灯台下暗し 14
@AB
CDE
FGH
IJK
L
オレ達は村の手前まで来た。 けど、そこまでだ。 ツタを介して中の様子はヤマトの頭から見れる。
ここからはオレ達は行かない方がイイだろーネ。 先生との最後の別れを邪魔する気にはなれないヨ。
パックン達なら上手くやってくれる。 オレの忍犬チームはオレの期待通りの働きをするからサ。
「カカシ先輩・・・・・ こんな事態になると・・・・ 予想してましたか?」
「・・・・・イヤ。 さすがのオレもココまでは想定外だーヨ。」
「最後は先生とふたりだけにしてあげた方が、いいでしょうか。」
「そうだネ。 最後の偽の思い出だけは、マシラだけのモノだ。」
ナルトの前任者だから当たり前のように里に居る、必然的にオレの近くにいる存在だったからサ。
あんまり近くに居すぎて意識なんてしなかった。 オレは既にイルカ先生に踏みこんでいたんだ。
過保護だと怒ったり、オレの過去を話したり、暗部にいた時の話をしたり。 他人にしないでショ。
気がつかない内に、イルカ先生を自分の中に入れていて、オレも自分を見せていたんだ―ネ。
村の手前でヤマトと背中合わせに座り込んで、片膝を立てながら中の様子を確認すると。
パックンがイルカ先生達に歩み寄り“カカシからふたりを守るように頼まれた”と話してた。
岩隠れの情報班の男は、オレの犬達に咥えられて、ズルズルと家から引きずり出される。
後でウチの拷問部に引き取りに来させよう。 鷹丸を呼んで、拷問部の出動を要請した。
あの出血では、マシラは助からない。 もし・・・・ イルカ先生があの上忍の一太刀を浴びてたら。
先生は即死だったヨ。 マシラはイルカ先生の命の恩人、だからこうやって最期の思い出を与えた。
ホントなら乗り込んで奪い返したいのに。 イルカ先生は木の葉の忍びだ! そう叫びたいのに。
マシラは苦しい息の中“木の葉はどこまで温情ある里なんだか”と呟き、イルカ先生に手を伸ばす。
『マシラさんっ! マシラさんっっ!! 嘘だ、こんなのっ! マシラさんっっ!!!!』
『おれね・・・・ イルカさんは、忍びかも・・・ って、思った ゴホッ! でも・・・』
『しっかりっっ!! 嫌だ! 生きるんですよっ! マシラさんっっ!!!』
『で、もね、こん、な忍び・・・・ いるはず、ない・・・もんね・・・・ うぅ・・・・』
イルカ先生はマシラを抱きしめながら、伸ばされた手を取り、そっと自分の頬に当てた。
ボロボロとこぼれる涙をぬぐいもせずに、頬ずりして口づけた。 何度も何度も、その手のひらに。
イルカ先生はよく泣くとナルトから聞いていたのに、三代目の葬儀の時、皆の前で先生は泣かなかった。
ホントだネ、ナルト。 敵忍の前でコレだモン。 あの時もきっと家で死ぬほど泣いたんだろう・・・ ネ。
『イル、カさん・・・・ 笑って・・・・ ゲホッ! おれ・・・・・ 』
『マシラさん、駄目だ、逝かないでっ! マシラさんっ!! 』
『イ・・・カ・・・さ、んの・・・・笑った、顔・・・・だ・・・ぃ・・す・・・・』
『マシラさんっ?! ぅ・・・ うぅぅぅゎぁぁああーーーっっっ!!! 』
止めてヨ、イルカ先生。 なんて顔で泣くの。 なんて声で叫ぶの。 そいつは敵忍でショ?
木の葉の里から禁術の巻物を奪った、岩隠れの里の忍びなんだヨ? そんなヤツの為に泣かないで。
イルカ先生の悲しみの涙は胸が痛いヨ。 先生をそんな風に泣かせるなんて、オレはスゴク腹が立つ。
オレなら、絶対イルカ先生をこんな風に泣かせない。 約束する。 ねぇ、だから、だから・・・・。
あの後イルカ先生は、自分の与えられた家ごとマシラを燃やした。 ヤツが買って来た物も全部。
マシラの死で、かかっていた暗示が解けたようで、鍛冶屋の彼を覚えている村人は誰ひとりいなかった。
記憶に残るのはただひとつ。 村の青年が、迷い込んできたどこかの忍びに殺されてしまったコトだけ。
思い出と一緒に逝かせてあげました、と真っ赤な目で笑うイルカ先生。 見られてたコトも知らないで。
俺は忍びなんです、騙しててごめんなさいと、血だらけのマシラの遺体に、何度も口づけてあげたコト。
あなたがウチの忍びなら喜んで一緒になってましたよ、そう言ってあげたコトも。 オレ達は知ってるヨ?
「イルカ先生。 誰より大切にする。 ねぇ、考えてみて?」
「?? 何がですか??」
「ボク達、イルカ先生と一緒になりたい。 添い遂げたい。」
「な・・・・なんで・・・ なんで今、そんな・・・・」
「そんな泣き腫らした目をして、笑わないで? 先生を見ているだけで苦しいヨ。」
「カカシさん・・・・・。」
「先生に、ああやって抱きしめられたい。 泣いてる先生を抱きしめてあげたい。」
「ヤマトさん・・・・・。」
ねぇ、わかる? 先生が泣いていると、オレ達も悲しくなる。 先生のみせる感情の全てが欲しい。
敵忍じゃなく、ナルトにじゃなく、オレ達に。 オレ達だけにチョウダイ。 イルカ先生の全部。
オレ達はもう泣けないし、涙だって出ない忍びだ。 だから先生、代わりに泣いてくれる?
一緒に生きて、色々な顔を見せて? オレ達だけに。 オレ達だけのイルカ先生になってほしい。
「こんな・・・・ 人が弱ってる時に、そんな優しい言葉で・・・・」
「フフフ、忍びはどんな時も冷静に。 チャンスを生かさなきゃネ?」
「俺は・・・・ 俺は絆されやすいんですよ、もう!」
「ふふふ、知ってます。 つけ込みやすい今が、チャンスなんです。」
「・・・・・くすっ! あり得ないっ! カカシさんとヤマトさんが、俺に?!」
「「試してみます? 先生、体では敏感に感じ取ってくれるでしょう?」」
「・・・・・・・ぅっ! そ、それは、その・・・・・ さ、里に帰ってからですっっ!!」
「「了解っ!」」
イルカ先生が笑ったら、オレ達も楽しい。 こんなコト初めてだ。 相手の感情に左右されるなんて。
マシラが、先生の笑った顔が大好きだと言った。 オレ達もそう思うヨ。 先生の笑顔は優しい。
こっちまで優しい気持ちになれる。 イルカ先生といると穏やかな時間が過ごせるんだ、忍びなのに。
こんなところに幸せがあった。 近くに居すぎて、あまりに近すぎて、見逃すところだった。
「ところでイルカ先生、男にヤラれたコトある?」
「な・・・ なんでそんな事聞くんですか、もう!!」
「う〜ん。 じゃぁ、ボク達が初めてですか?」
「いや、あの・・・・・ は、初めてではありません・・・・」
「「・・・・・・・誰? 相手は。」」
「あの、その・・・・・ 花街で誘われて・・・・」
「「陰間?! 突っ込まれたの?!」」
「なんか、あれよあれよという間に・・・・・」
「「イルカ先生、ほんとに忍びなの?!」」
「いや、だって・・・・ あの・・・ 気持ちよかったんですよ。」
「「 陰間になんか負けないっ! 」」
「・・・・・・・気にするとこ・・・・ そこ?」
今回の先生の色仕掛け作戦は内緒にしててあげる。 火ノ寒梅 はいらないからイルカ先生をチョウダイ。
そしたらサ、どんなにイルカ先生を大切に思っているか、イヤと言うほど分からせてあげるヨ。
先生は優しくて気持ちのいいコトには、すぐ反応するでショ。 マシラ? 花街の陰間? 目じゃないネ。
そんなヤツらのテクなんて、忘れるぐらいブッ飛んでもらうから。 自慢じゃないけど・・・ 上手いヨ?
そしてイルカ先生は、ふたりの愛のこもったテクにメロメロになるのでした、めでたしめでたし!(笑) 聖