心にいつも太陽を 4   @AB DEF GHI JKL M




とりあえず、羽多宵の保護を優先させますか? ところで、なんでまた本城にいるんでしょうか?
次男と三男が取り合ってるんですよね、確か・・・・。 まさか四男まで参戦とか??
あ、まずは国主に挨拶ですよね、わかりました。 おや? 結界ですよ? カカシ先輩。

「あ、ホントだ・・・・ 三代目のオリジナル、忘却結界だ・・・・・」
「城中に張ってありますね。 こんだけ大きな規模で張れるのは・・・」

潜っていたのは緒方さんだ。 三代目は色々な結界術を開発したけど、忘却結界は数人しか扱えない。
これだけの規模の大きさと持続力は、緒方上忍だけだ。 国主と羽多宵を守らせていたんだろう。
この結界に足を踏み入れると、なぜそこに来たのか、その目的を忘れる。 だから忘却結界。
なら術紙を使った式なら、忘却にかからずに済む。 思考能力がないし、生き物でもないから。






「さっきの猫・・・・ コッチに来ますよ、先輩。」
「ナニ、あの仔猫、緒方だったの?! 笑えるっ!」

ボク達が折った術紙は、ネズミになって城に入って行った。 しばらくして現れたのはあの仔猫。
羽多宵の膝に登ってた三毛猫は、緒方上忍の変化だった。 緒方さんに案内されて国主に謁見する。
手短に挨拶をした。 国主からは確かに死臭がする・・・・ もっても、あと一週間ほどかな・・・・。
国がこの状態じゃ、心安らかに、とはいかないですね。 せっかく跡継ぎを決めたのに。

「緒方、なんで変化解かないの??」
「あのな? 木の葉が関わってるて教えてどうする! あっちには雲と岩がついてるんだぞ?」
「それもそうですね、でもなんで猫??」
「羽多宵の傍にいても怪しまれないだろ?」
「「なるほど。」」

どうやら緒方さんは、羽多宵の保護で潜った様だ。 雲と岩は、さすがにひとりじゃキツイか。
“堂々と暴れんのはお前ら暗部だけだ”と緒方さんは言った。 はは! 確かに、そうですよね。
ボク達が行く時は大概、全滅だの、殲滅だの、だ。 変化する必要なんて、これっぽっちもない。

「お前は三男と雲隠れの連中を頼む。 オレは次男と岩隠れを狩る。」
「了解です。 緒方さん、羽多宵を何故、先に逃がさなかったんです?」
「・・・・・・国主のな、最後を見届けるんだと。 ずっと看病してるんだ、この国に入ってから。」
「「・・・・・・へ―。」」

色気があって具合が良い、口が堅くて献身的か、さすが高級娼夫。 そこらの陰間とは違うみたいだ。
ボク達暗部は結構イイ稼ぎなんだ、高級娼夫だって買える。 一歩間違ったら死ぬ事が多いからね。
買わないけど。 今回の掃除も結局、相手の雇ってる忍びが、忍び五大国の隠れ里の者達だし。

「じゃ、狩って来ます。」
「塩盛り作っといて?」
「わかった。 ・・・・暗殺戦術特殊部隊 部隊長・補佐、ご武運を。」
「「行ってくる。」」

安曇野の国は火の国の昔からの友好国。 恩を売り、自国の属国にしようという魂胆ミエミエだよ?
あはははは、混乱してる。 何で木の葉の暗部が、とか。 クソ、木の葉を呼んだのか、とか。
戦いの中では動揺が一番大敵、敵に隙を与えちゃうでしょう? ボク達がソレを逃すはずはない。
奇襲をかけたら忍び五大国の隠れ里といえど、モロイもの。 半日で二部隊を血祭りに上げた。

「カカシ先輩だったら、もう次男を狩って、城に戻ってるな、きっと。」

さあ、この三男の首を持って戻ろう。 城では緒方さんが、塩盛りを作って待ってるだろうし。
ホント、心臓から離されたのに、首から上って、なんでこんなに血が出るんだろう・・・・。
髪の毛掴んで城に投げ入れたいんだけど、そんなことしたら、皮がずれちゃうからやっちゃ駄目。
凄い嫌な生温かさなんだよね、こうやって抱えてるのって。 さっさと塩漬けにしなくちゃ、だ。





おまたせしました・・・・ って、やっぱりカカシ先輩、もう帰ってた。 さすがです、部隊長。
次男の首の横に、三男の首を置く。 緒方さんが血抜きをしてくれた。 これで公開準備終了。
え、ボクが持つんですか? まあ良いですけど・・・・。 塩を敷きつめたお盆を持って行く。
二人の首を載せたお盆を、国主と、時期国主の前に差し出したら、ボク達の任務は完了だ。


「お確かめ下さい、次男・三男の首で間違いありませんか?」
「ごほごほ・・・ うむ・・・・。  こんなみっともない最後、ごほっ、・・・・バカ息子が。」
「ではオレ達はコレで。 また問題が起こったら、いつでも木の葉を頼って下さい。」
「すまぬ、くだらぬ事で・・・ ごほごほ、じゃが国を乱すは大罪。 例え我が子であろうと。」
「「・・・・・・。」」

出来れば自分の息子の、こんな変わり果てたみっともない姿を、見たくはなかったはずだ。
安曇野の国の国主も、決断には迷いがない・・・・。 それでこそ、国を治められるんだろうけど。
人の上に立つ事は誰でも出来る。 だが中身が伴わないと、民の心は離れて行き、やがて滅ぶ。
間違いなくこの人は、立派な国主。 だから火の国とも、友好関係を保っていられるんだ。

「申し訳ありません、大殿様。 俺がさっさと死んでいればこんな事には・・・・。」
「羽多宵、違うぞ? ごほ、人間は同じ間違いを犯す。 いずれこ奴らは国を乱したであろう。」
「あの世に逝けたら、必ずやおふたりを探し出し、頭を下げとう存じます。」
「さすがに火影殿が推薦する人物、ごほっ。 陰間にしておくのは惜しいの、羽多宵。」
「大殿様・・・・。 身に余るお言葉、一生忘れません。」

・・・・・ホントに。 ただの陰間にしておくのは惜しい気がしますよ、羽多宵さん。
あなたが死んだところで、状況は悪化したかもしれませんよ? 死んだ事への悲しみが憎しみに。
そういう馬鹿は、自分から羽多宵を奪ったと逆恨みし、大殿様に刃を向けたかもしれませんから。
あなたはこの国の危険分子を、早めに摘み取るのに一役買ったんですよ、そう思います。

ポロリとそう言ったボク達に、顔を畳に向け平伏していた羽多宵が、ゆっくり面を上げた。
血濡れの木の葉の暗部を映す瞳。 ボク達の面越しにボク達自身を見る、真っ直ぐな視線。
“血の道を歩く忍びからもお慰めを頂けるなんて、俺はなんと恵まれているのでしょう”と言った。

一を殺す事で救われる十の命がある。 あなたは陰間のくせに、それを知っているというのですか?