くノ一の男 4   @AC DEF GHI JKL M




剥いてみたい中忍がいる。 そんな俗物的な言い方をして、なんて軽い奴らだ! とか、思ってる?
でもね、ボク達が自分の意思で剥きたいと思う事なんて稀。 はっきり言って皆無に等しいんだよ。
火影直属 暗殺戦術特殊部隊の面々は、特に色事に溺れる訳にはいかない、性欲のコントロールをする。
つまり、事前に花街で処理して来たり、任務後にまだ興奮していたら、しっかりと発散させるんだ。

全ては任務に支障をきたさない為の体調管理、という責任感から。 暗部の長を名乗るなら当然だろう?
ボク達は火影様に任された部隊の長、隊員達の管理もしなくちゃならない。 個人的感情は二の次なんだ。
ヘンな話、素人童貞に等しい。 恥ずかしいけど、女は勝手に脱いで乗っかってくれるモノだとばかり。

そんな完璧に性欲を制御しているかに見えるボク達が“剥いてみたい”だよ? かなり重症だよね。
他に気の利いた言葉を知らないだけで、そそるんだよ。 見れば見るほど肌を合わせてみたいんだ、彼と。
延々悶々と悩んでいたら、同じように悶々していたカカシ先輩がポロリと言ったんだ。 剥いてみたい、って。
ボク達の本能がそう感じているなら、それは間違いなく心が欲してる相手。 そういう結論に至った。

でもどうやったらその相手が得られるのか、が分からない。 俗物的な方法しか思いつかないんだよね。

  







この網の任務を利用して海野中忍を手に入れるぞ! と意気込み、カカシ先輩とあれこれ考えた作戦。
潜入に最適な老舗茶屋、過去を決して詮索しないと評判の沖屋に海野中忍が潜れば、客になればいいだけ。
そんな完璧なはずの、名付けて“海野中忍を任務にかこつけて手に入れよう作戦”だったのに・・・・・。

「いいですか? 俺は木の葉の上忍に偶然助けてもらった流れ者、でしたよね?」
「ウン。 他里の忍びが取り合って、怪我をしちゃった青年・・・ って、設定だーヨ。」
「間に入って助けたボク達、それがきっかけで超贔屓の旦那になるはず・・・・ だったのに。」
「超贔屓かどうかは別として、こうやって度々顔を出して下さい。 様子を見に来たよ、的な感じで。」

「「・・・・・・遊びに来ていいの??」」
「“小珠を気にかけてくれてる木の葉の忍び”という立場が望ましいんです。」
「「・・・・・と、言うと?」」

なんと。 すっかりお蔵入りかと思った、贔屓の旦那への道が残されていたとは。 これはラッキーだ!
海野中忍はさっき、ボク達に自分の隠し技を教えてくれたけど。 それって知ってたら意味ないでしょう?
舌先を奥歯付近でモゴモゴさせなきゃいいだけだもん、簡単だよ。 ずっと口をふさいでればいいだけ。
例え奥に逃げようとしても、それを許さなければ問題ない。 顎を固定しながら吸い続けてあげるよ?

「煌々の里の忍びは、本来よっぽどの事がない限り、戦いを挑みませんよね?」
「ウン、究極の合理的な隠れ里だヨ。 一を差出して残りを救う、みたいな。」
「だから自里にクノイチがいないんですよね、火種になる元、だから。」
「その分、自里への裏切り行為の制裁には、徹底的に容赦がない。」

「「・・・・・・・・・・・取引、とか?」」
「さすが! でも交渉をするのはお二人です。」
「「へ??」」
「だから。 “小珠”が木の葉の忍びを紹介するんですよ、その刺客に。」

そうか! ウチにまだ女が依頼に来ていない事にすればいいんだ・・・・ 無駄な殺しはしないだろう。
刺客が火の国に入ったという事は、女が赤子を連れて火の国に入ったという情報を聞き出したからだ。
結果、たどり着いたのが火の国。 自里の玉を取り戻す為に、一体何人ぐらい犠牲になったのかな。
自里との契約を破った輩と、欺こうとした輩への制裁は・・・・・ おそらく代理母一人だけではない。

海野中忍は言った。 無駄な殺しをしないで済むのならそれに越した事はない、と思うのではないかと。
遅かれ早かれ、女から依頼を受けて木の葉が赤ん坊を引取った事はバレるだろう。 下手をしたら・・・・・
協力した報いだと、依頼人の女だけじゃなく、木の葉病院の医療忍者、依頼を受理した受付忍も殺される。

「相手が木の葉では里の中では暴れないでしょうけど・・・ 外に出たら・・・・・」
「・・・・だネ。 一歩里外に出たら、背中に気を遣いながら歩かなきゃならないヨ。」
「こと玉に関しての制裁は・・・・ 容赦がありませんからね・・・・」
「「先手を打たなきゃ、火の粉が飛んでくる・・・・・ か。」」
「ええ、ウチはもう依頼を受理しちゃってますから。 先手を打たないとマズイです。」
「「・・・・・了解!」」

煌々の里からの刺客の風貌や背格好は、全て情報部の式で知らされているそうだ。 まるで静かな戦場だ。
ボク達 暗部の戦場は、殲滅や全滅の殺しがほとんど。 ここは・・・ 潜入員にとっての戦場なんだ。
常に先回りをしておかないと、自分が殺される。 海野中忍が目立ち過ぎだと言ったのは、だからだ。
ボク達は派手に殺して敵を威圧してナンボ。 でも潜入員は目立っちゃうと、それだけで命取りに・・・・

「「・・・・・・・・ごめん。」」
「??」
「勝手に潜入員の潜入作戦を立てて。」
「ボク達の戦場じゃないのに・・・・。」
「・・・・・・・チャラですよ。」
「「チャラ・・・って??」」

天下の暗部の部隊長と補佐を、一潜入員が動かせるなんて・・・・・ もう、最高じゃないですか!
海野中忍はまた、あの“してやったり”の顔で、楽しそうに・・・・ 凄く楽しそうに笑ったんだ。
さっきの指差し笑いと一緒。 ねえ、海野中忍。 ボク達にそんな顔でケラケラ笑うのは君だけだよ?
皆どこか一歩引いて・・・・ って、それはそうだ。 ボク達が自分のテリトリーに入らせなかったからね。

・・・・うん、海野中忍は間違いなく、心が欲してる相手だ。 ごく自然にボク達の中に入って来てた。
好きだとか愛してるだとかを、言えばいいのかな? そうしたら海野中忍はボク達に剥かれてくれる?
でもそんな言い慣れない言葉を使いたくない。 体の隅から隅まで溶け合いたい、それが本音だから。