心にいつも太陽を 1   ABC DEF GHI JKL M




チャクラ質を持ってるからって、誰でも忍びになれるとは限らない。 まずは忍者アカデミーに入学。
その忍者アカデミーを卒業出来なければ、下忍になるチャンスすら与えられないのだから。
卒業試験はその年ごとによって違うが、だいたい変化の術か代わり身の術、分身の術のどれかだ。
それから担当上忍師が下忍認定試験を実施し、その試験に合格できなければ、アカデミーに戻される。

「うみの中忍、いや、今はイルカ先生か・・・・ 頼んでいいか?」
「どっちでも。 なんですか、お伺いなんか立てちゃって!」
「・・・・あー その、な、いつも感心してるんだ。」
「ヤメテ下さい、潜入は俺の任務なんですから。」

下忍・中忍・特別上忍と段階を踏んで、上忍になる。 けれど、生涯 下忍のままでいる忍びも多い。
家族の為に、と生活の安定を求めて。 階級によって、任務の難易度がランク付けされてるから。
ランクが上がる毎に、死の危険性も増す。 家庭を持ち維持する事は、里の人口増加に繋がる。
減ってばかりじゃ、いつか里は滅んでしまうだろ? それだって立派な生き方だと、俺は思うよ。

また、そういう忍びが多くいるから、何でもない小さな依頼を多数こなせる。 薄利多売の収入源だ。
けれど残念ながら、そういう事をわかってない忍びも多くいる事は確かだ。 悪気はないんだろうが。
自分が命を懸けた危険な任務をこなしたから、里の収入が増えたんだ、とか。 そんな事は絶対にない。

ひとりの上忍がその任務をこなしている間、多くの下忍が小さい任務を何百回もこなしている。
だから里の収益で考えるなら、トントンなんだ。 持ちつ持たれつ、要望に応じる人数が必要不可欠。
まさか上忍に子守りをさせる訳にはいかないし、下忍に暗殺任務をさせる訳にもいかないだろ?
木の葉隠れには、たくさんの忍びがいて、皆それぞれが自分の役割をこなしてる。 適材適所なんだ。

「・・・・・ああ。 うみの中忍の潜入はピカイチだ。」
「もう!! 気持ち悪いですよ?! いつもの緒方〈オガタ〉上忍らしくありません!」
「・・・・・・・ははは、そうだな。 コホン。 潜入協力の要請をする、コレだ。」
「はい、喜んで。 ・・・・・今日の夜中ですね、了解です!」

俺を訪ねて来てくれた、この人は緒方上忍。 ちゃんと里の仕組みをわかっている、立派な人だ。
わざわざ俺のいるアカデミーまで来て、門の外で待機していた。 出てくるのを待ってくれてたんだ。
あ、緒方さんだ、ってわかったから職員室から抜けて来た。 俺に要請する、任務協力だと思ったから。
緒方さんとは何度も組んだ。 俺が組むのは、そういう個々の役割を知ってる人、と決めてるから。

「出発は丑の刻半。 ・・・・あー 出来れば、羽多宵〈うたよい〉で協力してほしい。」
「あはは、珍しい。 人物指定ですか?! ・・・・このターゲットですよ? 当然です。」
「あうんの門で。       ・・・・・すまんな。」
「・・・??」

俺は中忍 忍者アカデミーの教員だ。 教員にはなりたてのホヤホヤだが、潜入員としては長い。
下忍になってからずっと、だから。 俺の上忍師は、というか師匠はくのいち。 葵〈あおい〉ユキジ先生。
里にどうしても潜入員が欲しいから、って。 下忍認定試験を受けるか選んでいいよ、って言われた。
俺と同じく、九尾孤児のくのいち二人。 俺達のスリーマンセルの下忍認定試験は、房術の訓練だった。

『九尾襲来で、優秀な潜入員が何人も死んだわ。 これから里の肥しとなる人員を探しているの。』
『あの・・・・ 質問っ!! 房術って・・・・ なんですか?』
『バカイルカ! ・・・・・って、仕方ないか、イルカ男だもんね。』
『房術って言うのは、自分の体を使って相手を絡め取るの、わかった?』

『・・・・・それって・・・・ 体術?』
『『この鈍感っ!!』』
『あははは、ちょっといい? ・・・・・ココを使って相手に付け入るの。』
『ぎゃっっっ!!!』
『『せ、先生、直球・・・・。』』

『わかった? だから無理にとは言わないわ。 精神的苦痛が大きいから。』
『・・・・・やらせて下さい。』
『『イルカ?!』』

『落ちこぼれの俺にも、里の為に何かできるって事ですよね?』
『『・・・・・アタシ達も。 スリーマンセルですから!』』
『ふふふ、資料を見た時、この子達なら強い、そう思ったの。 間違いじゃなかった。』

『私も潜入員。 上忍師としてじゃなく、先輩として。 仲間として、頑張りましょう。』
『『『はいっ!!』』』

目の前で母ちゃんが死んだ。 俺をかばって。 馬鹿な俺は退避命令を無視して父ちゃんの元へ行った。
『馬鹿が! 引っこんでればいいモノを! 黙って守られてろ! 子を守るのが親の役目だ!!』
怒鳴られて連れ戻されて、自分の馬鹿さ加減と無力さを思い知った。 俺は里に守られる側だったんだ。
でも下忍になったら、今度こそ里を守る側へ。 どんなことであろうと、自分が力になれるなら、と。

だから先生には今でも感謝してる。 こう見えて俺、優秀な潜入員なんだよ? そう見えない??
そこが俺の得なところだって、先生が言った。 そう見えないから、逆に敵が油断するのよ、って。