灯台下暗し 2   @BC DEF GHI JKL M




オレは小さい時から、白い牙 サクモの息子として期待されて育った。 稀に見る天才と呼ばれて。
サスケもアカデミー時代は優秀で、いつもトップの成績だったそうだ。 名門の一族の生き残り。
もう既に自分の世界を確立していて、自分より弱い者の話を聞かない。 その結果、孤立する。
そうやって期待されて育った人間は、いざ道を間違えても、自分では間違えたコトさえ気付かない。

オレも過去に、取り返しのつかない間違いを犯した。 周りをよく見なかったせいで。
里の誉と言われた父。 任務遂行より仲間を優先したコトで周りから責められ、自らの命を絶った。
命を懸けた抗議だったのかもしれないのに、オレは一緒になって父さんを憎んだ。 忍びの恥だと。
けど自分より弱いヤツの方が、父さんのコトをしっかりと見ていた。 父さんの行動の正当性を。

間違いを指摘してくれた者がすぐ側にいたのに、オレは聞く耳を持たず、挙句、そいつも失った。
父さんも、オビトも亡くした。 孤立してから例え気付いたとしても、亡くした命は元に戻らない。
そうなる前に、それに気付いてほしかった。 自分の周りをよく見て、答えを探して欲しかった。
イタチは裏切り者じゃないんだサスケ、自慢だった兄貴を信じろ、そう感じ取ってほしかったのに。


成長したナルトとサスケに初めて会った時、驚いた。 逆じゃないか? と感じたほど。
人を恨んでいるだろうと思っていたのはナルト。 兄を信じているだろうと思っていたのはサスケ。
オレが想像してたのと、まったく逆の目をした二人。 周りをよく見れば、真実は隠れている。

ナルトはちゃんと見たんだネ。 自分のコトを嫌う人間ばかりじゃない、と気付いた。
サスケは・・・・ ダメだったか。 信じるのは己の力のみだと、人を拒絶していた。
サスケのコトを本気で好きなサクラ。 こんな愛情が側にあるのに気付けないなんて。
本当に驚かされた。 あの時はそれでも、オレの下忍認定試験に合格したんだカラ。

サスケは一番優秀で、自慢の教え子だと安心していたんだろう。 ナルトには手を焼いたはずだ。
サクラの純粋な愛情を中和剤にした、イルカ先生の班編制は、よく出来たスリーマンセルだった。
多少、過保護・・・・・ではあるが。 オレに意見したりネ。 今ではアレも懐かしい思い出だヨ。


「・・・・っていうか。 他の卒業生に知れちゃってもマズイんじゃないデスか?」
「だからお前達を呼んだ。 アイツらに知られる前にカタをつけろ。 四日やる。」
「よ、四日・・・・。 無茶苦茶だ・・・・。   ・・・・鬼。
「聞こえたぞ、ヤマト! よし、喜べ。 三日にしてやる。」
「「 オニババァ〜〜〜〜〜っっっ!!! 」」
「わかった、二日だな。 さすがは木の葉の暗部、元部隊長と現部隊長だ。 頼もしい奴らめ。」
「「・・・・・・。」」


イルカ先生の任務は奪還。 木の葉崩し後の混乱で、里が保管していた禁術の巻物の多くが盗まれた。
その一つが、土の国の小さな村に隠してあるという情報が入ったからだ。 持ち去ったのは岩隠れ。
木の葉から盗んだ巻物を、そのまま岩隠れに保管しておくはずはない、との見方から捜索したらしい。

情報部によれば、常時村に滞在している岩隠れの忍びは上忍一人。 巻物の監視役だ。
その村に、イルカ先生は向かった。 村人と上忍を殺して巻物を奪還するなら、中忍一人では無理だ。
盗んだモノなら、盗み返しても岩隠れは文句をつけられない。 巻物だけを奪還する任務なら適任。

イルカ先生は顔に傷があるケド、忍びとは思えない人柄。 きっとうまく村に潜り込めただろう。
情報部 いのいちさんが、イルカ先生の頭に偽の記憶を入れた。 上忍が頭を覗くだろうと踏んで。
いのいちさんの心潜術の凄いトコロは、相手が頭を覗いたら、それを真の記憶だと錯覚させるトコロ。

「イルカは“暗殺現場を目撃した為、木の葉の忍びに記憶を抜かれ遠くの地へ捨てられた青年”だ。」
「ナルホド。 ウチの里が甘いと思っている他里の忍びなら、納得するような記憶ですネ。」
「暗殺現場を目撃したら仕留めますよ、必ず。 まぁ、そうやって誤解するのは勝手ですが。」
「まったくだ。 他里の影どもは、木の葉の恐ろしさを身を持って知っているのにな?」

記憶のない青年に、村の人は親切にしてくれたらしい。 巻物を守っていると思われる上忍も。
その上忍が頭を覗いて無害な人間だと判断した様だから。 今は子供に読み書きを教えているんだって。
そこでも先生なんだ? ホント、先生になる為に生まれて来たような人だよネ、イルカ先生って。
村に馴染んだなら、そろそろ動きの報告が入るだろうと思っていたら、先生からの連絡が途絶えた。

「岩は人柱力を保有してませんからネ。 ナルトとイルカ先生の絆を知ったら、間違いなく利用する。」
「ああ。 いのいちの術が見破られるとは思いたくないが、念には念だ。 行ってくれ。」
「何事もなければ、それでよし。 何事かあっても、巻物と先生を奪還して来ますよ。」
「村までの地図と、村の中の配置はその巻物に記しておいた。 移動しながら確認しろ。」

「「了解。」」
「頼んだぞ、カカシ、ヤマト。   散っ!!」