灯台下暗し 1   @AB DEF GHI JKL M




イルカ先生からの状況報告は、3〜4日に一回定期的にあったらしい。 情報部の伝書鷹を介して。
忍術をつかってないなら、木の葉の忍びだとバレる事は稀。 でも既にもう、9日間連絡がない。
例え捕縛されていようと、イルカ先生なら、なんとか生き残る方法を模索してくれているはずだ。
もし入れ違いで、里に報告が入っていたならひと安心。 奪還任務のお手伝いでもしてこよう。


「こんな山の中の小さな村の鍛冶屋に、貴重な巻物があるなんてサ、誰も思いつかないよネ。」
「まったくです。 うちの情報部は凄いです。 違う観点から捜索して見つけたんですから。」
「・・・・だからつい、捕縛されても生き残りの道を選んじゃうんだよネー。」
「・・・・ええ。 絶対見つけてくれる、っていうヘンな確信がありますし。」

なるべくポジティブに、最悪の事態は考えない。 お互いにそう言い聞かせているような会話だ。
カカシ先輩もボクも、ナルトの中の九尾が暴走した時の為に、ストッパーの役割を担っている。
先輩が暗部を引退して上忍師になると聞いた時、ああ、ナルトが下忍になったのかな、って思った。

ボクが部隊長を襲名したが、まだそう呼ばれる事に慣れない。 カカシ先輩の統率力は凄かったから。
暗部の隊員は皆、カカシ先輩のような忍びで有りたいと思い、そう行動して来た。 もちろんボクも。
九尾襲来で、存在感のある忍びの多くが死んだ。 カカシ先輩は、その後の木の葉を導いて来た人物。

そのカカシ先輩ですら、ナルトに近づかなかった。 カカシ先輩はミナト班、四代目火影の愛弟子。
ナルトを見ると四代目夫妻の死に際を思い出す、鮮明にネ。 まだ苦しいヨ。 と胸の内を語った。
自分が少しでも辛そうなそぶりを見せたら、ナルト本人が不安に思うだろうから会えない、と。

ボクもそうだ。 何も知らないナルトを、九尾の様に扱う里の民を見て、爆発しそうになった。
けどもし自分の周りに怪我人が続出したら、やっぱりナルト自身が不思議に思うだろうな、と。
ナルトは人柱力なんだ。 本人が意識して尾獣チャクラを使いこなせば、無二の忍びになれる。


「イルカ先生って、ナルトにとっては、変わらない愛情をくれる人、なんでしょうね。」
「そうだな。 その先生を失った時、悲しみの大きさに負けて、喰われちゃうかもネ。」
「いつか封印してあるだろう四代目夫妻の思念を感じるまでは、この絆を壊す訳にはいきません。」
「ウン。 三代目は、自身の中にある親の愛情を自力でみつけるようになる、って言ってたしネ。」

そうだ。 九尾じゃないけど、人柱力。 その事実は変わらない。 その力を託されたんだ。
それを受け止めなきゃ、ナルトはいつまでたっても、九尾のチャクラをコントロールなんて出来ない。
その時の為に先輩もボクも、努力して来た。 もっともっと手がかかるだろう、と覚悟していたのに。

「コントロールも何も・・・・ 現段階じゃ、無意識で使っているようなモンだし?」
「ははは、多重影分身の術、か。 ボクの出番は・・・・ まだまだ先ですね、それじゃ。」
「ま、あれだけの人数を出せる、ってコトがスゴイって気付けば・・・・ 道は開けるカナ?」
「ボクと修行する日々はいつになる事やら。 でも、思ってたより早かったんですよね。」

里を憎み、人を恨んで、さらには九尾の力を悪用する忍びになるんじゃないか、って心配してた。
これからボク達が行く村に、そうなるはずだったナルトを、人を信じる忍びに変えてくれた人がいる。
彼の存在は、ナルトがナルトである為にどうしても欠かせないんだ。 今、失う訳にはいかない。


「最後の報告が“そろそろマシラの家へ招いてもらえそうだ”でしたから・・・・・。」
「その後は普通、帰還の知らせか、回収成功の報告だもんネ。 連絡が途絶えるなんて。」
「・・・・あ!! 先輩、あれ・・・・ 鷹丸じゃないですか?!」
「ん? ホントだ、呼んでみよう。   タカマルー おいで―。」

綱手様に貰った日数は二日。 全速力で駆けた。 朝一で木の葉を出て、それでももう、日暮れだ。
もう少ししたらイルカ先生のいる村までたどり着ける、とスパートをかけようとした時だった。
情報部の鷹丸が頭上を横切った。 まだ伝書鷹がここにいるという事は、先生は無事だ、よかった。

もし先生が殺されていたら、鷹丸はイルカ先生の遺品の何かを持って、帰還しただろうから。
捕縛されていようが、手間取っていようが、イルカ先生は生きている、これだけで少し安心した。