灯台下暗し 12
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ごめんな? 俺はこれからマシラをおいて逝く。 前からこの時の為に目をつけていた場所があるんだ。
下には流れの速い川があって、死体は絶対に見つからないだろう険しい渓谷。 そこから身投げする。
・・・・・って見せかけて帰る。 もちろん木の葉の里に、だ。 遺書も書いてあるし、完璧。
しかしあのふたりには驚かされた。 あそこまでしなくてもいいのに。 ・・・・・怖かったなぁ。
つくづく思ったよ、俺は戦闘向きじゃない、って。 上忍の殺気に囲まれた時、立てなかったし。
あれ、マジで震えてたって・・・・・ 気付いてたかもな、カカシさんとヤマトさん。
でもさ、俺が情けないんじゃないよな? だって、木の葉の暗部の元部隊長と現部隊長だぞ?
誰だってビビるよ。 それにマシラも・・・・ やっぱり腕利きの上忍なんだ、って実感した。
・・・・・優しく撫でるように触れてもらうと気持ちよくなる俺。 それも気付かれたかなぁ?
「イルカさん、今日・・・・ 抱いていい?」
「 あ・・・・あの・・・・ その・・・・ はぃ・・・・・ 」
「ふふ、よかった。 あんな目に合って、嫌がられるかと思った。」
「お、俺がマシラさんを嫌だと思う事はありません、絶対。」
すぐ村を出なかったから、きっとそうだろうなって、思った。 俺を失って嘆くマシラの為に。
怖がらせない様に、今まで我慢してくれていた若い上忍の為に。 思い出に、俺をあげるよ。
こんなのでよかったら、抱いてくれ。 俺が逝っても岩を抜けても、あんたなら生き延びられる。
「俺、ん・・・・・ 触ってもらうと・・・ はっ、あっ・・・・ んん・・・・」
「ん? 気持いい? うん、イルカさんは、うっとりするよ、いつも、こんな感じに・・・・」
いつものように優しくマシラの手が触れて来た。 ほら、この大切だ、って伝わってくる感じ。
これが駄目なんだ。 こういうのに弱いんだよ、俺。 思ってもらってる心を感じるから。
口の中を優しい舌が行き来する。 もうだめだ・・・・年下の、他里の忍びの手腕に、堕ち・・・・ る。
「伝わって・・・・ くる・・・ 好き、が・・・ んん、たくさん・・・・ はっ、ぅっ。」
「くすくす、だって好きなんだもん。 イルカさんもね、答えてくれてる、体で・・・・・ っ?!」
その時、マシラの体に緊張が走った。 ウチのふたりに対峙してた時の様に、上忍の気を纏わせて。
なんだ?! 忍びなのか?! そんな・・・・ あのふたりとは山中で合流する予定だ、なのに?
まさか・・・・・ 岩隠れ? 里抜けに、もう気付いたなんて、いくらなんでも早過ぎるだろう?!
「勝手に交代とは? 説明してもらおうか、マシラ。 お前の任期はもう終わっている。」
「・・・・・・情報班か・・・・。 別に誰がどれだけ潜伏しようとイイじゃないですか。」
「それでも命令違反だ。 お前には他の任務があった、それを忘れるな。」
「おれこの村、気に入ったんです。 それだけですよ。」
「・・・・・・・そいつのせいか? お前の後ろにいる男の。」
「・・・・そうだと言ったら、里で添わせてくれますかね?」
「お前は有望な岩の忍び。 上層部が許可するはずがない。 殺されるのがオチだ。」
「やっぱりね。 だから里には連れていけないと思ったんだ。」
岩隠れの情報班?! マシラは、監守の任を解かれていたのか? 誰かが代わりにくるはずだったと?
どうして・・・・ 俺か? 俺と一緒に居る為か?! 知らず知らずに、涙が次から次に溢れて来る。
アンタ、上忍がそんな勝手な理由で、勝手に他人と任務交代しちゃ駄目だろう、なにやってる・・・・。
このままじゃ、里を抜ける前に、審議にかけられるかもしれないんだぞ?! 分かって・・・・ はっ?!
「まさかマシラさん・・・・・ 一緒に暮らそうって・・・・・・」
「・・・・ははは、ほんと、イルカさんにはかなわないや。」
「明日・・・・ 俺を置いて・・・・・ 里に帰るつもりだったんですね?」
「・・・・・言ったろう? イルカさんには笑ってて欲しいって。」
そんな・・・・ なんて事だ! マシラは俺との一夜を思い出に、ひとりで戻るつもりだったのか!
里に戻って、巻物の紛失責任、他の任務放棄の責任をとる。 おそらく重罪も覚悟していただろう。
同じ事を考えていたんだ、自分がいなくなっても、この人なら乗り越えて生きてくれる、って。
本音を言って良いですか? マシラ上忍、あなたとは同じ里の忍びとして、出会いたかったです、俺。
「おれね、木の葉に巻物を持っていかれました。 上忍失格です。」
「なに?! それは本当か、マシラ! お前ほどの者が、まさか・・・・・。」
「一人は写輪眼のカカシ、もう一人は木遁使い。 おれがどう頑張っても無理でしょう?」
「・・・・・・・巻物に細工せず、そのまま渡したのか?」
マシラは、さすがというか、カカシさんとヤマトさんだと気付いていた。 その上での取引だったのか。
他国の手配書に載ってるし、当然と言えば当然なんだけど。 ネームバリューが違い過ぎるなぁ。
カタや、忍びの“し”の字も疑われない俺。 これはこれで諜報活動としては有利なんだけど、でも。
え?! 今・・・・ 何が・・・・・・ なんで・・・・ なにこれ・・・・・ どうして?!
「 マシラさんっっ!! 」
「馬鹿な・・・・・・・ マシラッ!! 」