お人好しの忍び 3   @AC DEF GHI JKL M




木の葉崩し後の混乱は、五代目火影就任で少しずつ元に戻りつつある。 アカデミーは一時閉鎖だけど。
だから当然少し前まで、イルカ先生も任務に出ていたの。 そのわずか3週間の間に色々な事があった。
うちはサスケが里を抜け、ナルトを始め有望な下忍が何人も重傷を負い入院、サクラとイノは妹弟子に。

私も綱手様と一緒に彼らの回復に努めた。 細胞が若いせいか、皆あっという間によくなり退院。
そしてナルトが自来也様と修行の旅に。 先生達の見送りがなくて淋しい? ってナルトに聞いたら、
“見送りなんか来たら、イルカ先生は絶対、泣いちゃうってばよ!”ニシシと笑ってそう言った。
心の中でだけど。 ナルトもそうでしょう、強がっちゃて! なんて思ったりしながら見送ったっけ。

ナルトが旅立った夜、綱手様からヒヤリとする事を聞いた。 現段階でイルカ先生の安否が不明だと。
恩師の死。 綱手様がナルトを急に自来也様と旅立たせたのは、万が一を考えての事だったのか。
でもそのすぐ後で、イルカ先生が連れて行った伝書鷹の鷹丸が飛んで来て、先生の無事が確認された。

『昨日、ナルトは自来也様と修行の旅に出ました。 お見送りに間に合わなくて、残念でしたね。』
『自来也様と?! 凄いなナルトのヤツ! あ、見送りはいいんです、俺、絶対泣いちゃうんで。』
『あはは! ナルトもな、そう言っていたぞ? 先生が泣いちゃう、って泣きそうな面でな!』
『・・・・・アイツが帰って来た時、笑顔で出迎えてやりますよ。 それが俺の役目ですから。』

ハッとした。 里に戻って来たけど、綱手様と私を笑顔で迎えてくれた人はいなかったな、って。
あの時綱手様が荒れた意味が理解できた。 きっと三代目火影に、迎えてもらいたかったんだと。
よく克服して帰って来たな、信じておったぞ? 師である猿飛先生に、笑顔で迎えて欲しかったのだ。
胸を張って、これからはあたしと自来也に任せて隠居して下さいと、そう言いたかったのかもしれない。

ナルトは人柱力、その力は恐れられ差別を受けるが、そういう拠所が一つでもあれば、道を見失わない。
修行して尾獣の力を使いこなすようになれば、誰もが慕い、尊敬する忍びになる資質を持っている。
そしてそんなナルトの成長を誰よりも楽しみにして待っているのが、このイルカ先生なのだ。
だから本当に胸をなでおろした。 ナルトを笑顔で迎える為に待っている人が無事で・・・ よかったと。


そう言えばあの時、もっとナルトの話を聞こうと思っていたら、カカシさんとヤマトさんが・・・・・
・・・・?? あ・・・・ れ?? イルカ先生の恋人は二人で・・・・ 男性で・・・ 暗部よね?
ちょっと待って? カカシさんは元暗部の部隊長、ヤマトさんは今の・・・・ まさか恋人って・・・・??

「あ、そうだ。 シズネさん、これどう思います?」
「はひぃっ!  ほへ?  これ、水の国の花街から・・・・?? どうして木の葉に・・・・」
「医療忍者を拉致する為の偽依頼か、切羽詰まっての嘆願依頼なのか、悩むところです。」
「水の国の花街では、情報がなさ過ぎますもんね。 判断に苦しみますが・・・・・」

あー ビックリした、今凄い事を想像しかけた。 まさかね? あんなの二人も相手にしたら死ぬわよ。
・・・・・・死ぬ? あれ?? イルカ先生、さっきそう言ってたなかったけ? ・・・・・・まじ?
だったら、その調合剤じゃ駄目かも。 もう少し精力を抑える作用を加えた方がいいと思うわ。

「私、がんばってみるから。 それ貸して、イルカ先生。」
「え!! わざわざシズネさんが受けて下さるんですか?!」
「当たり前じゃない! 相談されたらちゃんと仕上げるのが一流の医療忍者だもの。」
「本物の依頼だと? 分かりました、なら及ばずながら俺も。 受け付けたのは俺ですし。」

「へ? 受付?? 確かにここは任務受付所ですが・・・・??」
「はい、だからご一緒します。 今すぐ動ける中忍は俺だけですしね。」
「えっと・・・・・ ど、どこに??」
「どこって、ここですよ、この水の国の遊郭に。」

・・・・・そうだ。 そういう話をしている途中だったわ、うっかり違う事を考えていたけど。
またもやちょっと待って? という事は私・・・・ イルカ先生とツーマンセルの任務に出るって事?!
いらない誤解を招かないといいんだけど・・・・ そうだ、サクラとイノを連れて行くのはどう?!
弟子の二人に経験を積ませたいから、という事にしてイルカ先生は今回はお留守番、って事で!

「イ、イルカ先生! サクラとイノを連れて行きます! 修行の為にっ!!」
「さすがシズネさんだなぁ! アイツらもいい勉強になりますよ、きっと。」
「あははははは・・・・・ だからイルカ先生は・・・・・」
「わぁーーー!!  アイツらとも一緒か! これは楽しみだなぁ!!」
「・・・・・・・・・ですねー、はは。 (言えない、お留守番しててなんて言えないっ!) 」

デレデレとめちゃくちゃ嬉しそうなイルカ先生を前に、お留守番の告知が出来なかった・・・・。
カカシさん、ヤマトさん御免なさい、あの・・・ 弟子も一緒だからヘンな誤解はしないで下さいね?