古今東西のセオリー 6   @AB CDF GHI JKL M




里に帰還し、カジキ隊長の解散の号令の合図で、皆それぞれの生活に戻る。 俺もいつもの中忍生活に。
あまった食材で何か作って、三代目に差し入れでもしようかな・・・・ とか、のん気に考えてた。
カジキ上忍が俺を呼び止めるまで。 海野中忍、報告書を提出してくるから待ってろ、話がある、と。
・・・・・・俺の隠している何かを探る様な眼だった。 もしかして・・・・ カジキ上忍は気付いた?!

その場にまだ何人かいて、俺が名指しされてたのを聞いてる。 “聞こえませんでした”は通用しない。
このまま無視して家に帰る訳にも行かず、どうしようどうしょうと、考えが纏まらないまま俺は待ってた。
でも何を言われても、二人の事を話す気はない。 カジキ上忍がどんなに人間味のある忍びだとしても!

男と男の約束。 それこそ、カジキ上忍が戦場でした隊長同士の約束に匹敵するぐらいの価値があるんだ。
・・・・・・と、全然レベルが違うのに、心の中で決意を新たにしてる俺。 言い聞かせるしかない。
仲間の死を一瞬でも喜んだ自分への後ろめたさと、あの二人を守る為ならどんな嘘でもつくという思い。
自分のこれからの行動を正当化するには、言い聞かせるしかないんだ、自分自身に。 沈黙は金なり、だ!





「待たせたな、海野中忍。」
「・・・いえ。 お話。 とは。 何でしょう。 か。 俺に。」
「・・・・・・ぶはっ! なんだ、おい。 そんなブツ切りに・・・・ はははは!」
「・・・・・・・・・。」

・・・・・う。 何も話すもんか! って力が入り過ぎてる。 もっと普通に話さないと駄目じゃないか俺!
でもカジキ上忍は・・・・ 暗部二人に生意気な口を聞いたあの時みたいに・・・・ 怒ってない。
ひょっとしたら、カジキ上忍は全部気付いたかもしれない。 四人いた暗部の内、二人が死んだ事を。
でも俺が話してしまったら、聞いたカジキ上忍は上へ報告しなくちゃならない。 それは絶対駄目だ。

「・・・・・おれに話す事は何もない、そう言いたげな顔だな?」
「はい。 ・・・・・・ごめんなさい。」
「・・・謝るのか? 何か悪い事を隠してると・・・・ 思っていいという事か。」
「悪くないです!! 謝りません!! 訂正します、ごめんなさいはナシですっ!」

ひー!! カジキ上忍はこう見えて計略家なんだ。 このままじゃ俺、確実に喋らされちゃう!!
何か・・・・・・ 何かカジキ上忍の気を反らせる言い訳は・・・・・ 考えろ、考えるんだ俺!!
スケさんとカクさんに誓っただろう? カジキ上忍に仲間を売る嫌な事実を報告させちゃ駄目だ!
ついさっき、二人を守る為ならどんな嘘でもついてやると、自分に言い聞かせたばかりじゃないか!!

「・・・・・そういや食事をとりに来てた暗部二人と仲良かったな、お前。」
「カジキ上忍っ?! 知ってたんですか?! スケさんとカクさんを!!」
「ほー。 スケさんと・・・ カクさん・・・・・ ね。」
「・・・・・・・・ぁ。」

俺って・・・・・ 最低〜! またやっちゃったよ・・・・・。 カジキ上忍の誘導尋問はさすがだ・・・・。
罪悪感を払拭して安心させておいてから聞き出すなんて。 てか、俺が馬鹿すぎ。 里の中忍なのに!
相手は意外に計略が得意だと言われてるカジキ上忍。 仕方ないよな、誘導されちゃっても仕方ないよな??
マズイ、確実にこのままじゃ俺、 墓穴掘っちゃう。 なんとかしないと・・・ うぅ、何か・・・・・

「なんとか・・・・ なんとかしないと・・・・・」
「・・・おお、何をだ?」
「な、なんとか好きになってもらいたかったんですっ! 俺っっ!!! 二人にっ!!!!」
「・・・・・・・・・・はあ?」
「「・・・・・・・・・・・・。」」

何言ってんだよ俺。 カ、カジキ上忍の誘導に引っ掛かるまいとして、とんでもない事を口走ったぞ?!
なんとかしないと、と思って・・・ それで・・・・ なんで好きになってもらうんだ?! 俺、馬鹿?!
どう繋がるんだよ、ソレとコレと! いや、ちょっとは思ったんだ、俺。 カジキ上忍もきっと、って。

あの二人と話したら、きっと暗部に対して見方が変わる、好感を持ってくれる、好きになってくれるかも。
そう思ったら・・・・・ つい・・・・ いや、待てよ? でもこれって・・・・ いい理由じゃないか?!
俺が何か隠してると思ってるカジキ上忍。 それは胸に秘めた恋心だった、しかも二人の男相手に、だ。
・・・あり得ない、絶対にあり得ないぞ! うん、イケる!! これなら話せなかったのも不自然じゃない!

「・・・・絶対に言わないで下さいね。 俺・・・・ あの二人を同時に好きになっちゃったんですっ!!」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」

「あー・・・・・まあ、あれだ。 最初から諦めるな。 根性あるとこみせたろ? 当たって砕けろ、だ。」
「・・・・・・・えっと・・・・ その。 はい、頑張ります・・・・・。」
「「・・・・・・・・・・・。」」

よし! これでいい。 ふぅ、危なかった・・・・ 俺の軽率な発言が、二人を窮地に追い込む所だったよ。
二人の暗部に片思いしてるイタイ中忍。 そんな俺の肩書きなんてどうでもいい、二人の為なら屁でもない。
尊敬するカジキ上忍にそう思われても、俺は全然、そんなの、何にも・・・・ 気にしないからなっ!
・・・・これも自分に言い聞かせるしかない。 二人の為だ、あとカジキ上忍の! ・・・・くそぉっ!!