お人好しの忍び 8
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こういうのはよくある事、医療忍者は万能じゃない。 それをサクラとイノに教えられてよかった。
何事にも経験は知識より役に立つ。 もちろん知識は必要不可欠だけれど、それだけに頼ることは危険。
自分の持っている知識で解決出来ない事の方が、世の中にはたくさんあるのだと知らなければならない。
それには生き物の死を見せるのが、何よりも効果的。 忍びなら、そこから何かを必ず学び取るはず。
あの遊女の依頼を引き受けた事で、それまで死を見て沈んでいたサクラとイノの晴れやかな顔が見れた。
そう、助けられない命があったとしても、その命の為に出来る事はまだあるのよ? よかったわね。
ふふふ、それにイルカ先生も私の意を汲んでくれて、任務変更という形で受け付けてくれたし。
そういえばイノとサクラが、水の国の花街なのに、なぜ木の葉に依頼が来たのか不思議がっていたけど。
実に単純で分かり易い理由よ? 箱に入った腐ったリンゴと同じ要領なの、全部腐る前に取り出すだけ。
この国での遊女の使い捨ては当たり前。 わざわざ時間やお金をかけて生きながらえる事はさせない。
そう説明してあげたら、みるみる顔が強張っていったわね。 火の国じゃ考えられないから仕方ないけど。
この遊郭が木の葉を頼ったなんて、霧隠れに勘付かれる訳にはいかないの。 見せしめに焼かれちゃう。
他国の依頼を受けるという時点で、木の葉はそれだけ周りに気を使いながら行動しなくちゃならない。
あと、綱手様や私がいるからそんなに感じないだろうけど、医療忍者の存在そのものが貴重な存在なの。
他里に拉致される可能性が一番高いのが、クノイチの医療忍者。 だから単独で依頼は受けない。
その貴重な存在にこれからなろうとしているなら、これもしっかり頭に入れておかなければ駄目。
敵に捕縛された時は、迷う事なく自害しなさい。 でないと身も心もズタズタに引き裂かれる事になる。
まあ、そうならないように必ずチームで動くし、最低でも付き添いの忍びを頼むの、中忍以上のね。
話を聞き終え少しだけ引き締まった顔になったサクラとイノの頭を、イルカ先生はまた撫でて怒られてた。
ふふふ、いつまでたっても、イルカ先生はあなた達の先生なのね? お人好しの、アカデミーの先生。
・・・・・うぅ・・・ その先生があの恐ろしい二人の恋人だなんて・・・・ い、言えない・・・・
「二人とも、この遊郭に残っている病原体を全て死滅させるわよ? 他に発病者を出す前に。」
「健康診断という形で遊女の体内から病原体を取り出す・・・・ 分かりました、シズネさん!」
「イノ、“誠〈まこと〉ちゃん”の調査に協力してくれ。 心転身の術で喜美さんに入ってくれるか?」
「はい、イルカ先生! どこまで覗けるか分からないけど・・・・ 心転身の術っっ!!」
イノが喜美さんの精神にすんなり入った。 イノイチさんの娘さんなら、心潜術に長けているものね。
本人の潜在意識から直接、探し人の手掛かりを探し出せる。 イルカ先生に記憶を見せる事も出来る。
喜美さんの意識を覗いたイノが、今度はイルカ先生の中に入って記憶を渡した・・・・ さすがね。
・・・・・?? イノ?? なんだか真っ赤な顔してるけど・・・・・ 大丈夫? 疲れちゃった??
「じ、じゃぁ、あの、イルカ先生、これで記憶は譲渡したから! 誠さん探し頑張ってね!」
「よし、呑み込めた。 彼女の生まれた村に行って足取りを追うよ! サンキューな、イノ!」
「ううん、それより勝手に覗いちゃって・・・・・ ゴメンなさい・・・・・」
「?? 唯一の手がかりだし、彼女は寝ているんだ。 気にしないでいいぞ?」
そうよ? 彼女の記憶からしか手掛かりを得られないじゃないの。 それに本人もぐっすり寝てるんだし。
?? ・・・・・・・・・まさかイノ・・・・ 勝手に覗いたって・・・・ イルカ先生の記憶を?!
って事は、さっき真っ赤になってたのって・・・・・ イ、イノッ!! あ、あなた3p見ちゃったの?!
「 あひぃ〜〜〜〜!! 」
「「きゃっ!!」」
「ど、どうしたんですかシズネさん!!」
「い、いえ・・・・ これから集中する為の気合いをですね・・・・」
「お、そっか! んじゃ、俺もやるぞ! アヒーーッ!!」
「「・・・・・・。 (あれ、感情が高ぶった時のシズネさんの口癖なんだけど・・・・)」」
イルカ先生は一人で気合いを入れて誠さん探しに行ってしまった。 ・・・・さ、さあ、私達も始めるわよ?
喜美さんからばら撒かれた病原体は、この遊郭中に漂っている。 第二、第三の犠牲は出さない。
その為には、漂っているモノも含め、人の体内に入ってしまった病原体も全て取り除いて死滅させる。
探し人はイルカ先生に任せましょう。 凄く集中力を使うわよ? 手分けしてがんばらなくちゃ。
あのね、暗殺戦術特殊部隊は、忍びの中でも特に凶暴な猛獣の集まりなの。 木の葉も例外じゃない。
だからイノ、お願い。 先生の記憶を覗いたあなたの責任という事で、同期の下忍に説明してくれる?
私はこの任務に出る前に、もの凄い目で見られたの。 もう思い出したくもないわ・・・・ うぅ。
できれば関わり合いたくないの、分かる? あなた達は元生徒だから、大目に見てもらえると思うけど。
でも私はどちらかと言うと先生に年が近いでしょう? だからね、私は急に出来た目の上のコブなのよ。
周囲にチラつかなければそれでヨシ、会話や視界に必要以上に交ったら、排除されてしまうわ・・・・
そういうものなのよ、暗部は皆そういう獣達なの! 暗部の恋人に接するには、細心の注意を払う事。
いい? これも修行の一環なの。 勝てない相手を瞬時に見極めるのも、医療忍者の心得のひとつよ?
そうすればその後の対処法も変わる。 危険を回避する方法を知っておく事は何より大切なの。