心にいつも太陽を 2   @BC DEF GHI JKL M




今回の俺の役目は暗部を絡め取る事。 暗部って言っても、ウチのじゃないよ? 当然、他里の暗部。
とは言え、暗殺専門に訓練された忍びに対峙するんだ。 ボロを出せば、間違いなく俺は即死。
潜入員の、それも房術を会得した忍びは、自分より階級が上の忍びを絡め取る事もしばしばある。
小が大を呑み込むんだ、成功した時の喜びはひとしお。 ああ、また生き残った、って実感する。

「煌々〈こうこう〉の里の暗部か。 なるほど、男ばっかりだもんな、あそこ。」

これは初代様の頃から、木の葉の里が得意として来た策略なんだって。 穏健派だった初代様は、
大きな犠牲を出すより、少ない犠牲ですむように、里の忍びの命を大切に考えた人だったらしい。
特攻して派手に散るより、泥にまみれて生き残れ。 それを恥だという者を心で思いきり笑い飛ばせ。
その後を生きる事で、何人の命を救えるのかを考えろと、潜入部隊の隊員に三代目は説いてくれた。

  「暗部か・・・・ 久しぶりだな・・・・ 珍しく緊張して来た。 深呼吸しよう・・・・・・。」

もちろんそんな忍び達だけでは里は成り立たない。 大きな戦いが起こった時、対処できる忍びが必要。
木の葉にはそんな強い忍び達が大勢いる。 能ある鷹は爪を隠す、そして、爪をいつも砥いでるんだ。
事が起こった時の、木の葉の忍びの強さは尋常じゃない。 他里は爪の鋭さを、身を持って知る事になる。
実動部隊と裏方部隊のバランスが良く、幅広い人材がいる事。 それが国に抱えられる隠れ里の条件。

「俺は、木の葉隠れの里の中忍 潜入部隊の潜入員 うみのイルカだ・・・・ よし、気合入った!」

だから様々な忍びがいていい、階級が何であっても、木の葉隠れの里の忍びだ。 皆で火の国を守ってる。
緒方上忍が、俺にすまなさそうに頼むのはお門違い。 俺は忍び、最終的に守るのはこの国と、里の民だ。
大火を水鉄砲で消すようなモノだけど、それでも。 誰かの、何かの役に立ってるんだ、そうだろ?
心にいつも太陽を。 自分の力に見合った働きをする、それが忍びとして生きる事を決めた、俺の意志。

「もう来てるかな、緒方さん。  ・・・・・え?!」

自分に気合を入れながら、あうんの門まで来た。 なんだろう、緒方さんと一緒に暗部がいる・・・・。
う〜ん、そんな大規模な任務なのかな。 ウチの暗部はちょっとすごいよ? 他里の天敵と言っていい。
これは身内びいきでもなんでもない。 ほんとうに凄いんだ、隠しきれない鋭い爪を持った集団。
何度か潜入中に会った事がある、あ、向こうは気付いてない。 俺、潜入中はチャクラを封印するから。

「こんばんは。 お待たせしました・・・・って、まだ待ち合わせ時間前ですよ。 皆さん早いですね。」
「「・・・・・・・・・。」」
「あーーーー うみの中忍、そういうコトだ、すまん。」
「なんですかそういう事って・・・・ ???」

は?! 煌々の里の暗部を絡め取る任務は・・・・ 建前?! って、何考えてるんですか、緒方上忍!!
俺、久々の暗部が相手だから、めちゃめちゃ気合い入れてきたんですよ?! この格好見て下さいよ!
本来の任務は一般人の籠絡?! はぁ?! 羽多宵を見せたかった? 通りで。 らしくないと思った。
でもって、組むのはこの暗部二人? お、緒方さんは?? 名前だけ?! もう、訳がわかりません!

「一般人相手なら、こんな張り込まなくていいのに・・・・。」
「ワァー、身も蓋もない台詞。 コレが探してた高級娼夫の羽多宵の正体かぁ・・・・。」
「半年前、安曇野〈あずみの〉の国の内乱を招いた人物。 確かに羽多宵です・・・・。」
「ははは、うみのイルカは肝が据わった房術使いだぞ? ・・・・任務中に盛るなよ、わかってるな?」

「あの・・・・・ 取り合えず俺、着替えてきます。」
「一般人にはもったいないが、それで別にいいだろう?」
「・・・・・今回はシンで十分です、もう!」
「どうせ殺すんだからどっちでもいいのに・・・・・ 潜入部隊は複雑だなぁ。」

緒方上忍は、里の忍びの有り方をしっかり理解している。 けど、潜入部隊の役作りには無頓着らしい。
俺が房術を使う時、二つの役どころがある。 ひとつは陰間のシン。 もうひとつは高級娼夫の羽多宵。
どちらも男娼だけど相手に応じて使い分けてる。 中忍以下は暗殺がほとんど。 シンになって籠絡。
特別上忍以上や要人だと、目的が暗殺じゃない事が多いから、羽多宵になって必ず上忍と組む。

これは羽多宵の信用問題なんだ。 羽多宵は高級娼夫、とても一般人が買えるような値段じゃない。
あ、でもネコババしないよ? 陰間で稼いだお金は特別報酬として報告書に記載する。 里の財源だ。
それにしても・・・ 任務中に盛るって。 あ、この暗部、恋人同士なの? 俺お邪魔かな、ひょっとして。