古今東西のセオリー 13   @AB CDE FGH IJK M




痛い。 今、もの凄く胸が痛い。 任務中、二人は・・・・・ スケさんとカクさんは言ってた。
“おバカな先輩達”だって。 何度も連発してた。 部下の変化に気付けなかった自分を責めてたんだ。
自分の目で、皆殺しを正当化してる部下を・・・・ 堕ちてしまった部下を見た時の気持ちは・・・・・

きっと彼らと共に何度も戦って来たはずだ。 少数で現場に向かわせるほど信頼もして来たはず。
一体・・・・ どんな気持ちで自分の部下の首を斬り落としたのか。 おバカだと言った心の裏で。
何度そうやって部下を処刑してきたんだろう。 暗部内だけじゃなく、堕ちてしまった同胞の忍びを。

・・・・カカシさん。 テンゾウさん。 一瞬でも木の葉の同胞の死を喜んで・・・ ごめんなさい。
こんな強い人達はいません。 だって俺、本当にそう思いましたから。 二人が組織を変えるって。
変えるどころか、お二人が暗部を象徴する存在だったんですね、最初から。 理想、それ以上だった。





「実際のスケさんとカクさんは・・・・・ 本当にカッコいいや。 まいったな・・・・・ ぐす・・・・」
「ははは! ますます惚れ直しただろ? ・・・・・って。 おいこら、泣くな。 自信持て。 な?」
「・・・・カジキ上忍、迷惑過ぎるほど面倒見良すぎ。 ・・・・・・でか、イイ男過ぎ。 クスン。」
「おい、海野。 ・・・・けなしてんのか褒めてんのかどっちだ?」

それはもちろん褒めてるんですよ。 そして感謝してます、こんな情報を聞かせてくれたカジキ上忍に。
あれ以降嫌な話は聞かなくなった、嫌な現場を見る事がなくなった、自然とそうなるはずだったんでしょう?
数ヵ月後、俺も気付いたかもしれない。 暗部はやっぱり火の意志を失わない精鋭の集まりだった、って。
三代目や一部の上忍しか知り得なかっただろう真実と計略。 今、聞かせてくれてありがとうございます。

たかだか急にイタイ乙女になった中忍ごときの恋の為に、だ。 だってカジキ上忍は知っていたはず。
俺が暗部隊員の死体を目にした事を。 カカシさんとテンゾウさんに、後から聞いたはずだろう。
なのに顔を見る度、親指立ての応援エールやアドバイスを。 きっと俺が尻ごみすると思ったからだ。

こうやって全部を聞かせてくれたのは、本当に、ただ純粋に・・・・ 俺の為を思っての事なんですね。
隊員の処刑を目の当たりにして、やっぱり自分なんかが恐れ多いだろうと、諦めるかもしれないと。
でもそうやって、そうまでして部下の恋を応援してくれたのはどうしてですか? おかしいでしょう。
そんなに恋焦がれて見えましたか、俺? 二人の・・・・ しかも同じ男に、ですよ? 同時に。

「俺・・・・ そんなに・・・・ ぅぅ・・・ 恋する乙女でした? ずず・・・」
「ああ、なんか二人の為ならどうなってもいい! みたいなオーラが・・・・ な?」
「「・・・・・・・・・イルカ、情熱的vv」」
「・・・・飯といい、さっきからのその態度。 まさかお二人は・・・・・」

「ウン、知ってたヨ。 カジキ上忍から聞いてたからネv」
「海野中忍を嫌わないでやって下さい! って。 ふふv」
「ふむ、あのイルカが恋しとるなんぞ・・・・・ ワシもこの目で見るまで信じられんかったが。」
「あそこまで思いつめてたらさすがに・・・・・ 可哀想になって・・・ ははは!」

「・・・・・・・・・・・・・・ひょっとして、俺、好かれてたりします? そういう意味で。」
「「イルカなら大歓迎だからvv」」
「な? だから自信持て、って言ったろ? はははは!」
「ほほほほ、イルカや。 良かったの? うむうむ。」

・・・・・・おかしいと思ったよ。 ただのお節介じゃなく、勝算があったからか・・・・・。
さぞウジウジしてる俺にイライラしたでしょうね。 さっさと告白でもなんでもしろ! って。
二人の反応が良かったからだ。 カジキ上忍なら、二人の反応が悪かったらそれこそ・・・・・
馬鹿な夢見て恋する乙女の俺を傷付けない様に、やんわりと諦める方向に誘導しただろうな・・・・・。

だって実際に二人の為なら、沈黙して秘密を墓場まで持って行く覚悟をしてた。 それは何の為だ?
確かに両親に聞かせてもらった暗部像になるかもと・・・・ 理想を二人に投影したのもあるけど。
しどろもどろになって出た言い訳が“二人が好き”だった。 すんなりと口に出たのはなんでだ?

・・・・・・・俺。 自分でも恋なんだか尊敬なんだか憧れなんだか・・・・・ 分かんなくなってる。
今泣くぐらい、暗部の真実を知って嬉しい。 二人の決断の重みを感じて、もの凄く胸が痛かった。
これは・・・・・ 俺のこの気持ちは・・・・・ ?? 心の痛みと涙の意味は?? まいった、これは恋だ。
俺は自分で気付かなかっただけで・・・・ 本当に二人に恋してたんだ。 スケさんとカクさんに。