古今東西のセオリー 8
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なんか先客みたいですね、俺、少し間を置いて入りますよ、お先にどうぞ。 いや、あの・・・・・
だって、ほら。 俺は三代目にコレ、届けるだけですから! いつでもいいんですよ。 ね? あー
あっ! そうだ! このお弁当、お二人から三代目に手渡して頂けます? イルカからです、って。
ナイス俺!! カジキ上忍は完璧に誤解してるだろうから、ここで三代目のお弁当を二人に渡す!
俺が弁当を二人に押し付けて走り去ったら、あの無駄に良い脳ミソは、きっとこう思うに違いない!
“男は腹から落ちると教えたおれの後押しが効いたな! やったな海野、グッジョブだ!”ってな。
よし、近付いた! 思い切って照れながら渡すんだ俺! 今のこの距離ならそう思ってくれるぞ!!
「・・・・・う、受け取って下さいっ!!」
「「うん、OK!」」
「じゃ・・・・・ 俺、これで。 ま、また!」
「「・・・・・・・・・。」」
男の俺がしても可愛くねーよ! な、照れ上目使いな目線GO! 顔を赤らめ小走りに下を向きつつ去る!
うん、完璧!! 俺の予想では、カジキ上忍は階級差から、暗部の二人に対して先に入室を促すはず。
廊下の角を曲がり、そっとその角の陰から火影室の扉の前の様子を窺ってみる。 どれどれ・・・・・
・・・・・・・・ぁ。 カジキ上忍とまた目が合った・・・・ やっぱり先にお通ししたんですね?
・・・・またもやあのニヤリ笑い。 はいそうです、やってみましたよ、男は腹から落ちる作戦のフリを。
いつもの片手だけの親指立てのエールじゃない。 今回は両手の親指を立ててる。 ダブルエールだ。
取り合えず俺もちっちゃく親指立てといた。 多分・・・・ なんとか誤魔化せただろう。
スケさんとカクさんがこの前の殉職した暗部の死に関わってるなんて事、絶対に知られちゃ駄目だ。
そんな事カジキ上忍や三代目に疑われるぐらいなら、二人の男に思いを寄せるイタイ中忍のままでいい。
そうだよ、あの人の中でだけ謎な展開になってるんだから。 そのうち、フラれちゃった事にすればいい。
カジキ上忍・・・ 何気に喜んでる、っぽかったな。 人の恋路とか気にするタイプだったなんて。
頼りになって頭の回転が速くて人間味あふれてて愛妻家・・・・ おまけに部下の面倒見もいい。
あまりに尊敬する材料があり過ぎて、騙してる俺がめちゃめちゃ悪い事してるみたいな気になって来た。
・・・・・とっとと失恋話でもして、慰めてもらおう。 なんか、無性に良心が痛むよ、俺・・・・。
うん、それがいい。 男は守備範囲外なんだそうです、穴兄弟になるのは勘弁だって言われました、とか。
・・・・・・・?? ちょっと待て、ソレじゃいくらなんでもヒトデナシな断り方過ぎるだろ?!
スケさんとカクさんのイメージが悪くなるじゃないか! 暗部は断り方までも最低野郎か、みたいな。
カジキ上忍は俺なんかよりもずっと、暗部と一緒の任務が多いんだ。 ますます暗部を嫌悪するだろう。
あ。 でも任務中は私的感情を完全に別物として切り離してるし、関係ない・・・・ かな??
う〜ん。 でもそんな事であの二人に先入観を持たれても嫌だな。 ほんとは気さくないい人達だし。
でもなぁ。 こんなイタイ中忍が、スッパリ恋心を諦めるような失恋をしなくちゃならないからなぁ。
「何を落ち込んでるんだ?」
「ええ、実はですね・・・・・ ヒトデナシな断り方ばかり・・・・・」
「はぁ?! なんだとぉ?!」
「へ? §☆ΞΦζΘ!!?! カ・・・・ カジキ上忍っ?! なんでぇっ?!」
「そりゃ、お前。 悶々とした気配がしてたら気になるだろうが。」
「・・・・・・・・・。 俺・・・・ 何を口走ってました??」
「ヒトデナシな断り方をされたんだろ? 二人ともに。」
「・・・・・・・・・・・ぁーーーー ぅーーー ・・・・。」
・・・最悪。 まあ、まだ廊下の曲がり角の陰でしゃがんでたら・・・・・・ 様子を見に来るか。
・・・・・・てか。 ご自分の用事はどうしたんですか?! 火影室に用事があるんでしょう?!
もうカジキ上忍、面倒見良すぎです! 二人の男に片思いのイタイ中忍なんかほっときゃいいのにっ!!
このままじゃ暗部は、というかスケさんとカクさんが確実にヒトデナシだって事になる?! 駄目だ!
「そ、想像したら・・・・ あー か、悲しい断り方ばかりされてる俺とか。 その、ほら・・・」
「・・・・・・恋は盲目だな。 持ち前の根性はどうした、海野中忍?」
「ははは・・・ あ・・・当たって砕けちゃう想像ばっかしちゃって・・・・ あははは・・・・」
「ふぅ! こういうのはおれの性にあわないんだけどな? ・・・ついてこい。」
どこへ?? ・・・ちゃんと見えたかな、告白後にコテンパンにフラれる想像してるイタイ男な感じに。
カジキ上忍はついてこいと俺に言った。 スタスタと・・・・ 火影室へ・・・・ は?! ナゼに?!
その中にはスケさんとカクさんがいて、更に三代目までいるんですよ? アンタ、何しに行くつもり?!
超尊敬してるカジキ上忍に向かって、思わずアンタ呼ばわりしちゃったよ、俺。 心の中で、だけど。
ひぃ〜 意外に人の恋路に首を突っ込むタイプだったらきっと・・・・ いや。 俺でもそうするか。
こんなウジウジしてるヤツが側にいたら、さっさとスッキリしちまえ! ってなるだろう。 はは・・・
予想通り、カジキ上忍は火影室の中へ。 ・・・・来い来い、と俺を手招きしてる。 俺、最大級のピンチかも。