目に言うんだ。 “さすが火影様の直轄部隊ですね!”って。




「「ところでイルカはどこ行くの??」」
「あ! そうそう、三代目にお弁当を差し入れに行こうかと・・・・・。」
「「おー イルカ飯だ!」」
「ぷっ! なんですか、イルカ飯って!! もう! ほんとお二人は・・・・・ くすくす!」

「イルカが作るご飯だから・・・ イルカ飯ですよ!」
「あははは! 俺が入ってる食い物みたいじゃないですか! ふふふ!!」
「イルカが入ってたら、もれなく買い占めちゃうヨ?」
「あはははは!!」

ほんと気さく。 暗部の隊員だなんて思えない。 あー まあ、見習い、だけど。 先輩の隊員を殺した。
いくら新人だからと油断してても、正式な暗部の隊員を殺したんだ。 そんじょそこらの腕じゃない。
だから。 俺ヘンな確信がある。 きっとこの二人はこの先、暗部の組織を変える様な大物になる、って。
あの時の同胞殺しは、動揺も何もなかった。 俺が追いかけて行ってそれを見つけた時も、静かだった。

三代目、火の意志を失わず本当の実力がある忍びって・・・・ こういう人達の事じゃないでしょうか。
だって三代目がそうじゃないですか。 ただのスケベ爺のフリして、大陸のどの影より抜きん出てる。
火の漫遊記の主人公のご老公様とお付きの忍び二人。 三代目とこの二人にそんな理想を投影しちゃうよ。

「お二人も火影室に?」
「「うん。」」
「じゃあ、一緒に・・・・ えー コホン!“まいりましょうか、スケさん、カクさん”」
「「あははは! “はーい、ご老公様っvv”」」

「もう! スケさんとカクさんはもっと厳格ですよ?! くすくす!!」
「「ふふふ!」」

うん。 この二人は・・・・ 暗部を変えてくれる人達だ。 両親に聞いた話が現実になる日がきっと来る!
・・・・・・・・・・?? あれは・・・・ カジキ上忍?? げっ!! 見つかったっ!! 目が合った!
俺達が火影室の扉を叩く前に、火影室に入ろうとしている忍びがいた。 まぎれもない、あれはカジキ上忍。




うわー なんか・・・・ 余計な誤解をさせてないか、俺。 鳩が豆鉄砲食らった様な・・・・ あの顔。
仲良く三人で火影室に向かってる俺達を見たら・・・・ 間違いなくカジキ上忍なら誤解するよな・・・・・
俺の誰にも言えない秘めた恋心を知ってる・・・・ と思ってもらってるから。 う〜ん、何気にピンチ?
ヘンな事口走らなきゃいいけど・・・・。 ・・・・俺の抱えた弁当を見て・・・“ニヤリ”と笑った。

“その弁当はアレか、二人への差し入れか? しっかり餌付けしろよ? ファイトだ海野!”みたいな。
今きっと、頭脳派のカジキ上忍の頭の中では、色々な憶測がなされている。 あのニヤリ笑いはそうだ。
スケさんとカクさんは、あのニヤリ笑いを見ても、多分何にも感じないだろうけど。 かなりピンチ。