くノ一の男 6
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その日の夜には宿をとる、と言った通り。 海野中忍はみごと煌々の里の忍びを、沖屋に連れ込んだ。
ヤツに気付かれない様に、スーンゴイ遠くで確認したから大丈夫。 オレ達の存在は全然バレてないヨ?
で、二日待って覗きに行った。 すぐに顔を出したかったケド、それだとタイミング良すぎだろう、って。
様子を見に来たよという感じで小珠の部屋に顔を出して下さい、と言われたからネ。 リクエスト通りに。
「小珠ちゃん、オレ達だヨ。 あの時の木の葉の忍び。」
「気にはなってたんだけどなかなか忙しくて・・・・」
「あ!! ・・・・・・す、すみません! 今は・・・・・・ その・・・・」
「「・・・・・・・先客・・・ かな?」」
「通せ。 おれの事は気にするな小珠。 ・・・あっちはおれの気配を既に嗅ぎ取ってる。」
「・・・でも、本当に中にお通しして・・・・ いいんですか?」
「木の葉と事を構える気はない、気配を消したら腹に一物あると思われる。 ・・・・ん、続きだ。」
「はい。 分かりました、ご挨拶だけですから。 ・・・・お通ししますね? ・・・・どうぞ?」
この二日間、他里の忍びへとっても寛ぎの空間を提供してあげちゃってるみたいだネ、海野中忍?
あの睡眠針がガンガン活躍したんだろうネ・・・・・ どうなのヨ、この男の寛ぎ方は・・・・。
膝枕に耳かき? なんなのそのベタな寛ぎ方! けど、腕組みして横になってるこの男には隙がない。
てか。 小珠ちゃん・・・・ いや、海野中忍。 あの時も思ったケド。 なんて美味しそうなの?!
「兄さんや皆に、すごく良くしてもらってます。 本当にありがとうございました。」
「ヤ、別に。 元気そうでよかったヨ。 ・・・・いい旦那も出来たみたいだしネ?」
「・・・・・・火の国に遊びに来ただけの・・・・ 遊び方を知ってる忍びの様ですもんね?」
「木の葉、それはおれに言っているのか? 小珠を斬る様な奴らと一緒にするな。・・・・ん。」
「・・・・・っ! 槇〈まき〉さんっ! もう! 危ないですって!」
「「・・・・・・・・・・・・。」」
この男、ブン殴っちゃってもいいかな? ヤ、そんなことしたら、口もきいてもらえないと思うケド!
耳かきしてもらってる手じゃない方の反対の手。 耳を持ってる方の小珠の手をとって、指にキスした。
小珠は危いでしょ、と怒ってる。 あのネ・・・・ 一応、命の恩人という設定の忍びが訪ねて来たのヨ?
そんな忍び二人をないがしろにして、イチャイチャしてていいんでようかネ? そこんトコどうなの?
実は木の葉の忍びに話がある、と男が言う。 小珠は、気を利かせて退室しようとして・・・ 戻された。
ここにいろ、と。 小珠に槇と呼ばれた煌々の里からの刺客は、黙って自分の指を小珠に差し出した。
パチリ、パチンと、指の爪を切る音がする。 海野中忍扮する陰間、小珠が丁寧に男の爪を切り始めた。
「ここに来てあんまり進展がないから、思い切って訪ねてみるぞ?」
「「??」」
「木の葉に女が逃げ込まなかったか? 子を産んだ母親だ。」
「もしそうだとしても、どうしてあなたにボク達が?」
「あのサ。 ・・・・依頼人の事をオレ達が話すとでも?」
小珠に片手を預け、手の指の爪を切りそろえてもらいながら、坦々とオレ達に話す刺客、槇。
やっぱりどこをどうとっても隙はなく、ただの忍びでない事が窺える。 全く・・・・ 敵にしたくないネ。
交渉という形にして大正解だ。 もしウチの里が既に依頼を受けて玉を匿っていると知ったら・・・
木の葉の忍びと言えど無傷ではすまない。 力ずくで玉を取り戻し、女も必ずみつけて狩るだろう。
そしてその間に携わった人間を一人残らず殺す。 全ては・・・・ 裏切り者に手を貸した者の末路だと。
冗談じゃない、あんな依頼がてら預かった赤子一人の為に、里の民や忍びがとばっちりをうけるなんて。
それこそ煌々の里の信念、一を差出して多数を救う、だヨ。 ウチはなんとか細工をして、玉を返す。
「小珠がな。 お前らの役に立ちたいと、おれに近付いて来た。」
「「・・・なっ?! なにやってんの、小珠ちゃんっっ!!」」
「あの、ご恩をお返ししようと・・・・ でも意味ありませんでした。 悪い人じゃなかったから。」
「ふふ。 何の得もない任務外の行動をとった木の葉の忍びとやらに、会ってみたかった。」
「「・・・・・・・・・。」」
「・・・・だからな? そういう忍びは、自里の損になる様な話には敏感だろ。」
「・・・・・・・木の葉が・・・・ どう損をするのサ。」
「あなた、ボク達に一体何を求めてるんですか?」
「情報の横流しだ。 おれはここで寝てるだけでいいからな。」
「「・・・・・・・・・・。」」
そう言って、小珠の腰をゆっくりと撫でた。 キィ〜〜〜ッ!! なんだその手っ! 放せバカヤローッ!
海野中忍、そういうスキンシップ系のおさわりはアリなの? アンタ、どこまでがセーフゾーンなワケ?!
こんな花街で誰でもやってるような仕草が異様にムカつくのって・・・ テンゾウ、お前なんだか分かる?!
多分、これが嫉妬かもしれないと思っていたら、槇は小珠の腰にまわした手をそのまま首に持って行った。
小珠は一瞬驚いて爪を切る手を止めてしまったが、首にまわされた手を受け入れるように喉元を差出す。
オレもテンゾウも、本気でフリーズした。 だって親指が、海野中忍の喉仏の上でピタリと止まったから。
アソコを忍びのチャクラで押せば・・・・・ 即死だ。 コレは・・・・ 目に見える脅しだネ?
この話に乗らなければ、まずはお前らがせっかく助けた命が・・・・・ 消える事になるぞ、と。
けれど健気にも小珠は、その体制のまま槇の爪をちゃんと切りそろえ、爪先をやすりにかけて丸めてる。
海野中忍、いや、小珠の目から涙がポロリとこぼれた。 面白そうにその涙を吸い取る槇を見て思わず・・・・
「・・・・・このっ! その手を放せ、クソがっ!! それがお前の里の交渉の仕方かっ!」
「冗談じゃないっ! そんな相手と交渉する価値はありません、ふざけるなっ!」
「・・・・・・・すまん、ほんの冗談だ。 ・・・・・お前らを試しただけだ。」
「「・・・・・・っっ!!」」
どこまで人を見る気だったんだろう。 ここで怒鳴らなければ、この男は小珠の首を折ったのか?
・・・・何を考えているのか、全く分からない。 こういう相手とは、マジで殺り合いたくないネ・・・・