くノ一の男 13   @AB CDE FGH IJK M




触れている指先から、海野中忍の肌の温かさが直に伝わってくる。 人の体温がこんなに嬉しいなんて。
誰かに触れてもらうのが心地いいだなんて。 今迄体感した事がない気持ちに、押し潰されそうだよ。
こんな・・・・ 今迄感じた事のない震えるほどの喜びは・・・ 里の為じゃなく、自分の為の喜びだから?

小珠ちゃんは、ボク達が。 木の葉の上忍が二人、陰間の一人身請けしたところで、痛くも痒くもない。
槇からご馳走になった小珠ちゃん、一緒に過ごしたら手放せなくなった。 木の葉の里で囲うからと。
そう身請け話を持ち出せば、沖屋は“元々流れの陰間 どうぞ幸せにしてやって下さい”と送り出してくれる。
小珠ちゃんを可愛がってた珠紀兄さんだけは、ひょっとしたら感極まって泣いちゃうかもしれないね。




体から着物をずらして剥いていく楽しさ。 任務で見せていた表情と違う表情を発見する嬉しさ。
槇がボク達に見せた小珠ちゃんの顔じゃなく、ボク達の指や舌で素直に反応する厭らしいその顔が。
今から腕に抱くのは、木の葉隠れの里の潜入員ではなく、海野イルカという男だと実感させてくれる。
ボク達も暗部の部隊長と補佐じゃないよ。 一人の男を渇望して、その男に溺れるただの男。

「はぁ・・・・・ ぁ・・・ どうしよう・・・・ 俺・・・・ んん・・・ おかしい・・・・」
「ん・・・・ おかしくなって? もっと。 海野中忍の隠してるモノ、全部を見せて・・・・・」
「ボク達も・・・ おかしいよ? 海野中忍の反応、ひとつひとつが・・・・ っ、嬉しい・・・・」

今にも我を忘れて喰らいつきそうだ・・・・・ もっと大切に扱わないといけないと分かってるのに。
そんなギリギリのボク達が目にしたのは、まぎれもないキスマーク。 腰骨の下に・・・・ 鬱血の痕。
体中の血が沸騰するってこの事? 鬱血の痕は着物に隠れた場所、つけるには全部剥かなくちゃ無理。
その位置は腰骨のすぐ下で。 槇はボク達でさえ認める腕利きの忍びだ、それの意味する所は・・・・

逃げられなかったんだ・・・・ さっきの様に・・・ 舌で睡眠針を使う暇も与えてもらえずにっ!!
槇はただの忍びじゃない、煌々の里の暗部だ。 海野中忍を責めるのは間違いだと分かってる!
立派に役目を果たした潜入員、そんな事分かってるよっ!! でも・・・・ 痛い、心が痛いよ・・・・

「・・・・・・・ナニ、これ。 こんなトコ、吸わせるぐらい・・・・ 剥かれたの?」
「海野中忍・・・・ 本当には抱かれてないんでしょう? ねえ、そうだよ・・・・ ね??」
「んん・・・・・ ぁ、それは・・・・ ん、槇さんのつけた・・・・ っ!! ぁああっっ!!! 」
「「 くそっ!! 」」

このまま温かい思いに包まれて、三人で肌を寄せあうつもりだった。 大切に抱こうと・・・・・
ボクもカカシ先輩も、本当にギリギリだったんだ、我を忘れない様に踏ん張ってた。 でも・・・・・
海野中忍を力ずくで押さえつけ、腰を上げさせ指を突っ込んだ。 狭い口がボク達の指を受け入れる。

ここが槇のモノに荒らされたのかと思ったら・・・・ カカシ先輩もボクも・・・・ 悔しくて泣けてきた。
血が沸騰しそうな怒りを海野中忍に向けるのはおかしいですよね・・・・ 全部ボク達が蒔いた種・・・・・。
自己嫌悪でどうにかなりそうだ。 先輩、どうやったらこの涙は止まるんでしょうか・・・・・

「「 ぅ・・・っう! グス・・・・・ ぅっ、っう! 」」
「・・・・・・・・・カカシさん、テンゾウさん。」
「「?! 名前・・・・・ 知ってたの??」」
「当たり前です、ウチの里を代表する忍びですから。 それよりも・・・・・ 歯を食いしばれっ!」

「「?! いっ、つっ!!!」」
「泣きたいのはこっちだっ! こんなに夢中にさせておいてっ!!」
「「!!!」」

・・・・・・涙が止まった。 海野中忍に殴られたから、とか。 熱烈な告白をされたから、とか。
そんなんじゃなくて、それよりも前に。 凄いや、名前を呼ばれただけで嬉しくて、涙が引っ込んだ・・・・
こんな事が死ぬほど嬉しい。 今気付いたんだ、まだ一度も名前を呼んでもらってなかった、って。

「そんな事で泣くなっ!! 中忍に殴られたのに、嬉しそうにするなっ! それに・・・・・」
「「うん! でも・・・・ 嬉しい・・・・ ゴメンね・・・・ 痛かった?」」
「いや、俺も殴ったから痛み分けです。 ・・・・・はぁ。 いいですか? よく聞いて下さい!」
「「??」」

仕込針の性能を聞いた。 何度もヤバかった事はあったけど、男を後ろに受け入れた事はないんだって。
取り乱して怒鳴ったり、感情に流されて動いたり、泣いたり。 ボク達、ただの男以下だよ、これ・・・・・。
“俺を信用しなかった罰です。 天国に行くぐらい気持ちよくさせて下さい”と海野中忍は言った。
そうだよ、ボク達はこの目で見たじゃないか。 煌々の里の暗部の槇を最後まで騙しきった潜入員を。

「・・・・くすっ、くすくす! 俺、ほんとに幸せ。 こんなに思われちゃって。 あははは!」
「「・・・・・もう! 笑わないのっ!!」」

海野中忍は、仕込針の乗ってる舌先を厭らしく動かしたあの時と同じ様に、ケラケラと笑った。
あの時、顎を固定して吸ってやるからな! と思った舌。 その器用な舌がネロリとボク達の唇を舐めた。
“睡眠針は使いませんから安心して下さいね?”だって! ・・・・・・ボク達 一生頭が上がらないかも。