古今東西のセオリー 11   @AB CDE FGH IKL M




けど投降してきた敵方が木の葉を計略にかける事は稀。 俺は運悪く・・・・ いや、それも現実だけど。
俺は暗部の戦い方に失望した。 実際に敵が裏切った時の報復措置を一番最初に見てしまったから。
自分勝手に理想を押し付けといて、自分の中で勝手に完結させて失望してただけだったんだ。

でもその後に何度か見た敵方の死体は、自分でも気付かないうちに道を誤った暗部達の仕業だった。
そういう裏切りで報復措置も実際にあるけど、ほとんどが対面約束を守る他里の忍び達、それなのに。
任務で最上の解決策は皆殺しである、それが三代目の本意だと誤解してしまった隊員達の起こした殺戮。
道理を失っても気付かず己が下すは正義だと信じてる。 “里を守る事に繋がる” そう思考がすり替えるから。

俺達 忍びが道理を失ってもどこかで気がつき、自分で正す。 それすら出来ない程に堕ちてしまったら?
しかもそれが本来なら・・・・ 正規の忍びがそうなった時に・・・・ 処刑する側の者であったなら?
暗部隊員と言えど堕ちてしまった忍びの処刑は、やはり暗部。 組織の長である二人の義務だそうだ。

カジキ隊長のもう一つの任務はその暗部達を試す事。 実際に敵忍と交渉を続けながら、その戦場で。
俺が給仕担当で行った、あの後方支援任務だ。 そして問題の暗部は組織の長達によって処刑されたらしい。
本人達でさえ、自分達が道を間違ったとは思っていなかっただろう、火影様の意思で動いているのだと。
木の葉を思っての行動、なのになぜ自分達が処分対象なのか、きっと死に際まで気付かなかっただろう。





「スケさん・・・・・ カクさん・・・・・ お二人の本当の名前は・・・・・・」
「スケさんこと、部隊長のカカシだヨ。 フフフv」
「カクさんこと、補佐のテンゾウです。 ふふふv」

ちょっと待った、すると何か? スケさんとカクさんが殺した暗部の隊員二人というのが・・・・ ??
同胞殺しでもなんでもなくて任務? いや、同胞殺しには違いない、自分達の信頼してた部下なんだし。
・・・・・でも。 そうか。 そうだよな・・・・・ 最初から部下を処刑するつもりで来たわけじゃない。
その為にカジキ隊長が同じような状況を作って試したんだから。 実際の状況下でないと暗部を謀れない。

なんか、今更だけど。 そういえば思い当たる事ばっかりだ。 俺以外に二人の存在を知らなかった。
先輩達には内緒でと言って食べに来たけど、隊の誰もいない時に、だ。 なのにカジキ隊長は知ってた。
血臭がしたからそう思ったけど、実際に戦っている場面を見た訳じゃない。 終始、部下を見極めてたのか。

「スケさん? カクさん? こりゃ、イルカ! お主、まだ火の漫遊記にかぶれておるのか!」
「ははは! あー だから暗部の長達が、スケさんカクさんだったのか・・・・ なるほどな。」
「ふむ、イルカは昔から火の漫遊記ファンじゃ、ワシなど、何度ご老公と呼ばれた事か。 ほほほ!」
「まあ、理想がそこにいれば・・・・ 急に恋する乙女になっても仕方がない、か。」

へ? ・・・・・いや、逆です。 逆だからそれ。 そこのお偉いさん達が、そう名乗ったんですよ。
それに暗部の長達だって知らなかった。 自分達は見習いだって言ってた。 俺ガッチリ信じてたぞ?!
・・・・っていうか、カジキ隊長も三代目も。 俺が火の漫遊記ファンだから、そんな事で納得する?
あんな似合わないキラキラやウルウルのお目目をしてても?! 恋は盲目、恋する乙女、で済むの?!

俺の中では、絶対にあり得ない設定だった。 だからこそ謎な事を口走っても怪しまれないか、と。
バレそうになっても、こいつイタイな・・・・ 的な引く感じで、放置の可能性が大だから、って。
いや、でも実際は。 カジキ隊長はそんなイタイ人物にでも理解を示し、あまつさえ応援する態度で・・・・





・・・・・策士策に溺れる? いや、違うな。 これは・・・・ アレだ。 自業自得、ってヤツだ。
自分の理想を絵に描いた様な暗部の組織にしてもらいたいから、って。 一瞬でも同胞の死を喜んだ罰だ。
堕ちたくて堕ちた訳じゃない。 スケさんとカクさんも、カジキ上忍も、処刑が目的じゃなかった。
ギリギリまで信じてたんだ、最後の最後まで。 だって暗部の隊員達だぞ? それを・・・・・ ん?

「・・・・・あれ? 実際に現場を使って・・・・ 敵忍を使って試したんですよね?」
「ああ。 堕ちたとはいえ二人とも暗部の隊員だからな。 下手な計略ではすぐにバレる。」
「でもさっきカジキ隊長は“裏の裏”って・・・・ 言ってませんでした? 何が・・・・」
「お! そういう所はちゃんと聞いてたか! うんうん。」

「ほほほ。 投降交渉が長引いておると聞いておったからの。 ワシも騙されたワイ。」
「オレ達も到着してから聞かされたんだーヨ。 既に敵方と話がついてたコトをネ?」
「おかしいと思ったんですよ、いきなり“一杯食って体力つけといて下さい”って。」
「・・・・・・・えっと。 結果的にはどうなんですか?? 敵方の死者は・・・??」

「敵方の死者はナシ、だ。 援助金を依頼主に打ち切られて早々、戦意は無くなってた。」
「俺が給仕担当でいた後方支援部隊は・・・・ 最初から・・・・・ ??」
「暗部に応援を要請する為と、文字通り食って力をつけさせる為だ、チャクラ消費が見込まれたからな。」
「・・・・・・・・・敵を騙すには味方から、ってヤツですか? まあ、この場合は同胞だけど。」

暗部隊員の処刑を殉職という形にしました、なんて。 そんな情報は俺が知らなくてもいい事なのに。
カジキ上忍は俺の恋に臆病な態度を見かねて、わざわざ任務の詳細を話して聞かせてくれているのか・・・・。
お前の惚れた男達はこんなに凄いんだぞ? ウジウジと乙女になってる場合か! 攻めろ海野! って。
その男前な発想はいかにもカジキ上忍らしいと思いますが。  ・・・あの。 大きなお世話です。