心にいつも太陽を 9
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羽多宵の為に水仙を内装してもらっていたら、アスマが任務でやって来た。 こんなトコでヤメテよネ。
聞けば、ターゲットは9時に部屋に入るらしい。 その前に細工をしようと、早めに来たんだそうだ。
危ないな―、もう! 声かけて正解だったヨ。 9時なんて、羽多宵の来る時間じゃないの!
オレ達は早めに部屋に入るから関係ないけど、羽多宵がその場に居合わせでもしたら、泣くに泣けない。
「申し訳ありませんが、8時までには、なんとかして頂けないでしょうか。」
「ねぇ、呼び出せば? とっとと片付けちゃって欲しいんだケド。」
「・・・・・簡単に言ってくれるな? 相手は忍びだ。 ソレもとてつもなく腕が立つ。」
「・・・・・不本意ですが、ボク達も加勢しましょうか? その方が・・・・」
「どういう風の吹きまわしだ? まあいい。 今回ばかりはありがたいぜ。」
「アスマがそんなに慎重になるなんて。 一体どういうヤツなの?」
どこの里かは不明、財力がある事から上忍、しかも相当キレ者らしい。 まだ一度も姿を現さないとか。
餌を使ってみたから今日は来るはずだと、準備を始めたんだ? ふーん、そんな輩は放置できないネ。
忘却術を見破り一般人を使って、この老舗ホテルの一室を指定した、か。 かれこれ一ヶ月・・・・ ??
・・・・・・チョット待って? ねえ、その部屋ってサ、まさか1001じゃ・・・・ ないよネ?
「あ? 何で知ってんだ? ・・・・・・まさか、知ってる奴か?! そうなんだな?」
「知ってるも何も・・・・・ ボク達のコトです、ソレ。 多分。」
「はあ?! なんでオメーらが羽多宵を狙うんだ? 詳しく聞かせろや。」
「狙う?? ・・・・ああ、殺すのはやめて、囲うコトにしたんだ、オレとテンゾウで。」
実に間抜けな話がある。 潜入部隊の忍びにコロリと騙されて、奈落に落ちる覚悟を決めた暗部の話。
せっかくだからキングダブルの部屋で寛ぐ。 色とりどりの水仙が、無駄にいい香りを漂わせている。
潜入部隊伝説のくのいち 葵ユキジが手塩にかけて育てた潜入員。 下忍になってすぐ房術を会得。
なぜ伝説なんて言われているか、それは一国を滅ぼした潜入員だから。 川の国を混沌の渦に落とした。
「ユキジさんが育てた潜入員・・・・ それが羽多宵なんですね?」
「ああ。 羽多宵は木の葉隠れの中忍だ。」
「・・・・最悪。 オレ達、中忍にしてやられたの?」
「まあ・・・・・ そうなるな?」
葵ユキジは川の国の国主を籠絡しただけ。 女に溺れる国主を諌める家臣が、ついには謀反を起こした。
国主がいない国はまとまらない。 各大名が、隠れ里が、それぞれ勝手に動き回り、民は苦しみ絶望する。
今あの国の半分を雨隠れの里が占拠し、事実上隠れ里が民を支配している。 オレ達忍びは国の武器。
恐怖で支配した世界に、誰が慕いついて行くというのか。 国主を失った国がもたらすモノは、民の嘆きだ。
「・・・・傾国の美女に育てられた潜入員か。 はは、信じられないヨ、まだ・・・・。」
「アスマさん、チャクラを・・・・・ 感じませんでした、何も。 隙だらけでしたよ。」
「あいつは潜入中、チャクラを封印するんだ。 自分の命をいつもむき出しにしてやがる。」
「命懸けの芝居に、ボク達は感情移入してしまったんですか。」
「勘弁してヨ・・・・・・。 オレ達、暗部の部隊長と補佐だよ?」
「しかしスゲーな、おい。 その気合いの入った格好はよ。 女どもが勝手に悶えそうだな?」
「「・・・・・全然嬉しくない。」」
・・・・・ってコトはさ。 羽多宵はココに来ないんだ。 オレ達をおびき寄せる餌だったワケだし。
木の葉の潜入員を守る為にアスマが呼ばれたの? 緒方から術を見破られたと報告があったんだ?
んで、このホテルに一番近いお前が、この部屋を張ってたの。 一ヶ月も。 ふ〜ん・・・・・。
可愛さ余って憎さ100倍、味方を籠絡するなんて。 イヤ、勝手にオレ達が落ちただけなんだケド!!
「オレ達さ、羽多宵に全財産つぎ込む気だったのヨ。 腑抜けも覚悟してた。」
「マジかよ。 オメーら、女体大好きじゃねーか。」
「そうです。 でも同じ忍びなら、囲わなくていい。 里でいつでも会えますよね?!」
「おいおい、本気か? 房術使いは・・・・ 羽多宵は貴重な情報収集道具なんだぞ?」
「・・・・・紅はいいよね、体張らなくても、幻術は天下逸品だし?」
「な・・・ ばっ! おまっ! い、今紅は関係ないだろっっ!!」
「あははは! アスマさん、紅さん狙いだったんですか!」
「がーーっ! なんの仕返しだ! おれの一ヶ月分の緊張を返せっ!」
「「ははははは!」」
そうか。 あの目の奥に宿っていたのは、木の葉の忍びとしての誇りだったんだ。 完全にヤラれたヨ。
ちょっとした憂さ晴らしだったのに、アスマは傷口に塩を塗りやがった。 紅のコト、本気なんだネ?
『ムカつくから、羽多宵の正体は教えねぇ。 テメーらで探すこった!』んで、そのまま消えやがった。